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第12話_ハナブサ-3
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ソウヤは、文字通り機械のような受け答えしかしないハナブサに、苛立ちを感じていた。
…何故だか、ハナブサとやり取りを続ければ続けるほど疲れる…
…これじゃ、どんなに冷たくあしらわれようとも、人間を相手に会話してた方が心持ちが遥かにましだ。
…同じアンドロイドのはずなのに、機体が違うとこれほどまでに温度差があるものなのか…それとも、単純に俺が逸脱してるだけなんだろうか。
そしてまた、ハナブサとの押し問答に出処の知れない既視感があり、自分の記憶領域が不鮮明で断片的な視覚データにじわじわと犯されているようで、余計むず痒いような不快感を覚えていた。
…はっきりと知覚領域に表せないのが、気持ち悪くてならない。
…何なんだろう…俺は本当に、どこか欠陥があるのかもしれない。
…ミヤジマ博士に"唯一無二"と言って貰えたのに…こんな気持ちになってしまうのは、愛情を込めてくれた博士の意に反するようで、とても悲しい…
そう悲嘆しながらも、ソウヤはこんな風に苛立つ感情を、遠い過去に経験した事があるように思えてならなかった。
ソウヤがひとり自問し始め、沈黙が降りる中、ハナブサが再びノイズに言葉を乗せてきた。
― 今は、ひと時でもゆっくり体を休めるといい。お前が離れていようとも、殿下の身の安全は俺が保証する ―
彼のその一言に、項垂れていたソウヤの頭が飛び起きる。
「…! 殿下の御身にはお前が付いてるのか?」
― そうだ。先ほども言った通り、陛下御自らの特命を受けた俺は今、陛下から離れイツキ王子殿下を護衛対象としている ー
「殿下は…ご無事なのか…!?」
ー 健康状態に問題は無い。ただ、お目覚めの直後は幾分か精神に乱れが見えた ー
「っ、…乱れ…!?」
ー 殴られた ー
問い掛けにそう低く返答があり、ソウヤは目を丸くする。
「…お前、殿下に手をあげられたのか…?」
ー ああ。お目覚めになった時、お前の姿が見えないことに、殿下は酷く動揺された。何度もお前の居所を問われた ー
「…!」
ー お心の具合が万全とは見られず、ありのままをお話しするのは殿下にとってご負担を重ねると判断した。よって黙秘を続けていたら、泣きながら殴られた ー
…イツキ…!
今回の事が起きる前に、イツキ王子の機嫌を損ね、宥めきることが出来ないまま別れてしまっていたので、ソウヤは王子の無事を安堵し、胸にじんとくるものを感じた。
…良かった。俺はまだ、イツキに必要とされてるんだ……
ー 泣き疲れて体力を更に消耗されていたので、安定剤を投与し、眠って頂いた。安全のため、今は俺のポッドで休んで頂いている ー
「…」
ソウヤは、ハナブサのポッドの中ですぅすぅと可愛らしく寝息を立てる王子を想像し、目を細め頬を染めた。
…何故だか、ハナブサとやり取りを続ければ続けるほど疲れる…
…これじゃ、どんなに冷たくあしらわれようとも、人間を相手に会話してた方が心持ちが遥かにましだ。
…同じアンドロイドのはずなのに、機体が違うとこれほどまでに温度差があるものなのか…それとも、単純に俺が逸脱してるだけなんだろうか。
そしてまた、ハナブサとの押し問答に出処の知れない既視感があり、自分の記憶領域が不鮮明で断片的な視覚データにじわじわと犯されているようで、余計むず痒いような不快感を覚えていた。
…はっきりと知覚領域に表せないのが、気持ち悪くてならない。
…何なんだろう…俺は本当に、どこか欠陥があるのかもしれない。
…ミヤジマ博士に"唯一無二"と言って貰えたのに…こんな気持ちになってしまうのは、愛情を込めてくれた博士の意に反するようで、とても悲しい…
そう悲嘆しながらも、ソウヤはこんな風に苛立つ感情を、遠い過去に経験した事があるように思えてならなかった。
ソウヤがひとり自問し始め、沈黙が降りる中、ハナブサが再びノイズに言葉を乗せてきた。
― 今は、ひと時でもゆっくり体を休めるといい。お前が離れていようとも、殿下の身の安全は俺が保証する ―
彼のその一言に、項垂れていたソウヤの頭が飛び起きる。
「…! 殿下の御身にはお前が付いてるのか?」
― そうだ。先ほども言った通り、陛下御自らの特命を受けた俺は今、陛下から離れイツキ王子殿下を護衛対象としている ー
「殿下は…ご無事なのか…!?」
ー 健康状態に問題は無い。ただ、お目覚めの直後は幾分か精神に乱れが見えた ー
「っ、…乱れ…!?」
ー 殴られた ー
問い掛けにそう低く返答があり、ソウヤは目を丸くする。
「…お前、殿下に手をあげられたのか…?」
ー ああ。お目覚めになった時、お前の姿が見えないことに、殿下は酷く動揺された。何度もお前の居所を問われた ー
「…!」
ー お心の具合が万全とは見られず、ありのままをお話しするのは殿下にとってご負担を重ねると判断した。よって黙秘を続けていたら、泣きながら殴られた ー
…イツキ…!
今回の事が起きる前に、イツキ王子の機嫌を損ね、宥めきることが出来ないまま別れてしまっていたので、ソウヤは王子の無事を安堵し、胸にじんとくるものを感じた。
…良かった。俺はまだ、イツキに必要とされてるんだ……
ー 泣き疲れて体力を更に消耗されていたので、安定剤を投与し、眠って頂いた。安全のため、今は俺のポッドで休んで頂いている ー
「…」
ソウヤは、ハナブサのポッドの中ですぅすぅと可愛らしく寝息を立てる王子を想像し、目を細め頬を染めた。
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