Reactor Heart -原子炉心臓の天使-

独楽 悠

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本編

第9話_幾度目かの急襲-2

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国王陛下が入院してから数日は、何事も無いまま時が流れていった。

しかしながら、イツキ王子の行動は著しく制限され、毎日の勉学は3時間だったものが2時間になった上に、王室教師への昼食提供も中止となったため、王子はおのずと三食全てを独りで済ますようになった。
また、午後の余暇も原則的に王子の間の中で出来ることに限られ、王子が部屋を出る機会は、休息を兼ねた数分程度の王宮内の散策の時だけ、となってしまった。

この日もイツキ王子は、貴重な散策時間を使い、閑散とした王宮内の廊下をソウヤとふたりで歩いていた。
ソウヤは後ろから周囲へ目を光らせつつ、王子の面差しを窺い、少し胸を痛めていた。

…お元気が無い…

王子は日を追うごとに、表情から覇気を失っていっていた。
周囲へ視線を漂わすものの目の輝きは虚ろで、ものを見ているようでその実何も捉えられていないように見受けられた。
時折小さくため息をつき、華奢な肩を微かに上下する様は、幼い子供らしからぬ鬱屈を溜めているように感じられた。

やがて、亀のような鈍い歩みで進んでいた王子の足が、ふと止まる。

「殿下、いかが致しましたか?」
「…」

黙ったまま応えない彼に、ソウヤは後ろから追いついて顔を覗き込み、小声で再び声を掛ける。

「…イツキ? そろそろお部屋に戻りませんと…」
「嫌だって言ったら?」

予想しなかった質問が返ってきて、ソウヤは目を見張る。
イツキ王子は薄暗い面差しから、冷めた視線でソウヤを見上げていた。

「困るよね。だって君は、警護が薄くなってる・・・・・・・・・王宮内で、僕を長い時間うろうろさせたくないんだろうから」
「…!!」
「表門とエントランスには、いつも近衛兵は4人常駐してるはずなのに2人しかいなかったし、中庭付近にいた警備ロボットも、知らない機体だった。同じようなカラーリングだけど、王家が持ってるものと型式が違う」
「…イツキ、まさか警備の配置を判って…!?」
「頭に入ってる。近衛兵の顔と名前も、警備ロボットの数や型式も、全部。僕は、彼らが守ってくれてるおかげでここに住まうことが出来てるんだから、把握してるのは当然だよ」

驚いて言葉を返せないソウヤへ、王子は矢継ぎ早に続ける。

「…王宮にいた兵たちは、父上の病院へ付いていったんでしょう? それで、代わりに国防隊から臨時で来て貰ってる。でも、それでもいつもより手薄になってしまってるから、必要以上にひとの出入りはさせないし、僕も自由に歩き回れなくなってる。…何かが起きたら警備が追いつかなくなるから」
「…はい、仰る通りです。隠しだてするような真似をしてしまい、申し訳ございません…」

イツキ王子の的を射た考察を聞き、ソウヤは素直に認める。
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