ガイアセイバーズ spin-off -T大理学部生の波乱-

独楽 悠

文字の大きさ
上 下
56 / 77
本編

第12話_静かな正義-5

しおりを挟む
沖本オキモト…!」

危険を察知したリョウは咄嗟に歩み寄るが、足の踏ん張りが効かなくなった啓介ケイスケは体勢を崩し、床に横倒しになった。

ひゃあっという悲鳴が上がる中、転がされた啓介は憤激し、すぐに起き上がってサークル集団へ猛然と向かっていく。

「っの野郎…!!」

が、佐伯サエキへ掴みかかろうとしたところで突如視界が遮られ、身体が押し戻される。

ぶつかってよろめき、不意な出来事に一瞬記憶が飛んだ啓介の視界には既に佐伯らは見えておらず、代わりに華奢な背中が映り込んでいた。

「…!?」

押し返されてきた啓介を受け止めた諒もまた、目の前で起きた一部始終をなんとか捉えられていて、その予想外過ぎる挙動に目を白黒させる。

…は? 何が起きたの…?

目前に立ち塞がっていた蒼矢ソウヤは、尻もちをついていた啓介が起き上がって突進しかけたところを瞬間で割り入って背中で受け止め、勢いを完全に殺して押し留めたようだった。
諒は、跳ね返ってきた啓介の身体の重みを確かに感じ、自分より体重が上回っているだろう彼の身体を制した蒼矢の身のこなしに、瞬きを忘れていた。

…なんだったの? 今の髙城タカシロの動き…、えぇっ…!?

後方の面々が唖然とする中、迎え撃とうと身構えかけていたサークルメンバーへ、蒼矢は啓介に代わって正面から対峙する。

「…申し訳ありませんが、取材の話はお受け出来ません」

まっすぐ視線を向けながら、蒼矢はそう短く返答した。
やはり一部始終をぽかんと見届けていた佐伯は、一時遅れて慌てた風に言葉を発する。

「…! まぁ落ち着いてよ。次の発行日は来月だし、すぐに返事は求めてないんだ。少し考えて貰ってからでも全然――」
話し合い・・・・の出来ない人たちと交渉するつもりはありません」

この期に及んでもなお蒼矢を説得しようとした佐伯だったが、にべもなくそう返され、口をつぐむ。
怯む佐伯たちへ、蒼矢は静かな面差しでいながら、射抜くような視線を与えていた。

「あなた方からの取材は、今後一切お断りします。…お引き取り下さい」

そう言うと、蒼矢はサークルメンバーらに対し頭を下げた。

「…」

佐伯は、頭を下げたままの蒼矢をしばらく真顔で眺めていたが、やがて小さく舌打ちした。

「所詮は陰キャか、つまんな。…行こうぜ」

そう言い捨てると、取り巻きを引き連れてその場を去っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

十の結晶が光るとき

濃霧
青春
県で唯一の女子高校野球部が誕生する。そこに集った十人の部員たち。初めはグラウンドも荒れ果てた状態、彼女たちはさまざまな苦難にどう立ち向かっていくのか・・・ [主な登場人物] 内藤監督 男子野球部監督から女子野球部監督に移った二十代の若い先生。優しそうな先生だが・・・ 塩野唯香(しおのゆいか) このチームのエース。打たせて取るピッチングに定評、しかし彼女にも弱点が・・・ 相馬陽(そうまよう) 中学では男子に混じって捕手としてスタメン入りするほど実力は確か、しかし男恐怖症であり・・・ 宝田鈴奈(ほうだすずな) 一塁手。本人は野球観戦が趣味と自称するが実はさらに凄い趣味を持っている・・・ 銀杏田心音(いちょうだここね) 二塁手。長身で中学ではエースだったが投げすぎによる故障で野手生活を送ることに・・・ 成井酸桃(なりいすもも) 三塁手。ムードメーカーで面倒見がいいが、中学のときは試合に殆ど出ていなかった・・・ 松本桂(まつもとけい) 遊撃手。チームのキャプテンとして皆を引っ張る。ただ、誰にも言えない過去があり・・・ 奥炭果歩(おくずみかほ) 外野手。唯一の野球未経験者。人見知りだが努力家で、成井のもと成長途中 水岡憐(みずおかれん) 外野手。部長として全体のまとめ役を務めている。監督ともつながりが・・・? 比石春飛(ひせきはるひ) 外野手。いつもはクールだが、実はクールを装っていた・・・? 角弗蘭(かどふらん) 外野手。負けず嫌いな性格だがサボり癖があり・・・?

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...