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第4話_ヤマト国王家への拝謁-7
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宮中をイツキ王子とくまなく歩いていると、あっという間に夕刻を越えた。
食事と湯浴みを済ませた王子は、ソウヤを伴って部屋へ引っ込み、早々と床につく。
寝間着に着替えた王子は、傍に控えるソウヤをちろりと見やった。
「――明日は宜しくね」
「はい、殿下。お休みなさいませ」
ソウヤがにこりと微笑んでそう返すと、王子は薄く頷いて背を向ける。
天蓋の下がる大きなベッドに小さな体がころんと横たわり、羽毛の肌掛けを手繰り寄せ、もぞもぞと潜り込む。
ほどなく小さい寝息が聞こえ始めると、ソウヤはルームシステムへアクセスして部屋の照明を落とし、暗がりの中音を立てないよう、側机の椅子へ腰掛けた。
「…」
護衛アンドロイドのソウヤには、王宮内に部屋は与えられなかった。
護衛対象を日夜問わず常に守るため、24時間いつでも共に居ることが当然の責務として課されるからである。
ミヤジマ博士の研究所にいた時は、夜間を含めほとんどの時間を博士の部屋で過ごすことになってはいたが、自分専用の部屋をきちんと与えられていた。
また、本来食事や睡眠もアンドロイドには必要とされない生理現象で、加えて昼夜の区別も無く休息も不要だったが、博士と生活リズムを合わせ、夜伽の無い夜は目を閉じて身体を休めていた。
原子炉稼働のソウヤにとって、休息時間は意味の無いものでありつつも、博士から「寝顔が可愛い」と言ってもらえるのが嬉しかった。
博士は常に、ソウヤをひとりの人間と変わりない存在と認め、愛情を注いでくれた。
今夜からは、護衛の任を賜った王子殿下をこの暗がりの中ずっと見守り続ける日々が、毎日続く。
昨日から180度様変わりしたみずからの立場に、ソウヤは胸を締め付けられていた。
人間に使われるために造られたアンドロイドには、本来尊厳は無い。
人間と変わりない権利を与えられ、それをずっと何の疑いも無く享受していたソウヤは、自分が"人間の道具としてのアンドロイド"でしかないという事実を、生まれて初めて肌で感じていた。
今まで当然手にしていた尊厳を突然奪われた空虚感に、胸に刺さる痛みを紛らわすことが出来ないでいた。
…陛下はお優しい方だ。
…殿下も…俺のことは嫌いかもしれないけど、きっと悪いようにはなさらないと思う。
…でも…
四六時中その視界に収めていなければならないイツキ王子の寝姿から視線を外し、ソウヤは両膝を抱え、顔を伏せた。
…研究所に戻りたい。
…博士に会いたい…
食事と湯浴みを済ませた王子は、ソウヤを伴って部屋へ引っ込み、早々と床につく。
寝間着に着替えた王子は、傍に控えるソウヤをちろりと見やった。
「――明日は宜しくね」
「はい、殿下。お休みなさいませ」
ソウヤがにこりと微笑んでそう返すと、王子は薄く頷いて背を向ける。
天蓋の下がる大きなベッドに小さな体がころんと横たわり、羽毛の肌掛けを手繰り寄せ、もぞもぞと潜り込む。
ほどなく小さい寝息が聞こえ始めると、ソウヤはルームシステムへアクセスして部屋の照明を落とし、暗がりの中音を立てないよう、側机の椅子へ腰掛けた。
「…」
護衛アンドロイドのソウヤには、王宮内に部屋は与えられなかった。
護衛対象を日夜問わず常に守るため、24時間いつでも共に居ることが当然の責務として課されるからである。
ミヤジマ博士の研究所にいた時は、夜間を含めほとんどの時間を博士の部屋で過ごすことになってはいたが、自分専用の部屋をきちんと与えられていた。
また、本来食事や睡眠もアンドロイドには必要とされない生理現象で、加えて昼夜の区別も無く休息も不要だったが、博士と生活リズムを合わせ、夜伽の無い夜は目を閉じて身体を休めていた。
原子炉稼働のソウヤにとって、休息時間は意味の無いものでありつつも、博士から「寝顔が可愛い」と言ってもらえるのが嬉しかった。
博士は常に、ソウヤをひとりの人間と変わりない存在と認め、愛情を注いでくれた。
今夜からは、護衛の任を賜った王子殿下をこの暗がりの中ずっと見守り続ける日々が、毎日続く。
昨日から180度様変わりしたみずからの立場に、ソウヤは胸を締め付けられていた。
人間に使われるために造られたアンドロイドには、本来尊厳は無い。
人間と変わりない権利を与えられ、それをずっと何の疑いも無く享受していたソウヤは、自分が"人間の道具としてのアンドロイド"でしかないという事実を、生まれて初めて肌で感じていた。
今まで当然手にしていた尊厳を突然奪われた空虚感に、胸に刺さる痛みを紛らわすことが出来ないでいた。
…陛下はお優しい方だ。
…殿下も…俺のことは嫌いかもしれないけど、きっと悪いようにはなさらないと思う。
…でも…
四六時中その視界に収めていなければならないイツキ王子の寝姿から視線を外し、ソウヤは両膝を抱え、顔を伏せた。
…研究所に戻りたい。
…博士に会いたい…
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