Reactor Heart -原子炉心臓の天使-

独楽 悠

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本編

第7話_新たに宿す忠誠-6

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イツキ王子は、枕元の王妃とガラス玉から視線を離すと、ソウヤへ真っ直ぐに対面する。

「僕の新しい護衛。君の名前は?」
「はい、『S-Y』と…」
「それは、型式でしょう? 父上の『ハナブサ』のように、君自身に付けられた名は無いの?」
「…!」

ソウヤは、目の前の幼い少年が、ひとりの人間として自分と向き合おうとしている姿に、はっとして目を見張る。
胸に焦がれるような熱さを感じながら、震える声で答える。

「…創造主からは、『ソウヤ』と名を賜りました」
「…ソウヤ…? 『S-Y』の頭文字を取ったのかな…だとしたら、単純過ぎる気がするけど」
「そういえば…由来は私も聞いておりませんでした。創造主は勢いで生きていたきらいもありましたので、殿下の読みは合っているかもしれません」
「きっとそうだね。…でも、響きは君の姿にぴったりだ」

可笑しそうに笑うと、王子はソウヤの手を取った。

「ねぇソウヤ。…アンドロイドは人間の代わりに働くものとして造られたけど、決して命を軽く扱われていい存在じゃないんだよ。父上と母上は、護衛を人間と変わらずに大切に思って、ずっと愛情を注ぎ続けてた。…僕もそういう王族でいたい」
「…殿下…」
「これから先ずっと、君との思い出を増やしていきたいんだ。僕がソウヤに愛情を注ぐのと同じくらい、ソウヤも生き続けて僕を助けて欲しい。…僕のために、命を簡単に投げ出すようなことは言わないで」

片手に赤黒く灯るガラス玉を握りしめ、泣き出しそうな笑顔を浮かべながら、イツキ王子はソウヤへ言葉を紡いだ。
ソウヤは、胸が大きく鼓動するように錯覚した。

…なんて恥ずかしい…俺は、大きな思い違いをしてたのかもしれない。
…イツキ王子のお人となりも、…自分の護衛としての在り方も。

ソウヤは湧きあがる身体の熱と乱れる思考領域をなんとか押し留め、平静を取り戻すと、王子の手を包んだ。

「承知致しました、殿下。ソウヤは心を入れ替えて、あなた様の護衛として務めます。いかなる時も、必ずお傍にいます」
「…うん」

隠されていた真実を知り、お互いの思いを確認し合い、イツキ王子とソウヤは真の主と護衛として絆を深めた。
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