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火傷より熱く痛い何か
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火傷を負い、死を待つしかない状態だったメレブの回復手段は目星がついた。それによってひと安心した冨岡の中に、沸々と怒りが湧き始める。
メレブ個人としては、王弟派の野望と無関係だったはずだ。どうしてそんなメレブが巻き込まれなければならないのか。こんなにも命が軽いのは何故か。
また、自分自身にも腹が立つ。何人もの人間がこの通りには倒れている。それでも冨岡は、メレブだけはどうしても助けたいと思った。
これもまた独善的なエゴイズムであり、自分勝手な行動だ。自分たちのために行動を起こしている王弟派と、何ら変わらないかもしれない。自分の仲間さえ救われればいいと思ってしまった。
様々な怒りが冨岡の中で渦巻く。
けれど、時間は平等で残酷なものだ。こうしている間にも、事態は進んでいく。
「アリリシャさん、迷惑をかけますけど、ドロフを探すのを手伝ってください」
周囲の苦しみや悲しみを踏み越え、冨岡は歩を進めた。
ノノノカから命令を受けているアリリシャは、不安定な背中を追いかける。
「もちろんです!」
ドロフを見つけるのに、それほど時間は掛からなかった。
戦いの音と匂いが濃い方へ、貧民街を走っていくと、道の傍らに座り込んでいる人影があった。
体の大きさから男であることはわかる。煤にまみれ、顔を伏せ腹から血を流していた。よく見ると、腹に短剣が刺さっている。
この場所に辿り着くまでも、この場所にも、この先にも、同じような状態の人は何人もいた。凄惨な戦いの跡である。
心苦しさを感じながらも、冨岡はドロフを探すことだけに集中した。
そうして見つけたのが、腹に短剣が刺さった人影である。
顔から血の気が失せているため、一瞬誰かわからなかったが、近づくとはっきりわかる。
ドロフだ。
「ド、ドロフ!」
冨岡とアリリシャが駆け寄ると、彼はゆっくり顔を上げた。
「あ・・・・・・兄貴」
かろうじて意識があるようだ。だが、意識がある分、苦しんでもいる。
「ドロフ! 喋らなくてもいい」
「すまねぇ・・・・・・兄貴・・・・・・俺・・・・・・」
「喋らなくてもいいから!」
「貧民街・・・・・・の人たちと・・・・・・顔馴染みになってたから、助けなきゃと、思っちまって・・・・・・このザマで」
「そうか、お前。貧民街の人たちを守ろうと戦ったんだな。わかったから、もう喋るな」
冨岡とドロフが話をしている背後で、アリリシャは周囲を警戒しながらも、苦虫を潰したような顔をしていた。
ドロフの傷を見る限り、助かりそうにはない。最後の会話なのだろう、と察していた。
さらにドロフは話を続ける。彼自身、自分の最後を感じていた。
「兄貴・・・・・・兄貴に出会えてよかった。こんなこと頼めた義理じゃ・・・・・・ないんだが、俺の家族を・・・・・・どうにか助けてやってくれねぇか。アイツら、俺なしじゃ」
「ふざけんな! お前の家族はお前が守れ! その代わり、お前のことは俺が助ける。だから、死ぬな! 無茶苦茶なこと言ってんのはわかってるけど、死ぬな!」
火傷よりも熱く痛い何かが、冨岡の中で生まれる。
メレブ個人としては、王弟派の野望と無関係だったはずだ。どうしてそんなメレブが巻き込まれなければならないのか。こんなにも命が軽いのは何故か。
また、自分自身にも腹が立つ。何人もの人間がこの通りには倒れている。それでも冨岡は、メレブだけはどうしても助けたいと思った。
これもまた独善的なエゴイズムであり、自分勝手な行動だ。自分たちのために行動を起こしている王弟派と、何ら変わらないかもしれない。自分の仲間さえ救われればいいと思ってしまった。
様々な怒りが冨岡の中で渦巻く。
けれど、時間は平等で残酷なものだ。こうしている間にも、事態は進んでいく。
「アリリシャさん、迷惑をかけますけど、ドロフを探すのを手伝ってください」
周囲の苦しみや悲しみを踏み越え、冨岡は歩を進めた。
ノノノカから命令を受けているアリリシャは、不安定な背中を追いかける。
「もちろんです!」
ドロフを見つけるのに、それほど時間は掛からなかった。
戦いの音と匂いが濃い方へ、貧民街を走っていくと、道の傍らに座り込んでいる人影があった。
体の大きさから男であることはわかる。煤にまみれ、顔を伏せ腹から血を流していた。よく見ると、腹に短剣が刺さっている。
この場所に辿り着くまでも、この場所にも、この先にも、同じような状態の人は何人もいた。凄惨な戦いの跡である。
心苦しさを感じながらも、冨岡はドロフを探すことだけに集中した。
そうして見つけたのが、腹に短剣が刺さった人影である。
顔から血の気が失せているため、一瞬誰かわからなかったが、近づくとはっきりわかる。
ドロフだ。
「ド、ドロフ!」
冨岡とアリリシャが駆け寄ると、彼はゆっくり顔を上げた。
「あ・・・・・・兄貴」
かろうじて意識があるようだ。だが、意識がある分、苦しんでもいる。
「ドロフ! 喋らなくてもいい」
「すまねぇ・・・・・・兄貴・・・・・・俺・・・・・・」
「喋らなくてもいいから!」
「貧民街・・・・・・の人たちと・・・・・・顔馴染みになってたから、助けなきゃと、思っちまって・・・・・・このザマで」
「そうか、お前。貧民街の人たちを守ろうと戦ったんだな。わかったから、もう喋るな」
冨岡とドロフが話をしている背後で、アリリシャは周囲を警戒しながらも、苦虫を潰したような顔をしていた。
ドロフの傷を見る限り、助かりそうにはない。最後の会話なのだろう、と察していた。
さらにドロフは話を続ける。彼自身、自分の最後を感じていた。
「兄貴・・・・・・兄貴に出会えてよかった。こんなこと頼めた義理じゃ・・・・・・ないんだが、俺の家族を・・・・・・どうにか助けてやってくれねぇか。アイツら、俺なしじゃ」
「ふざけんな! お前の家族はお前が守れ! その代わり、お前のことは俺が助ける。だから、死ぬな! 無茶苦茶なこと言ってんのはわかってるけど、死ぬな!」
火傷よりも熱く痛い何かが、冨岡の中で生まれる。
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