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本編
最終話_応援し隊の誕生-3(終)
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その排気音にやはり聞き覚えがあったのか、蒼矢はふたりを置いてパタパタと正門前の駐車場へ駆けていく。
「…烈!」
「「…!?」」
駐車場へと滑り込んできた赤い大型バイクから、やはり赤いヘルメットを脱ぎ、長身の大男が赤茶けた猫っ毛をふわりと風になびかせながら降りてくる。
諒たちが口を半開きにして見守る中、男――花房 烈は、走り寄る蒼矢へ先日と同じように大きく手を振ってみせた。
「…何でここに…!?」
「迎えにきた。そろそろ学校終わる頃だと思ってさ。タイミング良かったな!」
白い歯を見せながら笑う烈に、蒼矢はむっとした表情を返す。
「こんなことで、お前の時間を割かないで欲しい」
「俺にとっちゃ"こんなこと"じゃねぇよ。…お前、昨日帰ってくるのだいぶ遅かったろ?」
「! 知ってたのか…?」
「昨日、納品ついでに葉月さんと話して、ちょっと聞いて。大学でなんかあったのかなって、心配してたんだぞ」
事情を知る幼馴染に驚きつつも、依然眉を寄せて少し伏せる蒼矢の顔を、烈は横から覗き込む。
「…ごめん。迷惑だったか?」
「…迷惑じゃない。そんなわけない、けど…」
「じゃ、良かった。帰ろうぜ、母ちゃん飯作って待ってるぞ」
「!」
「お前がいてくれた方が、俺も母ちゃんも嬉しいんだ。…一緒に帰ろう」
ストレートに思いを伝えてくる烈の声掛けに、蒼矢は顔をあげ、小さく頷いた。
そして、ふたりのやり取りを眺めていた諒と啓介へ振り向く。
「悪い、今日はここで」
「! お、おう」
「また…明日な」
やはり乗り慣れた風に赤いバイクのタンデムに乗り込み、蒼矢と烈は軽く会釈しながら駐車場の砂利を巻き上げ、正門からあっという間に姿を消した。
取り残されたふたりは、しばらくその場に立ち尽くしていたが、やがて諒はぼそりと口を開く。
「…なんでかな。俺、無性にエイト先輩を応援したくなってきちゃったんだけど」
「わかる。俺も断然先輩派だぜ」
目の前で想定外に成立した三角関係に勝手な外野の決意を固めつつ、諒と啓介は硬い拳を合わせた。
―終―
「…烈!」
「「…!?」」
駐車場へと滑り込んできた赤い大型バイクから、やはり赤いヘルメットを脱ぎ、長身の大男が赤茶けた猫っ毛をふわりと風になびかせながら降りてくる。
諒たちが口を半開きにして見守る中、男――花房 烈は、走り寄る蒼矢へ先日と同じように大きく手を振ってみせた。
「…何でここに…!?」
「迎えにきた。そろそろ学校終わる頃だと思ってさ。タイミング良かったな!」
白い歯を見せながら笑う烈に、蒼矢はむっとした表情を返す。
「こんなことで、お前の時間を割かないで欲しい」
「俺にとっちゃ"こんなこと"じゃねぇよ。…お前、昨日帰ってくるのだいぶ遅かったろ?」
「! 知ってたのか…?」
「昨日、納品ついでに葉月さんと話して、ちょっと聞いて。大学でなんかあったのかなって、心配してたんだぞ」
事情を知る幼馴染に驚きつつも、依然眉を寄せて少し伏せる蒼矢の顔を、烈は横から覗き込む。
「…ごめん。迷惑だったか?」
「…迷惑じゃない。そんなわけない、けど…」
「じゃ、良かった。帰ろうぜ、母ちゃん飯作って待ってるぞ」
「!」
「お前がいてくれた方が、俺も母ちゃんも嬉しいんだ。…一緒に帰ろう」
ストレートに思いを伝えてくる烈の声掛けに、蒼矢は顔をあげ、小さく頷いた。
そして、ふたりのやり取りを眺めていた諒と啓介へ振り向く。
「悪い、今日はここで」
「! お、おう」
「また…明日な」
やはり乗り慣れた風に赤いバイクのタンデムに乗り込み、蒼矢と烈は軽く会釈しながら駐車場の砂利を巻き上げ、正門からあっという間に姿を消した。
取り残されたふたりは、しばらくその場に立ち尽くしていたが、やがて諒はぼそりと口を開く。
「…なんでかな。俺、無性にエイト先輩を応援したくなってきちゃったんだけど」
「わかる。俺も断然先輩派だぜ」
目の前で想定外に成立した三角関係に勝手な外野の決意を固めつつ、諒と啓介は硬い拳を合わせた。
―終―
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