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第5話_初護衛任務-1

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翌日、予定通りヤマト王国の友好国・カリメ連邦王国から王太子が訪国した。
ソウヤはイツキ王子殿下の乗る公用車に同乗し、政府専用の湾岸エアポートへ移動する。
エアポートまでは王宮のある王立公園直通のハイウェイから一直線で、30分ほどで到着した。

依然片脚に不自由の残るハヅキ国王陛下は、周囲の静止を押して杖をついて待機し、案じる面差しを浮かべる王太子と抱擁した。
厳重な警備体制の下、盛大な歓待セレモニーが執り行われ、その後陛下御身への負担を鑑みて、速やかに迎賓館へ移動となった。

迎賓館は、首相官邸と王宮との3地点でほぼ正三角形を描く位置にあり、公用車の車列は来たルートをほぼ引き返し、西欧風の荘厳な造りの建物外観を捉えながらエントランスへ滑り込む。
陛下と王太子の会談は昼過ぎから予定され、その後の会食のため、王子は用意が整うまで館内の一室にて待機となった。

迎賓館の豪奢な内装に目を見張りつつ、ソウヤは少し疲れの見えるイツキ王子をカウチソファへ座らせる。
ふたりが部屋へ入ったすぐ後に、会食用の着替えを持ってきた給仕が続いて入室した。

衣装を手にしたままその場に立ち、王子の着替えを待って控える彼らを見、ソウヤはカウチに横になってしまった王子へ振り向いた。

「殿下、お着替えは」
「まだいい…」

困ったソウヤは、再び給仕たちへ向く。

「後で私がお手伝いしますので、衣装だけ置いていって頂けますか?」

給仕たちが部屋から退室していくと、ソウヤは少し迷いながら、預かった衣装をソファの背もたれやローテーブルへ並べていく。

…なんだかパーツや装飾が多い衣装だな…
…軽々しく手伝うって言ってしまったけど、正しくお着替えをお助け出来るだろうか。

広げた衣装たちを上から睨み首をひねるソウヤに、イツキ王子は寝転がりながら声を掛けた。

「君の分の着替えは無いの?」
「? ございませんよ。私は護衛ですから、原則としてこの黒スーツが常の正装です」
「…」

胸に手を当て畏まって答えたものの、問いかけた当の王子は無反応のまま、視線を外した。

「…従前の護衛は、こういう時は着替えておりましたか?」
「ううん、君と同じ。…ちょっと聞いてみただけ」

王子はそうそっけなく返し、カウチの背もたれの方へ顔を向けてしまった。
それ以上の会話を拒絶するような態度を見せる彼に、ソウヤはまたしても胸を痛めた。

…殿下との会話は難しいな…人間相手のコミュニケーションの取り方は、博士の下でしか学んでこなかったから、圧倒的に経験不足だ。
…このままぎこちないやり取りを繰り返していたら、ますます嫌われてしまいそうだ…
…どうすれば、俺にお心を開いてくれるんだろうか。
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