上 下
76 / 77
本編

最終話_応援し隊の誕生-2

しおりを挟む
「――実はさ、お前の初対面、ちょっとビビってたんだよ」
「!」
「ちょっと近寄り難い空気を出してるように思えたから。同級生だからって、あまり親しげに話し掛けちゃまずそうかなって」
「あー、同じくそう思ってた。初見で俺確実に睨まれてたもん。まぁもう知るかって感じで、結構お構いなしにズカズカ行っちまったけどな!」

入学式での初対面の時をそう振り返るふたりの言を聞き、蒼矢ソウヤは頬を染めながら視線をそらした。

「…ごめん。他人ひととの初対面にはいつも苦労してるから…。あと、単純に初対面で話すのが苦手で」
「わかる、わかるぜ。いや、多分お前と同じ体験はしたことないけどな? 苦労が多そうってのは容易に想像出来るぜ」
「現に顔が広まった途端、現在進行形で毎日のように初見さんに会いに来られてるしね。対人ガードが固くなるのは無理もないよ」

一転して済まなそうに声を落とす蒼矢をフォローしつつも、リョウ啓介ケイスケは晴れやかな笑顔を浮かべていた。

3人は話を弾ませながら、正門へと続く銀杏並木道を歩く。

「よっしゃー、これでエイト先輩に次会った時に、胸張って言えるぞ!」
「早く名前覚えて貰わないとね」
「? なんで影斗エイト先輩の名前がここで出て来るんだ? あの人と何喋ったの?」
「!! そうだ、髙城タカシロ。この勢いで聞いちまってもいい? 先輩との関係」
「…先輩との? どういうこと?」

テンションが上がり過ぎたのか、啓介はその勢いで、核心めいた質問を蒼矢へ投げかけようとする。

…ちょっと待って、落ち着け、沖本オキモト
…それ聞いちゃうのはさすがに時期尚早だって…!

意図が解らず首を傾げる蒼矢から視線を遮るように、諒は啓介の前に割り入る。

「沖本っ、それは…――」

そう言いかけたタイミングで、正門の方からけたたましい排気音が近付き、諒の声をかき消した。
自動車とは違う、おそらくバイクのものと思われるそれに、直近で耳に残っている諒と啓介は同時に前方へと振り向く。

…この最高のタイミングで、まさかエイト先輩…!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

深海の星空

柴野日向
青春
「あなたが、少しでも笑っていてくれるなら、ぼくはもう、何もいらないんです」  ひねくれた孤高の少女と、真面目すぎる新聞配達の少年は、深い海の底で出会った。誰にも言えない秘密を抱え、塞がらない傷を見せ合い、ただ求めるのは、歩む深海に差し込む光。  少しずつ縮まる距離の中、明らかになるのは、少女の最も嫌う人間と、望まれなかった少年との残酷な繋がり。 やがて立ち塞がる絶望に、一縷の希望を見出す二人は、再び手を繋ぐことができるのか。 世界の片隅で、小さな幸福へと手を伸ばす、少年少女の物語。

居候高校生、主夫になる。〜娘3人は最強番長でした〜

蓮田ユーマ
青春
父親が起こした会社での致命的なミスにより、責任と借金を負い、もう育てていくことが出来ないと告白された。 宮下楓太は父親の友人の八月朔日真奈美の家に居候することに。 八月朔日家には地元でも有名らしい3人の美人姉妹がいた……だが、有名な理由は想像とはまったく違うものだった。 愛花、アキラ、叶。 3人は、それぞれが通う学校で番長として君臨している、ヤンキー娘たちだった。 ※小説家になろうに投稿していて、アルファポリス様でも投稿することにしました。 小説家になろうにてジャンル別日間6位、週間9位を頂きました。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

一人用声劇台本

ふゎ
恋愛
一人用声劇台本です。 男性向け女性用シチュエーションです。 私自身声の仕事をしており、 自分の好きな台本を書いてみようという気持ちで書いたものなので自己満のものになります。 ご使用したい方がいましたらお気軽にどうぞ

我ら同級生たち

相良武有
現代文学
 この物語は高校の同級生である男女五人が、卒業後に様々な形で挫折に直面し、挫折を乗り越えたり、挫折に押し潰されたりする姿を描いた青春群像小説である。   人間は生きている時間の長短ではなく、何を思い何をしたか、が重要なのである。如何に納得した充実感を持ち乍ら生きるかが重要なのである。自分の信じるものに向かって闘い続けることが生きるということである・・・

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

オトナになれないみづきと凜霞の4日間逃亡生活

らんでる
青春
小さな少女、みづきと大人びた少女、凜霞。 時間はたったの4日間。出会ったばかりの2人が海を目指し、繰り広げられる友情と恋愛の狭間の物語。

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

処理中です...