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プロローグ-2
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とある日のヤマト王国の首相官邸には、昼過ぎから国内の名だたる要人が呼ばれ、大ホールへ集まってきていた。
招聘された目的は、王子の新たな護衛アンドロイドとの顔合わせで、様々な事由で入れ替わるごとに執り行われる儀式的なものではあったが、要人側もアンドロイド側もお互いに顔見知りとなることで双方の安全も保障され、いつなん時も外部の脅威にさらされかねない国の重役達のリスクを軽減する、非常に重要で不可欠な機会となっていた。
大ホールには、王国の中枢を担う国務大臣や政治家のほか、中央省庁のトップレベルの官僚、メガバンクの頭取、国の息が色濃くかかった民間企業CEOなどの顔が並ぶ。
そして、もはや要人の警護に必要不可欠となったアンドロイド開発技術者も数名、彼らと肩を並べる存在として姿を見せていた。
整然と並べられた椅子へ着席しながら、集められた要人たちは小声で囁き合う。
「――陛下のお加減はいかがなのか? あれから公の場には一切お姿を見せていないが…」
「外科的に出来る処置は一旦済んでいるが、今後何度かに分けて少しずつ加療なさるそうだ。聞いたところによると、お顔とおみ脚に御不自由を残してしまったらしい…完治のお見込みはあるのか、宮中からの回答は未だ保留中だ」
「なんと…! まだお若い御身に、お労しい…」
「それほど甚大な凶事だったのだ。ゆえに、此度の不測な護衛の入替にも至った」
「警備ロボットのみにとどまらず、人的被害も大きかった…王宮仕えの者たちにも、何名か殉職者が出ている」
「悲惨よの。機械連中だけであれば、鉄屑が増えるだけで済んだものを」
「とかく、今回の件で王宮の警備体制に穴があることを国内外に知らしめてしまった…この事実はおおいな損失。王宮には一日も早い警備体制の復調と改善が求められるだろう」
「今回破損した護衛アンドロイド…結果的にはその身をもって辛くも王家を守ったと美談にはなるが、実績から評すれば性能は今一つであったな」
「新興企業に参入を許したのは時期尚早であった。王家が被った被害は大きい…早急に国会で審議し、製造元には相応の処罰を下さねばなるまい」
「入替機の性能にも、一層期待がかかるというものだな。出処はあの若造らしいと聞くが…、ああ、サンチェス博士」
そらをみて思いたった要人のひとりが、斜め後ろの席に座っていたスーツに白衣を羽織った技術者らしき人物へ振り返り、雑談していた周囲の者も一様に視線だけを投げた。
「あんた、同じ技術者としてなにか耳にしてないのかね?」
「…いえ、特には」
「それは意外だ。彼とは随分と懇意にしているそうじゃないか。…本人から直接聞き及んでることもあるんじゃないかね?」
「同業と言えど、開発データや受発注に関わる情報は、AI機開発機密保持法に則り秘匿事項と定められております。…法律に明るい先生方であれば、当然ご存じなのでは?」
冷めた目でそう返され、薄ら笑みを浮かべながら振り返っていた初老の要人は、不満気に鼻を鳴らしながら前へ向き直る。
周りの者も、当てが外れたと言いたげな表情を浮かべ、軽く眉を上げつつ視線を戻していく。
サンチェス博士へ問いかけた要人は、前へ向き直ってからわざとらしく、周囲に届く声量でぼやいた。
「――あれの手掛けるものは、警備システムにしろAIにしろ、今般こと『国防』へはすこぶるもてはやされていると聞く。国家予算を我が物顔で湯水のように使う若造の鼻をへし折ってやりたい心地にはなるが、王子殿下の安全、ひいては王家の安寧が最重要事項。次はまともな物を期待しよう」
その口上に周囲は一瞬湧き、気が済んだのか要人たちは別の話題へ移し、雑談を続けていった。
「……」
…他者を蹴落とすことしか出来ない、能無し狸共め。
胡麻塩の薄頭たちへ向け、サンチェス博士は内で悪態を吐きかけた。
招聘された目的は、王子の新たな護衛アンドロイドとの顔合わせで、様々な事由で入れ替わるごとに執り行われる儀式的なものではあったが、要人側もアンドロイド側もお互いに顔見知りとなることで双方の安全も保障され、いつなん時も外部の脅威にさらされかねない国の重役達のリスクを軽減する、非常に重要で不可欠な機会となっていた。
大ホールには、王国の中枢を担う国務大臣や政治家のほか、中央省庁のトップレベルの官僚、メガバンクの頭取、国の息が色濃くかかった民間企業CEOなどの顔が並ぶ。
そして、もはや要人の警護に必要不可欠となったアンドロイド開発技術者も数名、彼らと肩を並べる存在として姿を見せていた。
整然と並べられた椅子へ着席しながら、集められた要人たちは小声で囁き合う。
「――陛下のお加減はいかがなのか? あれから公の場には一切お姿を見せていないが…」
「外科的に出来る処置は一旦済んでいるが、今後何度かに分けて少しずつ加療なさるそうだ。聞いたところによると、お顔とおみ脚に御不自由を残してしまったらしい…完治のお見込みはあるのか、宮中からの回答は未だ保留中だ」
「なんと…! まだお若い御身に、お労しい…」
「それほど甚大な凶事だったのだ。ゆえに、此度の不測な護衛の入替にも至った」
「警備ロボットのみにとどまらず、人的被害も大きかった…王宮仕えの者たちにも、何名か殉職者が出ている」
「悲惨よの。機械連中だけであれば、鉄屑が増えるだけで済んだものを」
「とかく、今回の件で王宮の警備体制に穴があることを国内外に知らしめてしまった…この事実はおおいな損失。王宮には一日も早い警備体制の復調と改善が求められるだろう」
「今回破損した護衛アンドロイド…結果的にはその身をもって辛くも王家を守ったと美談にはなるが、実績から評すれば性能は今一つであったな」
「新興企業に参入を許したのは時期尚早であった。王家が被った被害は大きい…早急に国会で審議し、製造元には相応の処罰を下さねばなるまい」
「入替機の性能にも、一層期待がかかるというものだな。出処はあの若造らしいと聞くが…、ああ、サンチェス博士」
そらをみて思いたった要人のひとりが、斜め後ろの席に座っていたスーツに白衣を羽織った技術者らしき人物へ振り返り、雑談していた周囲の者も一様に視線だけを投げた。
「あんた、同じ技術者としてなにか耳にしてないのかね?」
「…いえ、特には」
「それは意外だ。彼とは随分と懇意にしているそうじゃないか。…本人から直接聞き及んでることもあるんじゃないかね?」
「同業と言えど、開発データや受発注に関わる情報は、AI機開発機密保持法に則り秘匿事項と定められております。…法律に明るい先生方であれば、当然ご存じなのでは?」
冷めた目でそう返され、薄ら笑みを浮かべながら振り返っていた初老の要人は、不満気に鼻を鳴らしながら前へ向き直る。
周りの者も、当てが外れたと言いたげな表情を浮かべ、軽く眉を上げつつ視線を戻していく。
サンチェス博士へ問いかけた要人は、前へ向き直ってからわざとらしく、周囲に届く声量でぼやいた。
「――あれの手掛けるものは、警備システムにしろAIにしろ、今般こと『国防』へはすこぶるもてはやされていると聞く。国家予算を我が物顔で湯水のように使う若造の鼻をへし折ってやりたい心地にはなるが、王子殿下の安全、ひいては王家の安寧が最重要事項。次はまともな物を期待しよう」
その口上に周囲は一瞬湧き、気が済んだのか要人たちは別の話題へ移し、雑談を続けていった。
「……」
…他者を蹴落とすことしか出来ない、能無し狸共め。
胡麻塩の薄頭たちへ向け、サンチェス博士は内で悪態を吐きかけた。
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