Reactor Heart -原子炉心臓の天使-

独楽 悠

文字の大きさ
上 下
40 / 112
本編

第7話_新たに宿す忠誠-7

しおりを挟む
見つめ合ったふたりの間に温かな空気が流れると、イツキ王子はふと口を開く。

「僕、ソウヤにもうひとつお願いがあるんだけど」
「はい、何でしょうか」
「僕のことはイツキって呼んで欲しいんだ」

ふいに飛び出した予測不可能な要求に、ソウヤの思考回路が一瞬止まる。

「……それは、出来ません…!!」
「なんで? 僕がソウヤを名前で呼ぶんだから、君も同じことを返すだけだよ?」
「いけません、不敬罪に当たってしまいます…! 誰かに聞かれでもしたら、私の首は耐用限界年数を待たずに飛んでしまいますっ」
「僕が許すんだから、誰にも文句は言わせないよ。何か言われるようなことがあったら、僕が説得する。今度はきっと大丈夫!」
「い、いや…いえ、ですが…っ…」

感動の余韻に浸っていたソウヤは、主の大胆な提案にたちまち顔色を変え、思い直して貰おうと全力で拒否する。
しかし王子は曲げず、恐縮しきりのソウヤへ変わらず訴えかけた。

「僕は君と、"主と護衛"の関係じゃなく"友達"でいたいんだ」
「!? とっ…!?」
「僕、自由に王宮ここから出られなくて、学校にも通ってないから…友達がいないんだ」
「! …」
「先々代と先代の護衛は、友達と呼ぶにはあまりに僕と身体の大きさが違ったし、ソウヤみたいに表情豊かでも無かったんだ。…君なら友達でも全然おかしくない」
「……」
「君ともっと近い関係でいたいんだ。…駄目かな?」

広い王宮の中だけ、という狭い世界で、多くの従者にお世話されながら日々孤独に生きているイツキ王子の閉塞感や寂しさが、痛いほど伝わってきた。
ソウヤは、返答に困りながらも必死に思案する。

「……"様"も無しですよね…?」
「うん。友達だから」
「…。…では、殿下とふたりきりの時だけ、『イツキ』とお呼びするように致します…」
「! うん、ありがとう…!」

ソウヤが提示した立場的に最上限可能な譲歩案に、王子は納得したようで、ぱあっと面差しを輝かせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

処理中です...