Reactor Heart -原子炉心臓の天使-

独楽 悠

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本編

第2話_巣立ちの日-4

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問われて自分の身体を触ったりひねったりしてみせる姿を見、ミヤジマ博士は満足気な表情を浮かべてひとつ頷くと、椅子から立ってソウヤへ歩み寄る。

「今日からお前は、この王国のあるじたる国王陛下の後継者、王子殿下の護衛アンドロイドになる。国内に出回ってる護衛機としては最高クラスの名誉だ。自信持って、自分てめぇを誇れ」
「はい」
「今のお前は、アンドロイド開発技術者としての俺の集大成だ。俺の持ち得る技術力の全てを賭けて、どこに出しても恥ずかしくない、どこのどいつが相手でも不足の無い、この世で唯一無二の護衛機に仕立て上げてやった。…存分に暴れて来い」
「はい」

創造主からの訓示に静かに頷き返すソウヤへ、ミヤジマ博士はやや間を置いてから、真顔で続ける。

「…お前を他所へやる俺を恨むか?」
「いえ」
「よし。…良い子だな」

博士は、ふと面差しを緩めた。

「お前にとっちゃ、寝耳に水の話になっちまったな。本来なら造った時には、お前にこんな未来なんざ用意しちゃいなかったし、俺も手放すつもりなんて更々無かった。…ずっと傍に置いときたかった」
「…博士…」
「でもな、俺はお前に研究所ここ以外の外の世界を経験させたいとも思ってた。色んなものを吸収して、刺激貰って、より感情豊かになって欲しい。…今回のイレギュラーが、お前を生み出した本当の意味を見出すものになるかもしれねぇな」

護衛機にとっては修羅の地となるだろう王宮へ赴くには、あまりに儚い痩躯をさすりながら、博士はそう抱える胸中を伝えた。

「…これが俺なりの、お前への愛情表現だ。受け止めてくれるか?」
「はい、博士。ミヤジマの名に恥じぬよう、全身全霊で務めてきます」

強い意志を放つ藍色の瞳が、そうはっきりと応えるのを聞くと、博士はスクラブの胸ポケットから何かを取り出し、目の高さに見せる。

「…! これは」

指の間に挟まっていたのは、青く光る宝石の嵌った片ピアスだった。
博士の着けているものと酷似したそれを見、ソウヤの頬がうっすらと染まる。

「俺とお揃いだ。失くすなよ」

博士はピアスを、ソウヤの自分とは逆側の耳に着けてやる。

そうして身支度が整った彼の両肩に手を置き、博士はにやりと笑いかけた。

「行ってこい、ソウヤ」
「はい!」
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