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第5話_初護衛任務-2
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と、一抹の寂しさを募らせるソウヤの耳が、微かな電子音を察知する。
「!」
イツキ王子の居るカウチソファと逆側の壁へ振り返った瞬間、遠くの方で爆発音が聞こえた。
同時に届いた地面からの振動に、イツキ王子も飛び起きる。
「…何!?」
「殿下、お傍に」
ソウヤはすぐさま王子を背に護るように控えると、迎賓館のセキュリティシステムへアクセスし、同期を開始する。
接続障害が起きているのか得られる情報は不鮮明だったが、建物エントランス付近が大きく損傷しているようだった。
迎賓館は、建物中心部に広大な中庭のある、上空からくり抜かれたような造りをしている。
ソウヤとイツキ王子が今いる控室は、エントランスから中庭を挟んで対面という最も離れた位置にあるが、同じ1階部分であり、また中庭を囲うガラスウォールを割られた場合は、到達距離が格段に短縮される。
…迎賓館の入口が壊された。爆発物…しかも相当な出力のものだ。
…先に聞こえた電子音は、時限装置のセンサーのようだった。
…爆発物が事前に仕掛けられてた…単なる事故ではなく、計画されたテロかもしれない。
ふたりが黙する中、部屋の外では複数人が行き交う足音や叫び声が聞こえてくる。
やがて、給仕のひとりが顔を真っ青にしながら入室してきた。
「殿下、迎賓館にテロリストが侵入しました…! 今は稼働可能なセキュリティシステムと警備ロボットで迎撃中です」
「被害の程は?」
「わからん! 賊の火器が強く、混乱を極めている。エントランス以外も爆破され、侵入されているという話も聞いた…避難経路が確保出来んかもしれない」
問い掛けたソウヤへ語気を強めながら答え、給仕はイツキ王子を見る。
「ひとまず、安全が確認出来るまでこちらにおいで下さい。部屋のロックは厳重にかかりますし、防火・防弾性能も高い作りになっております」
「…う、うん」
「護衛、殿下と共にこの場で待機せよ。何かあれば殿下の盾となるのだぞ!」
「承知致しました」
そう言い残すと、給仕は控室を走り出ていった。
「…ここに居て、本当に大丈夫なの…?」
見上げてくる王子の不安気な眼差しを受け止め、ソウヤは同期した迎賓館内部の現状と、王子と自分が晒されている状況とを照らし合わせる。
…侵入者による建物への被害は、既に1階の1/3程にまで進んでる。
…確かに部屋の構造は頑強だけど、エントランスを破壊したものと同等の爆発物を仕掛けられたら、簡単に穴を開けられてしまうだろう。
…脅威と同じ階層に居るよりは、救援が見込めるヘリポートに繋がる最上階か、シェルターのある地下2階へ移動した方が良いかもしれない。
ソウヤは王子の正面へ立ち、彼の目線まで屈んだ。
「給仕の方はここで待機せよとのことでしたが、私は別の場所へ移って避難したく、殿下に上奏申し上げます」
「!」
「部屋の外の状況が不鮮明ではありますが、上層・下層階への経路さえ確保出来れば、ここより安全な場所へ殿下をお連れ出来るはずです」
「うん…」
頷くものの、あまり先行きの見えないソウヤの提案に、王子は憂うような表情を崩せない。
断続的に続く地響きと、次第に増す部屋外の喧騒の中、ソウヤは王子の前に膝を折り、柔らかな眼差しを送った。
「ご安心下さい、あなた様のお召し物へ汚れひとつ付けません。必ずご安全が保障されるところまでお送り致します」
騒音をかき消すようなはっきりとした声色と落ち着き払った物腰に、イツキ王子の目が大きく見張った。
「!」
イツキ王子の居るカウチソファと逆側の壁へ振り返った瞬間、遠くの方で爆発音が聞こえた。
同時に届いた地面からの振動に、イツキ王子も飛び起きる。
「…何!?」
「殿下、お傍に」
ソウヤはすぐさま王子を背に護るように控えると、迎賓館のセキュリティシステムへアクセスし、同期を開始する。
接続障害が起きているのか得られる情報は不鮮明だったが、建物エントランス付近が大きく損傷しているようだった。
迎賓館は、建物中心部に広大な中庭のある、上空からくり抜かれたような造りをしている。
ソウヤとイツキ王子が今いる控室は、エントランスから中庭を挟んで対面という最も離れた位置にあるが、同じ1階部分であり、また中庭を囲うガラスウォールを割られた場合は、到達距離が格段に短縮される。
…迎賓館の入口が壊された。爆発物…しかも相当な出力のものだ。
…先に聞こえた電子音は、時限装置のセンサーのようだった。
…爆発物が事前に仕掛けられてた…単なる事故ではなく、計画されたテロかもしれない。
ふたりが黙する中、部屋の外では複数人が行き交う足音や叫び声が聞こえてくる。
やがて、給仕のひとりが顔を真っ青にしながら入室してきた。
「殿下、迎賓館にテロリストが侵入しました…! 今は稼働可能なセキュリティシステムと警備ロボットで迎撃中です」
「被害の程は?」
「わからん! 賊の火器が強く、混乱を極めている。エントランス以外も爆破され、侵入されているという話も聞いた…避難経路が確保出来んかもしれない」
問い掛けたソウヤへ語気を強めながら答え、給仕はイツキ王子を見る。
「ひとまず、安全が確認出来るまでこちらにおいで下さい。部屋のロックは厳重にかかりますし、防火・防弾性能も高い作りになっております」
「…う、うん」
「護衛、殿下と共にこの場で待機せよ。何かあれば殿下の盾となるのだぞ!」
「承知致しました」
そう言い残すと、給仕は控室を走り出ていった。
「…ここに居て、本当に大丈夫なの…?」
見上げてくる王子の不安気な眼差しを受け止め、ソウヤは同期した迎賓館内部の現状と、王子と自分が晒されている状況とを照らし合わせる。
…侵入者による建物への被害は、既に1階の1/3程にまで進んでる。
…確かに部屋の構造は頑強だけど、エントランスを破壊したものと同等の爆発物を仕掛けられたら、簡単に穴を開けられてしまうだろう。
…脅威と同じ階層に居るよりは、救援が見込めるヘリポートに繋がる最上階か、シェルターのある地下2階へ移動した方が良いかもしれない。
ソウヤは王子の正面へ立ち、彼の目線まで屈んだ。
「給仕の方はここで待機せよとのことでしたが、私は別の場所へ移って避難したく、殿下に上奏申し上げます」
「!」
「部屋の外の状況が不鮮明ではありますが、上層・下層階への経路さえ確保出来れば、ここより安全な場所へ殿下をお連れ出来るはずです」
「うん…」
頷くものの、あまり先行きの見えないソウヤの提案に、王子は憂うような表情を崩せない。
断続的に続く地響きと、次第に増す部屋外の喧騒の中、ソウヤは王子の前に膝を折り、柔らかな眼差しを送った。
「ご安心下さい、あなた様のお召し物へ汚れひとつ付けません。必ずご安全が保障されるところまでお送り致します」
騒音をかき消すようなはっきりとした声色と落ち着き払った物腰に、イツキ王子の目が大きく見張った。
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