Reactor Heart -原子炉心臓の天使-

独楽 悠

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本編

第10話_真の標的-7

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ハナブサは周囲を確認してから、イヤモニに手を触れる。

「――こちら『PG2506』、只今『S-Y』を確保・・致しました」

王宮の被害対策本部であろう通信先へ告げると、ソウヤへと振り向いた。
横たわっていたソウヤは身を起こし、ハナブサの視線から隠れるようにやや背を向け、アシストスーツの前を閉めていた。

「無事か?」
「…」

うっすらと頬を染めながら頷くと、ソウヤはハナブサをちらりと見る。

「何故ここに? 陛下へ追従して病院へ入っていたはずじゃ…」
「先程も言った通り、陛下よりの特別なお計らいと俺の創造主の指示により王宮へ帰還し、今は警護補佐にあたっている」
「…そうか」

そうぽつりと呟くように返すと、ソウヤは血相を変えてハナブサを見上げた。

「!! 殿下はっ…!?」
「その件も先程の通り、ご無事だ。ウイルスに侵され単独行動を取っていた警備ロボットに抱えられていた所を、当該機を破壊し、保護した」
「今どこにっ…」
「俺の背においでだ」

そう言うとハナブサは、ソウヤに背のポッドが見えるよう、少し身体をずらす。
開口扉が開くと、中にはイツキ王子が目を閉じ膝を緩く折って横たわっていた。
着衣にやや汚れはあるものの、露出した顔や手足に傷は見当たらず、気を失っているのか眠っているのかは定かではなかったが、表情は落ち着いていた。

「…っ…殿下…」

ポッドに駆け寄り膝をついたソウヤは、王子の寝姿を見、思わず瞳を潤ませた。

感動の再会も束の間、ソウヤが王子へ手を伸ばしかけたところでポッドは閉じられ、代わってハナブサが向き直り、ソウヤを見下ろす。

「急ぎ本部へ帰還する。殿下の護送が最優先だ」
「! ああ、わかった」
「では、行くぞ」

そう言うと、ハナブサはソウヤをひょいと持ち上げ、立たせるかと思ったらそのまま身体を浮かせて腕に抱き上げる。
いわゆる"姫抱っこ"状態にされ、ソウヤは突然の仕打ちに再び顔を赤らめ、真上のハナブサを見上げる。

「なっ…何をするんだ、降ろしてくれ!」
「動力機構に、平常時より過熱運転の数値が認められる。身体機能は万全ではない…歩行を任すには不安定、と判断する」
「! それはっ…確かにそうだけど、なんともない、歩ける! こんな姿、殿下に見られでもしたら…!」
「殿下はしばらくお目覚めにはならない。案ずるな」
「っ…屈辱だ…! 降ろせ!!」
「暴れるな。何があろうと、お前を降ろすことはまかりならない」
「~~!!」

ソウヤはひとしきりハナブサの腕の中でもがいた後、やがて諦めたのか不貞腐れたように頬を膨らませ、大人しく運ばれていった。
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