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本編
第4話_幻影の君-1
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翌日、諒は履修した講義に間に合うよう大学へ向かい、予定通り定刻前に講義室まで辿り着き、席に着いた。
入学式当日の新入生たちの大半が夜更けまで遊び倒すことは最早恒例行事で、そんなことが毎年繰り返されているだろうに、翌日のカリキュラムに容赦無く一限目講義をぶち込んでくる大学側の姿勢は、さすがに世界規模でも名高い国内最高学府なだけのことはあると思わされた。
諒も例にもれず、学友たちと共にコンパの後にその二次会、更に有志でカラオケまで行って日付変更線を優に超え、ハイテンションが続いて喉を枯らす者、くたくたになって半分おねむモードに入る者など、多様な様相を呈しつつも親睦を深めた。
まばらだった講義室には、昨日コンパで面識を持った同級生たちが少しずつ入室し、声を掛け合い手を挙げ合いながら席が埋まっていく。
やがて啓介も息を切らしながら駆けつけ、当然のように諒の隣に座った。
「はよっすー。危なかったぜ、電車で寝過ごすかと思った」
「おはよう。よく来れたね、家遠いのに」
「気合いでしかねぇよ。少なくとも着替えたかったしな…さすがにコーラ被ったスーツでは来れまい。そのまま洗濯機に投げ込んできたから、たぶん帰ったらしこたま怒られるぜ」
「本当に、使用機会が入学式だけになっちゃいそうだな」
苦笑いを浮かべながらもどこか楽しげに返してくる啓介に、諒はつられて微笑った。
そろそろ一限目が始まる頃合いになり、啓介は軽く室内を見回した。
「――来てねぇみたいだな」
「実際、昨日の今日で来れるかわからないしな。病院に行ってるのかも」
「そんなとこかもなー。連絡先交換しとくべきだったな」
「確かに」
自分たちと同じ講義を履修しているだろうにもかかわらず、来てない人物――蒼矢のことをひとつふたつ緩く語り合ってから、ふたりはモードを切り替えて講義に臨んだ。
そんな彼らの周囲の者たちは、講義が始まっても、教壇でガイダンスを唱える教授以外の方向へ目線を泳がせたり、時たま入口の方へ首を向けたりとそわそわし、どこか浮ついた空気を漂わせていた。
入学式当日の新入生たちの大半が夜更けまで遊び倒すことは最早恒例行事で、そんなことが毎年繰り返されているだろうに、翌日のカリキュラムに容赦無く一限目講義をぶち込んでくる大学側の姿勢は、さすがに世界規模でも名高い国内最高学府なだけのことはあると思わされた。
諒も例にもれず、学友たちと共にコンパの後にその二次会、更に有志でカラオケまで行って日付変更線を優に超え、ハイテンションが続いて喉を枯らす者、くたくたになって半分おねむモードに入る者など、多様な様相を呈しつつも親睦を深めた。
まばらだった講義室には、昨日コンパで面識を持った同級生たちが少しずつ入室し、声を掛け合い手を挙げ合いながら席が埋まっていく。
やがて啓介も息を切らしながら駆けつけ、当然のように諒の隣に座った。
「はよっすー。危なかったぜ、電車で寝過ごすかと思った」
「おはよう。よく来れたね、家遠いのに」
「気合いでしかねぇよ。少なくとも着替えたかったしな…さすがにコーラ被ったスーツでは来れまい。そのまま洗濯機に投げ込んできたから、たぶん帰ったらしこたま怒られるぜ」
「本当に、使用機会が入学式だけになっちゃいそうだな」
苦笑いを浮かべながらもどこか楽しげに返してくる啓介に、諒はつられて微笑った。
そろそろ一限目が始まる頃合いになり、啓介は軽く室内を見回した。
「――来てねぇみたいだな」
「実際、昨日の今日で来れるかわからないしな。病院に行ってるのかも」
「そんなとこかもなー。連絡先交換しとくべきだったな」
「確かに」
自分たちと同じ講義を履修しているだろうにもかかわらず、来てない人物――蒼矢のことをひとつふたつ緩く語り合ってから、ふたりはモードを切り替えて講義に臨んだ。
そんな彼らの周囲の者たちは、講義が始まっても、教壇でガイダンスを唱える教授以外の方向へ目線を泳がせたり、時たま入口の方へ首を向けたりとそわそわし、どこか浮ついた空気を漂わせていた。
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