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第8話_王室教師と-6
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扉を開けると、黒髪に黒スーツの男が、少し扉から離れて控えていた。
男に自分の荷物を持たせ、ユン氏はソウヤへ振り返り、にこりと微笑む。
「私の護衛機です。…名は与えておりません」
ユン氏の護衛機は、やはりソウヤよりかなり上背がある大男だったが、程よく肉付きが良いほどのすらりとした体格をしていた。
濃いサングラスをかけていて目の様子は窺い知れないが、口元は真一文字に結ばれ表情筋が動くことは無く、感情の起伏の薄い様が伝わってきた。
同じ護衛機でも規格外の自分はさておき、国王陛下の護衛機『ハナブサ』と同じような空気を醸しながらもまたタイプの異なる背格好の彼を、ソウヤは新たな発見を得たような面持ちで見上げていた。
「…こちらは、ユン先生の私的な護衛機なのですか?」
「いえいえまさか。畏れ多くも、陛下から賜ったものです」
「やはり、王宮へお勤めの方への防衛策という趣旨でしょうか」
「ええ。私はいくつかの地方大学で客員教授などもやっておりまして。本来ならば、私も宮中の一室をお借りし居を移さねばならないところ、そのような事情から特別なお計らいをもって、護衛機付きでの"通い"勤めをお許し頂いているのです」
「そうなのですか…お忙しいのですね」
「いえなんの。王室教師でいる間が、私にとっては一番の幸せのひと時です。…あなたの淹れるお茶もご相伴頂けるようになりましたしね」
ユン氏は茶目っ気たっぷりにウィンクしてみせてから、面差しを改めて会釈する。
「いつもは私の方から隣の部屋まで迎えに行くので、今後接触する機会は無いと思いますが、宜しければお見知りおき下さい」
「はい…」
「それでは、また明日。課題をお出しした件、殿下に宜しくお伝え下さい」
「承知致しました。先生も、道中お気をつけて」
ソウヤは去っていくふたりの後ろ姿をしばらく見送った後、王子の間のドアをぱたりと閉じた。
男に自分の荷物を持たせ、ユン氏はソウヤへ振り返り、にこりと微笑む。
「私の護衛機です。…名は与えておりません」
ユン氏の護衛機は、やはりソウヤよりかなり上背がある大男だったが、程よく肉付きが良いほどのすらりとした体格をしていた。
濃いサングラスをかけていて目の様子は窺い知れないが、口元は真一文字に結ばれ表情筋が動くことは無く、感情の起伏の薄い様が伝わってきた。
同じ護衛機でも規格外の自分はさておき、国王陛下の護衛機『ハナブサ』と同じような空気を醸しながらもまたタイプの異なる背格好の彼を、ソウヤは新たな発見を得たような面持ちで見上げていた。
「…こちらは、ユン先生の私的な護衛機なのですか?」
「いえいえまさか。畏れ多くも、陛下から賜ったものです」
「やはり、王宮へお勤めの方への防衛策という趣旨でしょうか」
「ええ。私はいくつかの地方大学で客員教授などもやっておりまして。本来ならば、私も宮中の一室をお借りし居を移さねばならないところ、そのような事情から特別なお計らいをもって、護衛機付きでの"通い"勤めをお許し頂いているのです」
「そうなのですか…お忙しいのですね」
「いえなんの。王室教師でいる間が、私にとっては一番の幸せのひと時です。…あなたの淹れるお茶もご相伴頂けるようになりましたしね」
ユン氏は茶目っ気たっぷりにウィンクしてみせてから、面差しを改めて会釈する。
「いつもは私の方から隣の部屋まで迎えに行くので、今後接触する機会は無いと思いますが、宜しければお見知りおき下さい」
「はい…」
「それでは、また明日。課題をお出しした件、殿下に宜しくお伝え下さい」
「承知致しました。先生も、道中お気をつけて」
ソウヤは去っていくふたりの後ろ姿をしばらく見送った後、王子の間のドアをぱたりと閉じた。
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