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第4話_ヤマト国王家への拝謁-1

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首相官邸から王宮のある王立公園までは車で10分足らずとほど近く、春への蕾をつける木々と色の薄い芝生に覆われた広大な内地を、ミヤジマ博士とソウヤと乗せた公用車が、緩いカーブを描きながら中央を目指して走る。

王宮正面のロータリーに着けると、見覚えのあるロマンスグレーの軍服男が、精鋭揃いの国防隊員たちを従えて出迎えた。

「トクラさん!」

車から降りるなり、そう声をあげて早足で近付くミヤジマ博士へ、トクラ国防隊統合幕僚長は軽く頷く。

「なんで貴方がここに?」
「今回の件は私が君を推挙したからな、首相より後見人を頼まれた」
「心配して来てくれたのかと思いました」
「文字通り、昨晩は眠れない夜を過ごしたよ。こちらの出した無理難題な指令に、よく応えてくれた。感謝する」
「クールでムッツリなトクラさんから、お褒めの言葉を頂けるとは思いませんでした。じゃ、防衛費か貴方のポケットマネーから何かご褒美ねだっていいです? 原子炉1基とか」
「…謝意は撤回する」

そう返すと、博士に続いて背後に立つ青年へ視線を移した。

「それが『S-Y』か」
「! はい。貴方は初見でしたね」
「ふむ…」

その小柄な体躯を上から下まで眺め、トクラ氏は少し眉を寄せはしたものの、すぐに表情を戻す。

「…とても護衛然とした風体には見えないが…条件には適っている、ということだな」
「ええ。ご納得頂けませんか?」
「私には、可否を判断出来る知識も技術も無い。王家の下した判断と、君の腕を信じるだけだ」

そうさらりと流し、『S-Y』――ソウヤの正面へ立った。

「王家の護衛任務は過酷だ。先日襲撃を受け、被害を被ったと世界的に知られた現状は、更に厳しい警戒レベルに晒されている…"繋ぎ"であっても、任務期間中に弛みは許されない。心して励みなさい」
「はい」

ソウヤが応えると、トクラ氏は踵を返し、ふたりを先導して王宮内へ進む。
歩きながら、ミヤジマ博士へ手短に事務連絡を伝える。

「今朝方追って送ってくれた護衛機に関するマニュアルは、王家側へ開示済だ。私とは懇意でも、王家にとって君は新参…いくつかご質疑がなされるかもしれないが、包み隠さず申し上げるように。今後円滑な関係を築くためにもな」
「了解です」
「それから…生身の警備兵やSPに一部例外は居るが、王宮内の警備システムは概ね国防司令局が管理している。君の護衛機が助けを必要とする場面もあるだろう、同期させておくといい」
「ご配慮頂き光栄です」
「なに、特別なことではない。王宮にアンドロイドを納品している製造元に対しては、総じて奨めていることだ」
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