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第7話_新たに宿す忠誠-1
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メンテナンス棟と王宮とを結ぶ連絡通路を通り、ソウヤはイツキ王子殿下の間へと戻ってきた。
扉前で黒スーツに姿を変え、先程のサンチェス博士との遭遇で乱れた髪を整えてから、ドアをノックする。
「殿下、『S-Y』戻りましてございます…」
すると、声掛け途中で食い気味にドアが開き、ソウヤは明るいはずの室内から自分の身体に落ちる影に、一瞬ぎょっとする。
「!!」
目の前には黒い壁があり、顔を上げると文字通り壁のような大男が扉前を塞ぎ、真顔でこちらを見下ろしていた。
…陛下の護衛機…!!
部屋の中の照明を背に、陰影のつく面差しは凄みを増し、ソウヤは思わず声を失い呆然と眺め上げる。
顔形はしっかりとインプットしていたものの、昨日はやや距離を置いての対面だったため、今初めて間近に捉えた彼の大きさに驚かされてしまっていた。
「お帰り」
と、室内から穏やかな口調の呼び声が掛かり、我に返ったソウヤは男をすり抜けて歩を進め、扉横に立つ。
「長時間に渡り任務を放棄してしまい、申し訳ございませんでした、国王陛下、王子殿下。ただいまメンテナンスより帰還致しました」
「うん、ご苦労様」
イツキ王子殿下の間では、ハヅキ国王陛下が待っていた。
ベッド横のコーナーソファには陛下が、斜め対面に王子殿下が座り、顔を上げたソウヤが視線を合わせると、陛下はにこりと微笑んだ。
「メンテナンス技術者から調査結果を貰って、目を通したよ。何事も無くてなによりだ」
「…! お手を煩わせてしまい、大変申し訳ございません…」
「いいんだよ。イツキへの護衛を今のまま続けることが出来て、私も安心しているんだ」
ひたすら恐縮するソウヤへ、陛下は優しく言葉を贈る。
「昨日着任したばかりで、今日の凶事…まだ不慣れであろうに、脅威の手がすぐ届く所にいたイツキを即座に連れて避難し、屋上まで辿り着かせてくれた。君の咄嗟の判断が無かったならばと、想像するのが怖い。…ありがとう、感謝しているよ」
「勿体無いお言葉です…」
陛下のねぎらいに深く頭を下げると、ソウヤは少し躊躇いがちに続ける。
「…私の不手際により、王子殿下のお部屋まで足をお運び頂くことになりましたこと…御身にご不自由がありますのに、重ねて非礼をお詫び致します…」
「そんなに謝らないでくれ。君がこの子の護衛に付いてくれるまで、最近しばらくはずっとこうして過ごしていたんだ。移動は私の護衛が助けてくれるから、私自身は何の苦労も無いんだよ。…気遣ってくれてありがとう」
扉前で黒スーツに姿を変え、先程のサンチェス博士との遭遇で乱れた髪を整えてから、ドアをノックする。
「殿下、『S-Y』戻りましてございます…」
すると、声掛け途中で食い気味にドアが開き、ソウヤは明るいはずの室内から自分の身体に落ちる影に、一瞬ぎょっとする。
「!!」
目の前には黒い壁があり、顔を上げると文字通り壁のような大男が扉前を塞ぎ、真顔でこちらを見下ろしていた。
…陛下の護衛機…!!
部屋の中の照明を背に、陰影のつく面差しは凄みを増し、ソウヤは思わず声を失い呆然と眺め上げる。
顔形はしっかりとインプットしていたものの、昨日はやや距離を置いての対面だったため、今初めて間近に捉えた彼の大きさに驚かされてしまっていた。
「お帰り」
と、室内から穏やかな口調の呼び声が掛かり、我に返ったソウヤは男をすり抜けて歩を進め、扉横に立つ。
「長時間に渡り任務を放棄してしまい、申し訳ございませんでした、国王陛下、王子殿下。ただいまメンテナンスより帰還致しました」
「うん、ご苦労様」
イツキ王子殿下の間では、ハヅキ国王陛下が待っていた。
ベッド横のコーナーソファには陛下が、斜め対面に王子殿下が座り、顔を上げたソウヤが視線を合わせると、陛下はにこりと微笑んだ。
「メンテナンス技術者から調査結果を貰って、目を通したよ。何事も無くてなによりだ」
「…! お手を煩わせてしまい、大変申し訳ございません…」
「いいんだよ。イツキへの護衛を今のまま続けることが出来て、私も安心しているんだ」
ひたすら恐縮するソウヤへ、陛下は優しく言葉を贈る。
「昨日着任したばかりで、今日の凶事…まだ不慣れであろうに、脅威の手がすぐ届く所にいたイツキを即座に連れて避難し、屋上まで辿り着かせてくれた。君の咄嗟の判断が無かったならばと、想像するのが怖い。…ありがとう、感謝しているよ」
「勿体無いお言葉です…」
陛下のねぎらいに深く頭を下げると、ソウヤは少し躊躇いがちに続ける。
「…私の不手際により、王子殿下のお部屋まで足をお運び頂くことになりましたこと…御身にご不自由がありますのに、重ねて非礼をお詫び致します…」
「そんなに謝らないでくれ。君がこの子の護衛に付いてくれるまで、最近しばらくはずっとこうして過ごしていたんだ。移動は私の護衛が助けてくれるから、私自身は何の苦労も無いんだよ。…気遣ってくれてありがとう」
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