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本編

第9話_波乱の序章-1

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それから二週間後、昼過ぎの講義に臨む理学部1年の実験室には、いつも通り静かで整然とした空気感と、和気藹々なアットホーム感が混在したような時間が流れていた。


多種多様な学部を擁するマンモス大学にありながら、理学部はひと学年の総数が3桁に届かないほど少なく、入学・初顔合わせから数週間も経てば、同学年全員が自然と声を掛け合うような仲になっていた。

入学式を華麗に席巻した件の美青年・蒼矢ソウヤも、最初こそクラスメイトからはやはり別格として扱われ、しばらくはなかなか声を掛けられず、遠巻きに眺められるだけの状況が続いていた。
しかし代表挨拶しただけのことはあって、蒼矢はすぐにその非凡な秀才ぶりをクラス内に知らしめ、専門的かつ高度な講義・実験内容についていくのがやっとの者は、目の眩むような容姿にひれ伏してでも彼を頼り、教えを請うようになっていった。
そして実際に話してみると、近寄り難いのは見目だけで、蓋を開けてみれば中身は自分たちと変わらない物静かな地味系真面目人間だと理解でき、遅ればせながらも講義に関わる場面以外でも話し掛けられるようになり、少しずつ打ち解けていった。

とはいえ、鮮烈な印象を植え付けた麗しさに、群を抜いた出来の良さが新たに加わったことで、表向きは周囲の輪に溶け込んでいるものの、学部内からは密かに一目置かれた存在として扱われ続けることとなった。
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