17 / 77
本編
第3話_世話焼きが紡ぐ縁-6
しおりを挟む
うつむいたまま小さく鼻をすする蒼矢の姿を見、沈黙した諒と啓介は一時互いに視線を送り、何事かを合意し合ったのか双方頷くと、諒から口火を切った。
「髙城、それじゃあ俺たちで送ってくよ」
「…えっ…!?」
蒼矢はハンカチを外して顔を上げ、痛ましい目を出来る限り見開いて彼らを見る。
「もうすぐクラス撮影の時間だけど、どのみちその目じゃ満足いくショットは残せないだろ?」
「いや、撮影はいいんだけど…君たちまで俺に付き合う必要はない。撮影には参加していってくれ、ひとりで帰れるから」
「全員集合は難しくても、クラスの連中との写真なんてこの先いくらでも撮れるよ。どうせ毎日のように会うんだから」
「でも…送りなんて。そこまで世話になる訳には…」
「裸眼でひとりで帰れんのか?」
諒の勧めに渋る蒼矢の言を、啓介も少し声量を強めて遮った。
「目が満足に開けられなくて、そのうえ視界も悪いんだろ? 結構な不自由具合だと思うけどな」
「…!」
「この場に俺たちがいるのって、お前にとってかなりラッキーだと思うぞ? 遠慮してたら要らない事故に遭うかもしれないんだ、素直に甘えとけって」
「沖本の言う通りだ。俺たちふたりとも、割と論理的な観点から髙城のこと心配してる。…付き添わせてくれないかな」
そう言うふたりの顔を、蒼矢は戸惑った面持ちで交互に見ていたが、やがて半目しか開けられない目を閉じながら頭を下げた。
「…ありがとう。付き添いお願いします」
小さくもしっかりした返答を受け、啓介は満足気に頷くと、蒼矢の荷物を拾う。
「じゃ、行こうぜ。最寄りは?」
「□□線乗って、I駅」
「俺の通学経路と途中まで同じだな。そっから歩きか?」
「うん。だけど、そこからは迎えに来て貰うようにするよ」
立ち上がろうとする彼らを引き止め、蒼矢はスマホの液晶に顔をくっつけんばかりに寄せ、急ぎいずこかへメッセージを送る。
…最寄から"迎え"か。両親じゃないとは思うけど、誰かな?
そう内で考えつつ、啓介の先導の下、諒は蒼矢を支えながら大学正門へと向かった。
「髙城、それじゃあ俺たちで送ってくよ」
「…えっ…!?」
蒼矢はハンカチを外して顔を上げ、痛ましい目を出来る限り見開いて彼らを見る。
「もうすぐクラス撮影の時間だけど、どのみちその目じゃ満足いくショットは残せないだろ?」
「いや、撮影はいいんだけど…君たちまで俺に付き合う必要はない。撮影には参加していってくれ、ひとりで帰れるから」
「全員集合は難しくても、クラスの連中との写真なんてこの先いくらでも撮れるよ。どうせ毎日のように会うんだから」
「でも…送りなんて。そこまで世話になる訳には…」
「裸眼でひとりで帰れんのか?」
諒の勧めに渋る蒼矢の言を、啓介も少し声量を強めて遮った。
「目が満足に開けられなくて、そのうえ視界も悪いんだろ? 結構な不自由具合だと思うけどな」
「…!」
「この場に俺たちがいるのって、お前にとってかなりラッキーだと思うぞ? 遠慮してたら要らない事故に遭うかもしれないんだ、素直に甘えとけって」
「沖本の言う通りだ。俺たちふたりとも、割と論理的な観点から髙城のこと心配してる。…付き添わせてくれないかな」
そう言うふたりの顔を、蒼矢は戸惑った面持ちで交互に見ていたが、やがて半目しか開けられない目を閉じながら頭を下げた。
「…ありがとう。付き添いお願いします」
小さくもしっかりした返答を受け、啓介は満足気に頷くと、蒼矢の荷物を拾う。
「じゃ、行こうぜ。最寄りは?」
「□□線乗って、I駅」
「俺の通学経路と途中まで同じだな。そっから歩きか?」
「うん。だけど、そこからは迎えに来て貰うようにするよ」
立ち上がろうとする彼らを引き止め、蒼矢はスマホの液晶に顔をくっつけんばかりに寄せ、急ぎいずこかへメッセージを送る。
…最寄から"迎え"か。両親じゃないとは思うけど、誰かな?
そう内で考えつつ、啓介の先導の下、諒は蒼矢を支えながら大学正門へと向かった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
深海の星空
柴野日向
青春
「あなたが、少しでも笑っていてくれるなら、ぼくはもう、何もいらないんです」
ひねくれた孤高の少女と、真面目すぎる新聞配達の少年は、深い海の底で出会った。誰にも言えない秘密を抱え、塞がらない傷を見せ合い、ただ求めるのは、歩む深海に差し込む光。
少しずつ縮まる距離の中、明らかになるのは、少女の最も嫌う人間と、望まれなかった少年との残酷な繋がり。
やがて立ち塞がる絶望に、一縷の希望を見出す二人は、再び手を繋ぐことができるのか。
世界の片隅で、小さな幸福へと手を伸ばす、少年少女の物語。
我ら同級生たち
相良武有
現代文学
この物語は高校の同級生である男女五人が、卒業後に様々な形で挫折に直面し、挫折を乗り越えたり、挫折に押し潰されたりする姿を描いた青春群像小説である。
人間は生きている時間の長短ではなく、何を思い何をしたか、が重要なのである。如何に納得した充実感を持ち乍ら生きるかが重要なのである。自分の信じるものに向かって闘い続けることが生きるということである・・・
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
一人用声劇台本
ふゎ
恋愛
一人用声劇台本です。
男性向け女性用シチュエーションです。
私自身声の仕事をしており、
自分の好きな台本を書いてみようという気持ちで書いたものなので自己満のものになります。
ご使用したい方がいましたらお気軽にどうぞ
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる