59 / 77
本編
第13話_見守る眼差し-1
しおりを挟む
結局、先程の講義室にいた者ほとんどで中華屋へ繰り出した理学部生一行は、丁度夕方のピークが過ぎた頃合いに入店したため全員が店内へ入ることが出来、瞬く間に店中の座席を埋め尽くした。
飢えていた男子大学生たちは、触れ込み通りの豊富な品揃えと色とりどりの一品料理に歓喜しながら口々にオーダーしていき、運ばれてくる焼飯やら定食やらに舌鼓を打つ。
蒼矢や諒たちも、テーブル席でシェアした餃子をつまみながらラーメンをすする。
ふと諒は、対面に座っていた啓介の様子に目を止めた。
「あまり進んで無いな、沖本。腹減ってたんじゃなかったっけ?」
「…! あぁ、減ってる減ってる」
「口に合わなかった?」
「いや、美味いよ。川崎が気になってた通り、期待以上」
諒の問い掛けに明るくそう答えた啓介は、箸を動かして数本の麺を口に運ぶが、すぐに手を落として丼の縁に休める。
「…?」
「…やー、なんか今日は色々あって疲れちまって。箸持ち上げるのもひと苦労ってな」
眉をひそめる諒へ、そう啓介は困り笑顔を浮かべてみせた。
「どこか具合悪いでも――」
「沖本、腕痛めたんじゃないか?」
そう言いかけた隣から、同じように啓介の挙動に注視していた蒼矢が口を挟んだ。
虚を突かれた諒は、ぎくりとした面持ちを浮かべる啓介を認めてから、蒼矢へ振り向く。
「さっき、あのサークルの人に押し倒されてたろ。右肩から落ちたの、見てたから」
神妙な面差しからじっと見つめてくる蒼矢の視線に耐え切れなくなり、啓介は眉を下げながら息を吐き出す。
そして箸を置くと、しかめ面を浮かべながら右腕を少しだけ上げ下げしてみせた。
「…ぶっちゃけると、倒された後からずっと痛くて…これ以上上げられないんだ」
飢えていた男子大学生たちは、触れ込み通りの豊富な品揃えと色とりどりの一品料理に歓喜しながら口々にオーダーしていき、運ばれてくる焼飯やら定食やらに舌鼓を打つ。
蒼矢や諒たちも、テーブル席でシェアした餃子をつまみながらラーメンをすする。
ふと諒は、対面に座っていた啓介の様子に目を止めた。
「あまり進んで無いな、沖本。腹減ってたんじゃなかったっけ?」
「…! あぁ、減ってる減ってる」
「口に合わなかった?」
「いや、美味いよ。川崎が気になってた通り、期待以上」
諒の問い掛けに明るくそう答えた啓介は、箸を動かして数本の麺を口に運ぶが、すぐに手を落として丼の縁に休める。
「…?」
「…やー、なんか今日は色々あって疲れちまって。箸持ち上げるのもひと苦労ってな」
眉をひそめる諒へ、そう啓介は困り笑顔を浮かべてみせた。
「どこか具合悪いでも――」
「沖本、腕痛めたんじゃないか?」
そう言いかけた隣から、同じように啓介の挙動に注視していた蒼矢が口を挟んだ。
虚を突かれた諒は、ぎくりとした面持ちを浮かべる啓介を認めてから、蒼矢へ振り向く。
「さっき、あのサークルの人に押し倒されてたろ。右肩から落ちたの、見てたから」
神妙な面差しからじっと見つめてくる蒼矢の視線に耐え切れなくなり、啓介は眉を下げながら息を吐き出す。
そして箸を置くと、しかめ面を浮かべながら右腕を少しだけ上げ下げしてみせた。
「…ぶっちゃけると、倒された後からずっと痛くて…これ以上上げられないんだ」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
放課後はネットで待ち合わせ
星名柚花
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】
高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。
何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。
翌日、萌はルビーと出会う。
女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。
彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。
初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?
【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~
紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。
行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。
※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。
土俵の華〜女子相撲譚〜
葉月空
青春
土俵の華は女子相撲を題材にした青春群像劇です。
相撲が好きな美月が女子大相撲の横綱になるまでの物語
でも美月は体が弱く母親には相撲を辞める様に言われるが美月は母の反対を押し切ってまで相撲を続けてる。何故、彼女は母親の意見を押し切ってまで相撲も続けるのか
そして、美月は横綱になれるのか?
ご意見や感想もお待ちしております。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる