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第7話_新たに宿す忠誠-2
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陛下はそう答え、ソウヤの横に並ぶ大男へ手のひらを差し伸べた。
「そういえばお互い、自己紹介がまだだったね。私の護衛だ。『PG2506』…名を『ハナブサ』という」
陛下からの紹介を受け、ソウヤは首をほぼ真上に傾け、陛下の護衛機――『PG2506=ハナブサ』を見上げる。
真下から注がれる視線を察知したハナブサは、少し距離を置いて対面する。
視線を合わせやすくなったソウヤは、自分も彼へ向き合い、手を差し出した。
「『S-Y』だ。同じ王室の護衛アンドロイド同士、宜しく」
「…宜しく」
少し緊張した面持ちのソウヤに対し、ハナブサは彼の手を取るものの、表情を変えずに短く返しただけに留まった。
ハナブサの浅黒い肌と赤銅色の短髪は、目鼻立ちのはっきりした顔貌と相まって健康的なスポーツマンといった雰囲気だったが、白い歯を見せて笑うことが生まれてこの方無さそうなほどに、表情は乏しかった。
当のソウヤは、ハナブサの大きな手に包まれるように握られ、自分のサイズとのあまりの違いに息を飲む。
――通常の護衛機は、重量が重く装甲もより厚くて、文字通り護衛対象の壁役になる存在なの――
そして、先程のサンチェス博士からの言葉を思い出し、改めて動揺していた。
…これが、護衛任務を担うために造られた、本物の護衛機。
…貧弱な素体の俺とは、何もかも違うんだ…
「彼は、私の護衛任務へ着任してもらってもう10年になる。君にとっても頼れる存在になると思うから、色々情報を得るといいよ」
「ご配慮感謝致します…」
「ふたりでよく連携を取ってくれ。ハナブサも、頼んだよ」
「承知致しました」
頭を下げる護衛機たちに、陛下は満足気に頷いた。
「息子とゆっくり話が出来、楽しく過ごせたよ。…これからは、また少し寂しくなるかな」
そう言うと、国王陛下は今一度ハナブサへ視線を向ける。
ハナブサはすぐさま動き、ソファ横に立て掛けてあった杖を手に取ると、陛下へ背を向けて跪く。
すると、スーツとシャツが大きくめくれ上がって背中の装甲が開き、ポッドのようなシェルターが瞬時に組み上がった。
脇から伸びてきた補助アームに支えられつつシェルターに乗り込むと、陛下はイツキ王子とソウヤへ、にこにこ微笑みながら手を振る。
「それではおやすみ。イツキ、あまり夜更かししないで早く寝るんだよ」
「はい、おやすみなさい…」
「おやすみなさいませ」
シェルターの開口部が閉じられ、ハナブサはゆっくり立ち上がって踵を返し、王子へ一礼してから部屋を退室していった。
「そういえばお互い、自己紹介がまだだったね。私の護衛だ。『PG2506』…名を『ハナブサ』という」
陛下からの紹介を受け、ソウヤは首をほぼ真上に傾け、陛下の護衛機――『PG2506=ハナブサ』を見上げる。
真下から注がれる視線を察知したハナブサは、少し距離を置いて対面する。
視線を合わせやすくなったソウヤは、自分も彼へ向き合い、手を差し出した。
「『S-Y』だ。同じ王室の護衛アンドロイド同士、宜しく」
「…宜しく」
少し緊張した面持ちのソウヤに対し、ハナブサは彼の手を取るものの、表情を変えずに短く返しただけに留まった。
ハナブサの浅黒い肌と赤銅色の短髪は、目鼻立ちのはっきりした顔貌と相まって健康的なスポーツマンといった雰囲気だったが、白い歯を見せて笑うことが生まれてこの方無さそうなほどに、表情は乏しかった。
当のソウヤは、ハナブサの大きな手に包まれるように握られ、自分のサイズとのあまりの違いに息を飲む。
――通常の護衛機は、重量が重く装甲もより厚くて、文字通り護衛対象の壁役になる存在なの――
そして、先程のサンチェス博士からの言葉を思い出し、改めて動揺していた。
…これが、護衛任務を担うために造られた、本物の護衛機。
…貧弱な素体の俺とは、何もかも違うんだ…
「彼は、私の護衛任務へ着任してもらってもう10年になる。君にとっても頼れる存在になると思うから、色々情報を得るといいよ」
「ご配慮感謝致します…」
「ふたりでよく連携を取ってくれ。ハナブサも、頼んだよ」
「承知致しました」
頭を下げる護衛機たちに、陛下は満足気に頷いた。
「息子とゆっくり話が出来、楽しく過ごせたよ。…これからは、また少し寂しくなるかな」
そう言うと、国王陛下は今一度ハナブサへ視線を向ける。
ハナブサはすぐさま動き、ソファ横に立て掛けてあった杖を手に取ると、陛下へ背を向けて跪く。
すると、スーツとシャツが大きくめくれ上がって背中の装甲が開き、ポッドのようなシェルターが瞬時に組み上がった。
脇から伸びてきた補助アームに支えられつつシェルターに乗り込むと、陛下はイツキ王子とソウヤへ、にこにこ微笑みながら手を振る。
「それではおやすみ。イツキ、あまり夜更かししないで早く寝るんだよ」
「はい、おやすみなさい…」
「おやすみなさいませ」
シェルターの開口部が閉じられ、ハナブサはゆっくり立ち上がって踵を返し、王子へ一礼してから部屋を退室していった。
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