Reactor Heart -原子炉心臓の天使-

独楽 悠

文字の大きさ
上 下
62 / 112
本編

第11話_濡れ衣-1

しおりを挟む
ソウヤを抱えたハナブサは、王宮の中枢部である大広間へ辿り着く。

この度のテロ攻撃を受け、大広間は臨時の被害対策本部が設けられ、多くの人間たちで埋め尽くされていた。
生存している王宮勤めの人間たちは、応援に駆けつけた国防隊の医療部に助け出され、救護スペースに集められていた。
みな大なり小なり怪我をしているようで、医療兵の応急処置を受ける彼らの表情は一様に暗かった。

護衛任務に就いてから、王宮へ入る人間たちの一日当たりのおおよその総数を把握していたソウヤだったが、今時点で視界に見える人数はその半分にも満たっていなかった。
ハナブサに運ばれる道中、ソウヤは床や壁に飛び散る血痕と、多くの人間が倒れ、息絶えている様を目にしてきてもいて、それらから総合的に見、相当な犠牲者が出ていることが容易に推測出来た。

大広間へ入る手前でハナブサはソウヤを降ろし、中へ進む。
ソウヤも後から続くと、大広間内の人間たちの目が一斉に彼らへと集められた。

「『PG2506』、任務を完遂・帰還致しました」
「ご苦労」

ハナブサの報告に近衛隊長が応え、辺りに控えていた部下へ無言で指示を送る。
数名の近衛兵たちが武器を携行したまま、ハナブサとソウヤの元へ駆け寄って来る。

「……!!」

ソウヤは、突然の想定外の状況に息を飲み、慄くように一歩下がった。
近衛兵たちの銃が構えられ、その銃口は真っ直ぐソウヤへと向けられていた。

「――動くな。そのまま頭の後ろで手を組み、両膝をつけ」

思考回路が追いつかず、焦ったソウヤは思わず、迫る近衛兵たちに問う。

「…!? どういうことですか!? これは――」

ソウヤの足許に、放たれた銃弾がめり込む。

「黙れ。従わなければ次は頭を撃つぞ」
「…!」

言葉を失ったソウヤは、震え始める膝をゆっくりと折り、命令通り両手を頭へ上げる。
すぐさま近衛兵たちに取り囲まれ、腕と胴を縄で縛られる。

「! っ…!」

縄は、化学繊維と金属を混ぜた特殊な素材で出来ている、対AI機専用の拘束縄だった。
僅かに身体を動かすだけでも電流が流れる仕組みで、動力である原子炉が鼓動を打つ度、否応無しに微電流が身体に走り、ソウヤは不快感に顔を歪める。

傍らにいたハナブサは、ソウヤから離れ前へと進み、近衛隊長へ背を向ける。
背中のポッドが開き、中にいたイツキ王子が抱え出される。
気を失ったままの王子は、ソウヤの目の前で動ける侍従らへと手渡され、大広間奥の別室へと運ばれていった。
ポッドを格納したハナブサは、向き直ると壁際へ下がり、片膝をついて控えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

処理中です...