Reactor Heart -原子炉心臓の天使-

独楽 悠

文字の大きさ
上 下
73 / 112
本編

第14話_護衛機の天敵-1

しおりを挟む
【地下side①】

幾ばかりかの時が経ち、無音の王宮地下空間に、ふと物音がたつ。
人間の耳では感知できないほどの僅かなそれは、冷たい床へ身体を預けるソウヤの耳にはっきりと届いた。

やがてその物音の主は、臆そうともせずにこつこつと足音を通路へ響かせながら徐々に接近し、ソウヤの留置室の前でぴたりと止まる。

「――起きろ、白の護衛機」

抑揚の無い命令口調の呼び掛けに、ソウヤはゆっくりと身を起こす。

視線を向けた檻の外側には、全身黒のボディスーツに身を包んだ背の高い男が立っていた。
接近前に既にソウヤはこの男がアンドロイドだと把握していて、睨み上げながら黒い機体を観察する。

ソウヤのような痩身でも、ハナブサのような屈強なアスリート体型でもなく、長身な部分以外目立つものは無いように見られたが、身体の線を浮き立たすボディスーツは全身にバランス良く筋肉が付いていることを示していた。
目の部分だけがスモークバイザーで覆われたフルフェイスを被っており、首から上の一切の特徴が隠されていた。

しかし、先ほど頭部を撃たれ知覚機能に異常をきたしながらも記憶した情報から、この目の前の男性型機が、先ほどイツキ王子を攫っていった黒ずくめの者であることは確かだった。

フードの男の時のような、ボイスチェンジャーは使っていないようだった。
しかし折り悪くも、ソウヤはミヤジマ技研から出て以降にハナブサ以外のアンドロイドと会話する機会を得られなかったため、特定する上で有用な手段となる当該機体の肉声を聞いても、どこの何者なのか見当がつかなかった。

黒いアンドロイド――仮名『Unknown』は、留置室の檻に掌をかざし、高圧電流を解除すると同時に扉を開錠する。
そして、無言のまま見上げるソウヤへ低く続ける。

「早く立て。貴様を捕獲するよう命じられている」
「…お前の主は誰だ?」
「貴様に明かす必要は無い」

そうつき返す『Unknown』へ、ソウヤは立ちあがりながら更に問う。

「さっきのフードを被った人間が、お前の主だな?」
「…」

その核心めいた問い掛けに、『Unknown』は動きを止め一時黙した後、フルフェイスの中の口を動かした。

「…記憶領域に残っていたか。かろうじて視覚情報は拾っていたようだな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

ガイアセイバーズ spin-off -T大理学部生の波乱-

独楽 悠
青春
優秀な若い頭脳が集う都内の旧帝大へ、新入生として足を踏み入れた川崎 諒。 国内最高峰の大学に入学したものの、目的も展望もあまり描けておらずモチベーションが冷めていたが、入学式で式場中の注目を集める美青年・髙城 蒼矢と鮮烈な出会いをする。 席が隣のよしみで言葉を交わす機会を得たが、それだけに留まらず、同じく意気投合した沖本 啓介をはじめクラスメイトの理学部生たちも巻き込んで、目立ち過ぎる蒼矢にまつわるひと騒動に巻き込まれていく―― およそ1年半前の大学入学当初、蒼矢と川崎&沖本との出会いを、川崎視点で追った話。 ※大学生の日常ものです。ヒーロー要素、ファンタジー要素はありません。 ◆更新日時・間隔…2023/7/28から、20:40に毎日更新(第2話以降は1ページずつ更新) ◆注意事項 ・ナンバリング作品群『ガイアセイバーズ』のスピンオフ作品になります。 時系列はメインストーリーから1年半ほど過去の話になります。 ・作品群『ガイアセイバーズ』のいち作品となりますが、メインテーマであるヒーロー要素,ファンタジー要素はありません。また、他作品との関連性はほぼありません。 他作からの予備知識が無くても今作単体でお楽しみ頂けますが、他ナンバリング作品へお目通し頂けていますとより詳細な背景をご理頂いた上でお読み頂けます。 ・年齢制限指定はありません。他作品はあらかた年齢制限有ですので、お読みの際はご注意下さい。

偏食の吸血鬼は人狼の血を好む

琥狗ハヤテ
BL
人類が未曽有の大災害により絶滅に瀕したとき救済の手を差し伸べたのは、不老不死として人間の文明の影で生きていた吸血鬼の一族だった。その現筆頭である吸血鬼の真祖・レオニス。彼は生き残った人類と協力し、長い時間をかけて文明の再建を果たした。 そして新たな世界を築き上げた頃、レオニスにはひとつ大きな悩みが生まれていた。 【吸血鬼であるのに、人の血にアレルギー反応を引き起こすということ】 そんな彼の前に、とても「美味しそうな」男が現れて―――…?! 【孤独でニヒルな(絶滅一歩手前)の人狼×紳士でちょっと天然(?)な吸血鬼】 ◆ダブル主人公・人狼と吸血鬼の一人称視点で交互に物語が進んでゆきます。 ◆現在・毎日17時頃更新。 ◆閲覧ありがとうございます。小説投稿は初めてですがのんびりと完結まで書いてゆけたらと思います。「pixiv」にも同時連載中。 ◆未来、エチエチシーンは部分的に挿絵や漫画で描けたらなと考えています☺

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

処理中です...