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本編

第8話_Like or Love?-5

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話が一段落したところで、蒼矢ソウヤが学生課の用から戻ってくる。

「――すみません、遅くなりました」

早足で駆けて来る彼へ手を振り、影斗エイトは立ち上がり、ふたりへニッと笑いかけた。

「じゃ、帰るわ。付き合って貰ってありがとな」
「いえ、こちらこそ…」

4人でカフェテリアを出て正門へ向かい、リョウ啓介ケイスケに眺められる中、影斗は大型バイクをふかし始める。

「今日はありがとう。また来週」

そうふたりへ軽くお辞儀をし、蒼矢は慣れた所作でバイクのタンデムへ乗り込む。
砂利に轍を残しながら颯爽と正門から姿を消していくバイクを見送り、残されたふたりは緊張の糸を解き、ため息を吐き出した。

「…なんか凄かったなー…まさか、あんな強烈インパクトな先輩がいたとは…」
「ほんと、全部に驚かされた気分だよ。髙城タカシロの経歴も、先輩みたいな人が蒼矢の出身高TK高に居たことも、ふたりの関係も…」

そう言葉を交わし合い、啓介は横目で諒へ視線を送った。

「…あとさ。俺たち牽制されてたよな?」
「…うん、多分」

影斗からの尋問で、なんとなく状況が透けて見えたふたりは、思い出して再び噴き出した冷や汗を空気中に蒸発させる。

「……一応、許されたんだよな?」
「…最終的に"友人候補"って認められてたから、きっとお眼鏡には適った、…と思う」
「プレッシャーやば過ぎだって。緊張したぁ…」

両膝に手をついて脱力する啓介を見、諒も腰に手を当ててやれやれと息をついた。

…果たして、エイト先輩の志向はライクなのか、はたまたラブなのか…

疲れ果てた頭でぼんやりとそう考えつつ、華やかな登場人物たちの鮮やかな人間模様が、今後間近で描かれるかもしれない期待に胸を膨らませた。
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