Reactor Heart -原子炉心臓の天使-

第3話_サンチェス博士-4

今回の納品へ向けて直前に施した改良と性能付加を含め、ソウヤの身体はその他も色々と特別仕様になっている。

王家へは仕様詳細を概ね提出済で、強靭で剛健な見た目のボディが通例の護衛機とはかけ離れた痩躯でありながら、王家が提示する搭載スペックの基準を満たしていた。
ソウヤはセクサロイドから、その真逆の存在と言える護衛型アンドロイドへ鞍替えするという異例の経歴を経て、ミヤジマ博士の思惑通り無事王家の承認を獲得したのだった。

「後でこいつの開発とリペア記録は送っとく。宜しく頼むぜ、相棒・・」

ミヤジマ博士はサンチェス博士の肩に手を置き、そう軽口を吐く。

「…先輩・・と敬って欲しいものね」

サンチェス博士はそれを手酷く払い、ひとつため息をつくと、踵を返しながらミヤジマ博士とその背後へ隠れるように立つソウヤを流し見た。

「あなたたちのお陰で、政治家連中や中央役人共は、数日間話題に困らなそうよ。これ以上彼らから不興を買わないよう、せいぜい励みなさい」

そう言葉を投げ、ふたりが声を返す間もなくさっさと退室し、耳に小気味の良いハイヒール音が遠ざかっていく。
ミヤジマ博士は後ろ頭を掻き、ソウヤはその背後がら戸惑う表情を浮かべつつ、サンチェス博士の後ろ姿を見送った。

「…全く、心配性な奴だぜ」
「…えっ…？」

サンチェス博士に対し少し苦手意識を芽生えさせ始めていたソウヤは、虚を突かれたようにミヤジマ博士を見上げる。

「…心配、して下さってたんですか…？」
「そう思っといた方が気楽だろ？」
「…？」

眉を寄せて疑問符を表出すソウヤへ、ミヤジマ博士はにやりと笑って返した。
そこで、サンチェス博士と入れ違うように王宮からの使いが入室する。

「お待たせしました。参りましょう」
「はいよー。…行くか、いよいよ」
「…はい」

博士の言動を素直に受け止めきれないソウヤは、彼に背を押されながら退出し、送迎車の待つ官邸正面ロータリーへ向かった。