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第14話_護衛機の天敵-1
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【地下side①】
幾ばかりかの時が経ち、無音の王宮地下空間に、ふと物音がたつ。
人間の耳では感知できないほどの僅かなそれは、冷たい床へ身体を預けるソウヤの耳にはっきりと届いた。
やがてその物音の主は、臆そうともせずにこつこつと足音を通路へ響かせながら徐々に接近し、ソウヤの留置室の前でぴたりと止まる。
「――起きろ、白の護衛機」
抑揚の無い命令口調の呼び掛けに、ソウヤはゆっくりと身を起こす。
視線を向けた檻の外側には、全身黒のボディスーツに身を包んだ背の高い男が立っていた。
接近前に既にソウヤはこの男がアンドロイドだと把握していて、睨み上げながら黒い機体を観察する。
ソウヤのような痩身でも、ハナブサのような屈強なアスリート体型でもなく、長身な部分以外目立つものは無いように見られたが、身体の線を浮き立たすボディスーツは全身にバランス良く筋肉が付いていることを示していた。
目の部分だけがスモークバイザーで覆われたフルフェイスを被っており、首から上の一切の特徴が隠されていた。
しかし、先ほど頭部を撃たれ知覚機能に異常をきたしながらも記憶した情報から、この目の前の男性型機が、先ほどイツキ王子を攫っていった黒ずくめの者であることは確かだった。
フードの男の時のような、ボイスチェンジャーは使っていないようだった。
しかし折り悪くも、ソウヤはミヤジマ技研から出て以降にハナブサ以外のアンドロイドと会話する機会を得られなかったため、特定する上で有用な手段となる当該機体の肉声を聞いても、どこの何者なのか見当がつかなかった。
黒いアンドロイド――仮名『Unknown』は、留置室の檻に掌をかざし、高圧電流を解除すると同時に扉を開錠する。
そして、無言のまま見上げるソウヤへ低く続ける。
「早く立て。貴様を捕獲するよう命じられている」
「…お前の主は誰だ?」
「貴様に明かす必要は無い」
そうつき返す『Unknown』へ、ソウヤは立ちあがりながら更に問う。
「さっきのフードを被った人間が、お前の主だな?」
「…」
その核心めいた問い掛けに、『Unknown』は動きを止め一時黙した後、フルフェイスの中の口を動かした。
「…記憶領域に残っていたか。かろうじて視覚情報は拾っていたようだな」
幾ばかりかの時が経ち、無音の王宮地下空間に、ふと物音がたつ。
人間の耳では感知できないほどの僅かなそれは、冷たい床へ身体を預けるソウヤの耳にはっきりと届いた。
やがてその物音の主は、臆そうともせずにこつこつと足音を通路へ響かせながら徐々に接近し、ソウヤの留置室の前でぴたりと止まる。
「――起きろ、白の護衛機」
抑揚の無い命令口調の呼び掛けに、ソウヤはゆっくりと身を起こす。
視線を向けた檻の外側には、全身黒のボディスーツに身を包んだ背の高い男が立っていた。
接近前に既にソウヤはこの男がアンドロイドだと把握していて、睨み上げながら黒い機体を観察する。
ソウヤのような痩身でも、ハナブサのような屈強なアスリート体型でもなく、長身な部分以外目立つものは無いように見られたが、身体の線を浮き立たすボディスーツは全身にバランス良く筋肉が付いていることを示していた。
目の部分だけがスモークバイザーで覆われたフルフェイスを被っており、首から上の一切の特徴が隠されていた。
しかし、先ほど頭部を撃たれ知覚機能に異常をきたしながらも記憶した情報から、この目の前の男性型機が、先ほどイツキ王子を攫っていった黒ずくめの者であることは確かだった。
フードの男の時のような、ボイスチェンジャーは使っていないようだった。
しかし折り悪くも、ソウヤはミヤジマ技研から出て以降にハナブサ以外のアンドロイドと会話する機会を得られなかったため、特定する上で有用な手段となる当該機体の肉声を聞いても、どこの何者なのか見当がつかなかった。
黒いアンドロイド――仮名『Unknown』は、留置室の檻に掌をかざし、高圧電流を解除すると同時に扉を開錠する。
そして、無言のまま見上げるソウヤへ低く続ける。
「早く立て。貴様を捕獲するよう命じられている」
「…お前の主は誰だ?」
「貴様に明かす必要は無い」
そうつき返す『Unknown』へ、ソウヤは立ちあがりながら更に問う。
「さっきのフードを被った人間が、お前の主だな?」
「…」
その核心めいた問い掛けに、『Unknown』は動きを止め一時黙した後、フルフェイスの中の口を動かした。
「…記憶領域に残っていたか。かろうじて視覚情報は拾っていたようだな」
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