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本編
第7話_新たに宿す忠誠-7
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見つめ合ったふたりの間に温かな空気が流れると、イツキ王子はふと口を開く。
「僕、ソウヤにもうひとつお願いがあるんだけど」
「はい、何でしょうか」
「僕のことはイツキって呼んで欲しいんだ」
ふいに飛び出した予測不可能な要求に、ソウヤの思考回路が一瞬止まる。
「……それは、出来ません…!!」
「なんで? 僕がソウヤを名前で呼ぶんだから、君も同じことを返すだけだよ?」
「いけません、不敬罪に当たってしまいます…! 誰かに聞かれでもしたら、私の首は耐用限界年数を待たずに飛んでしまいますっ」
「僕が許すんだから、誰にも文句は言わせないよ。何か言われるようなことがあったら、僕が説得する。今度はきっと大丈夫!」
「い、いや…いえ、ですが…っ…」
感動の余韻に浸っていたソウヤは、主の大胆な提案にたちまち顔色を変え、思い直して貰おうと全力で拒否する。
しかし王子は曲げず、恐縮しきりのソウヤへ変わらず訴えかけた。
「僕は君と、"主と護衛"の関係じゃなく"友達"でいたいんだ」
「!? とっ…!?」
「僕、自由に王宮から出られなくて、学校にも通ってないから…友達がいないんだ」
「! …」
「先々代と先代の護衛は、友達と呼ぶにはあまりに僕と身体の大きさが違ったし、ソウヤみたいに表情豊かでも無かったんだ。…君なら友達でも全然おかしくない」
「……」
「君ともっと近い関係でいたいんだ。…駄目かな?」
広い王宮の中だけ、という狭い世界で、多くの従者にお世話されながら日々孤独に生きているイツキ王子の閉塞感や寂しさが、痛いほど伝わってきた。
ソウヤは、返答に困りながらも必死に思案する。
「……"様"も無しですよね…?」
「うん。友達だから」
「…。…では、殿下とふたりきりの時だけ、『イツキ』とお呼びするように致します…」
「! うん、ありがとう…!」
ソウヤが提示した立場的に最上限可能な譲歩案に、王子は納得したようで、ぱあっと面差しを輝かせた。
「僕、ソウヤにもうひとつお願いがあるんだけど」
「はい、何でしょうか」
「僕のことはイツキって呼んで欲しいんだ」
ふいに飛び出した予測不可能な要求に、ソウヤの思考回路が一瞬止まる。
「……それは、出来ません…!!」
「なんで? 僕がソウヤを名前で呼ぶんだから、君も同じことを返すだけだよ?」
「いけません、不敬罪に当たってしまいます…! 誰かに聞かれでもしたら、私の首は耐用限界年数を待たずに飛んでしまいますっ」
「僕が許すんだから、誰にも文句は言わせないよ。何か言われるようなことがあったら、僕が説得する。今度はきっと大丈夫!」
「い、いや…いえ、ですが…っ…」
感動の余韻に浸っていたソウヤは、主の大胆な提案にたちまち顔色を変え、思い直して貰おうと全力で拒否する。
しかし王子は曲げず、恐縮しきりのソウヤへ変わらず訴えかけた。
「僕は君と、"主と護衛"の関係じゃなく"友達"でいたいんだ」
「!? とっ…!?」
「僕、自由に王宮から出られなくて、学校にも通ってないから…友達がいないんだ」
「! …」
「先々代と先代の護衛は、友達と呼ぶにはあまりに僕と身体の大きさが違ったし、ソウヤみたいに表情豊かでも無かったんだ。…君なら友達でも全然おかしくない」
「……」
「君ともっと近い関係でいたいんだ。…駄目かな?」
広い王宮の中だけ、という狭い世界で、多くの従者にお世話されながら日々孤独に生きているイツキ王子の閉塞感や寂しさが、痛いほど伝わってきた。
ソウヤは、返答に困りながらも必死に思案する。
「……"様"も無しですよね…?」
「うん。友達だから」
「…。…では、殿下とふたりきりの時だけ、『イツキ』とお呼びするように致します…」
「! うん、ありがとう…!」
ソウヤが提示した立場的に最上限可能な譲歩案に、王子は納得したようで、ぱあっと面差しを輝かせた。
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