上 下
68 / 77
本編

第14話_新たな相関図-2

しおりを挟む
啓介ケイスケの考察に、リョウは目を見開き彼へ振り向く。
しかし、驚嘆の面持ちを向けられる啓介の表情は曇っていて、歩く足元を睨んでいた。

「でもなー、俺そんな距離感調整出来るような器用な人間じゃないからなぁ…先輩みたいに立ち回れるか、自信無いわ」
沖本オキモト…」

眉を寄せて思い悩む啓介を見、彼の考察を受けて気付きを得た諒は、少し考えてから口を開く。

「…別に、エイト先輩の真似をする必要は無いと思うんだ。さっきの先生だって付き合い方は違うだろうし、先輩のやり方が正しいとも限らないだろ?」
「…! そうだけど…」
「出会ったばかりの俺たちは、逆にまた新しい付き合い方を探っていけばいいんじゃないかな。…"お近付きなりたい"って言ってたろ。まだ1ヶ月しか経ってないのに、心折れるのは早過ぎるよ」
「そっか…うん、そうだな…!」

諒の助言に、暗い顔を晒していた啓介は、同じように気付きを得たようだった。

「それに、沖本は熱くて割と世話が掛かる奴だけど、髙城タカシロはそういう奴は嫌いじゃないと思う。きっと気に入られるよ。…俺は君たちの間に入って、美味いポジションを分けて貰うとするよ」
「…!? なんかさりげなく、お前らからの俺の印象ガキ臭くねぇ…!?」
「実際そうなんじゃない?」
「!! …まぁ、末っ子だけどさ」

若干不貞腐れた啓介だったが、すぐに面持ちを戻し、にやりと口角を上げてみせた。

「やっぱり良い奴だな、川崎カワサキ。俺に必要な言葉をくれる。適度に茶化すところも含めて満点だ」
「それはお互い様だよ」

諒もニッと笑い返し、顔を見合わせて少し頬を染めたふたりは、ホームに滑り込んできた電車へ並んで乗り込んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

M性に目覚めた若かりしころの思い出

なかたにりえ
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。 一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

かずのこ牧場→三人娘

パピコ吉田
青春
三人娘のドタバタ青春ストーリー。 ・内容 経営不振が続く谷藤牧場を建て直す為に奮闘中の美留來。 ある日、作業中の美留來の元に幼馴染の一人のびす子がやって来る。 びす子が言うには都会で頑張ってるはずのもう一人の幼馴染の花音が帰って来ると連絡が来たとの事だった。 いつも学生時代から三人で集まっていた蔵前カフェで花音と会う為に仕事を終わらせびす子と向かうと・・。

青春リフレクション

羽月咲羅
青春
16歳までしか生きられない――。 命の期限がある一条蒼月は未来も希望もなく、生きることを諦め、死ぬことを受け入れるしかできずにいた。 そんなある日、一人の少女に出会う。 彼女はいつも当たり前のように側にいて、次第に蒼月の心にも変化が現れる。 でも、その出会いは偶然じゃなく、必然だった…!? 胸きゅんありの切ない恋愛作品、の予定です!

SS集「高校生」

あおみなみ
青春
今まで書いたもののうち、高校生を主人公もしくはメインキャラにした5,000字未満の作品集です。

10のベッドシーン【R18】

日下奈緒
恋愛
男女の数だけベッドシーンがある。 この短編集は、ベッドシーンだけ切り取ったラブストーリーです。

片翼のエール

乃南羽緒
青春
「おまえのテニスに足りないものがある」 高校総体テニス競技個人決勝。 大神謙吾は、一学年上の好敵手に敗北を喫した。 技術、スタミナ、メンタルどれをとっても申し分ないはずの大神のテニスに、ひとつ足りないものがある、と。 それを教えてくれるだろうと好敵手から名指しされたのは、『七浦』という人物。 そいつはまさかの女子で、あまつさえテニス部所属の経験がないヤツだった──。

僕らの10パーセントは無限大

華子
青春
 10%の確率でしか未来を生きられない少女と  過去に辛い経験をしたことがある幼ななじみと  やたらとポジティブなホームレス 「あり得ない今を生きてるんだったら、あり得ない未来だってあるんじゃねえの?」 「そうやって、信じたいものを信じて生きる人生って、楽しいもんだよ」    もし、あたなら。  10パーセントの確率で訪れる幸せな未来と  90パーセントの確率で訪れる悲惨な未来。  そのどちらを信じますか。 ***  心臓に病を患う和子(わこ)は、医者からアメリカでの手術を勧められるが、成功率10パーセントというあまりにも酷な現実に打ちひしがれ、渡米する勇気が出ずにいる。しかしこのまま日本にいても、死を待つだけ。  追い詰められた和子は、誰に何をされても気に食わない日々が続くが、そんな時出逢ったやたらとポジティブなホームレスに、段々と影響を受けていく。  幼ななじみの裕一にも支えられながら、彼女が前を向くまでの物語。

処理中です...