Reactor Heart -原子炉心臓の天使-

第10話_真の標的-5

「…実に素晴らしい玩具だ。性奴隷としての素養も容姿も一級品、護衛機としての能力も申し分無い。…血統だけの平凡なガキには過ぎた代物よ」
「……」
「セクサロイドとしての能力を残したままでは、身体が満たされず、疼いて堪らないだろう？　お前の精を解放出来る私の元にあってこそ、お前は真の護衛機として輝けるのだ」

そうしたり顔で語りかける男の口元を、ソウヤは横倒しになったまま、虚ろな目で眺めていた。
反応の無い様子を見、男は息をつく。

「…共にした時間は僅かとはいえ、既に忠誠は王子にあるということか。ではこういう条件ではどうだ？　私の主はヤマト王家の没落を目指していて、王族の生死は不問だ。実行者である私自身は、生かしておいても利点は無いから葬る方向で考えていたが、お前が望むならあの親子は捨て置いてやってもいい」
「…！」
「お前が忠誠を誓ったあの王子の命を生かしてやりたければ、お前は私の下僕になるのだ。どうだ、お前にとっても利点のある、良い交換条件じゃないか？」

ソウヤの瞳が微かに揺らいだのを見、男はそう畳みかけた。

嫌らしい男の口元へ視線を注ぎながら、ソウヤはこれまでイツキ王子と過ごした日々を思い出していた。

…イツキ殿下…

…最初は…避けられてるようで、嫌われてるようで…お傍にいることを拒まれてるのかと、とても悲しかった。
…でもすぐに、それが思い違いだと解った。恥ずかしがり屋で内気で、だけど、真っ直ぐで芯の通ったお心根を持つお方だった。
…ご両親を愛し、アンドロイドやロボットへも愛情を注いで下さる、とてもお優しいお方だった。

…名前を呼んでくれた。お名前で呼ぶことを許してくれた。
…一緒に生きて欲しいと言ってくれた。

…それなのに俺は…そんな殿下のお命を救うために、殿下への忠誠を裏切るのか…？