33 / 77
本編
第7話_笑顔の圧力-3
しおりを挟む
「そしたら、思わぬハプニングで具合悪くなっちまったってわけ」
「"思わぬ"、じゃありません。コンタクトは苦手だって前々から言ってたのに…」
「晴れの日くらい眼鏡外してけっていう、俺の優しい親心だよ。式の間くらいなら大丈夫だと思ったんだけどなー、結局保険の眼鏡持ってくの忘れちまうし。しっかりしてる風で結構うっかり者なんだよ、こいつ」
影斗はそう悪びれもしない態度で言ってのけ、諒と啓介へけたけたと笑って明かしながら、またしても蒼矢の肩に腕を絡ませる。
そんな彼を蒼矢はじろりと睨みあげ、腕を振りほどいて居住まいを正し、テーブルをパンパンと叩いた。
「――とにかく、ちゃんと謝って下さい、ふたりに」
「! あぁ、そうだな。…悪かったな、式当日の予定狂わせちまって。あと、蒼矢送ってくれてありがとな」
「…! いえ…そんな。俺たち全然気にしてませんから」
「そうっすよ! かえって奢って貰っちゃったりして、申し訳ないですっ」
慌てた風に首と手を振りながらとりなしてみせるふたりを見、影斗は満足そうに頷き返した。
「許してくれるってよ、こいつら。これで丸く収まった感じ?」
「気を遣って貰ってるんです、見れば判るでしょう。今回のことで色んな方面に迷惑が掛かってしまったんですから、もう少し反省して下さい」
「あと烈くらいだろ? あいつには、次行くツーリング費用全額俺持ちにするってことで話ついてるぜ」
「また金銭で解決してるし…さほど誠意が感じられないんですが」
「あるって、誠意! 身銭切ってるんだからさー…機嫌治せよ、蒼矢。あとお前だけなんだって」
腕を組みながらそっぽを向く蒼矢の顔を覗き込む影斗を見、悪戯をした大型犬が主人の顔色を覗って尻尾を振っているような光景と錯覚し、向かいに座るふたりは目を白黒させていた。
…そっか。この間誘ってくれた時も含めて、なんとなくこの先輩に対してつんけんしてるなと思ったけど。
…髙城、機嫌が悪かったのか…
「"思わぬ"、じゃありません。コンタクトは苦手だって前々から言ってたのに…」
「晴れの日くらい眼鏡外してけっていう、俺の優しい親心だよ。式の間くらいなら大丈夫だと思ったんだけどなー、結局保険の眼鏡持ってくの忘れちまうし。しっかりしてる風で結構うっかり者なんだよ、こいつ」
影斗はそう悪びれもしない態度で言ってのけ、諒と啓介へけたけたと笑って明かしながら、またしても蒼矢の肩に腕を絡ませる。
そんな彼を蒼矢はじろりと睨みあげ、腕を振りほどいて居住まいを正し、テーブルをパンパンと叩いた。
「――とにかく、ちゃんと謝って下さい、ふたりに」
「! あぁ、そうだな。…悪かったな、式当日の予定狂わせちまって。あと、蒼矢送ってくれてありがとな」
「…! いえ…そんな。俺たち全然気にしてませんから」
「そうっすよ! かえって奢って貰っちゃったりして、申し訳ないですっ」
慌てた風に首と手を振りながらとりなしてみせるふたりを見、影斗は満足そうに頷き返した。
「許してくれるってよ、こいつら。これで丸く収まった感じ?」
「気を遣って貰ってるんです、見れば判るでしょう。今回のことで色んな方面に迷惑が掛かってしまったんですから、もう少し反省して下さい」
「あと烈くらいだろ? あいつには、次行くツーリング費用全額俺持ちにするってことで話ついてるぜ」
「また金銭で解決してるし…さほど誠意が感じられないんですが」
「あるって、誠意! 身銭切ってるんだからさー…機嫌治せよ、蒼矢。あとお前だけなんだって」
腕を組みながらそっぽを向く蒼矢の顔を覗き込む影斗を見、悪戯をした大型犬が主人の顔色を覗って尻尾を振っているような光景と錯覚し、向かいに座るふたりは目を白黒させていた。
…そっか。この間誘ってくれた時も含めて、なんとなくこの先輩に対してつんけんしてるなと思ったけど。
…髙城、機嫌が悪かったのか…
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。

十の結晶が光るとき
濃霧
青春
県で唯一の女子高校野球部が誕生する。そこに集った十人の部員たち。初めはグラウンドも荒れ果てた状態、彼女たちはさまざまな苦難にどう立ち向かっていくのか・・・
[主な登場人物]
内藤監督 男子野球部監督から女子野球部監督に移った二十代の若い先生。優しそうな先生だが・・・
塩野唯香(しおのゆいか) このチームのエース。打たせて取るピッチングに定評、しかし彼女にも弱点が・・・
相馬陽(そうまよう) 中学では男子に混じって捕手としてスタメン入りするほど実力は確か、しかし男恐怖症であり・・・
宝田鈴奈(ほうだすずな) 一塁手。本人は野球観戦が趣味と自称するが実はさらに凄い趣味を持っている・・・
銀杏田心音(いちょうだここね) 二塁手。長身で中学ではエースだったが投げすぎによる故障で野手生活を送ることに・・・
成井酸桃(なりいすもも) 三塁手。ムードメーカーで面倒見がいいが、中学のときは試合に殆ど出ていなかった・・・
松本桂(まつもとけい) 遊撃手。チームのキャプテンとして皆を引っ張る。ただ、誰にも言えない過去があり・・・
奥炭果歩(おくずみかほ) 外野手。唯一の野球未経験者。人見知りだが努力家で、成井のもと成長途中
水岡憐(みずおかれん) 外野手。部長として全体のまとめ役を務めている。監督ともつながりが・・・?
比石春飛(ひせきはるひ) 外野手。いつもはクールだが、実はクールを装っていた・・・?
角弗蘭(かどふらん) 外野手。負けず嫌いな性格だがサボり癖があり・・・?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる