百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

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聖女様

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 何かしらの希望を抱く冨岡の言葉に、アリリシャは戸惑いながら答えた。

「で、伝承の話です。聖女様は死以外の全てを癒す、と。そう言われていますから・・・・・・聖女様がいらっしゃれば、メレブ氏の傷も、あるいは」

 言ってしまえば、伝説の話。戦場で『神さえいれば』と祈るような言葉だった。
 けれど、冨岡は知っている。

「聖女なら・・・・・・聖女なら治せるんですね、メレブの傷を!」

 再度問われてもアリリシャからすれば、聖女は伝説でしかない。御伽話のような『なんでも治せる聖女』の話しか知らないのだ。
 そして、最も大切なことは、聖女が存在しないこと。存在しないからこそ、伝説として話が大きくなっている。
 アリリシャは必死に問いかけてくる冨岡に対し、こう答えた。

「聖女様であれば、治せると思います。そういう存在ですから。けど、聖女様は・・・・・・」

 苦しそうなアリリシャに対し、冨岡は安堵の息を漏らす。

「だったら、なんとかなるかもしれません。いや、それしかない。レボルさん! お願いがあります!」
「もしや、聖女様に心当たりがある、と?」

 レボルが聞き返した。すると冨岡は勢いよく頷く。

「少なくとも、俺の大怪我を一瞬で治してくれた人がいます。その人なら、メレブの傷も!」
「大怪我を一瞬で? 疑っているわけではないですが、そんなに腕のいい回復魔法師がいるのなら、有名になっているはずではないですか?」
「有名ではないですけど、レボルさんも知っている人です。その人のところにメレブを連れて行ってくれませんか? メレブを背負うなら男のレボルさんの方がいいと思って」

 アリリシャの身体能力を見くびっているわけではないが、レボルの方が適任だろう、と冨岡が依頼する。
 するとレボルは少し考えてから、私見を述べた。

「トミオカさん、最悪のことを考えれば逆の方がいいかもしれませんよ」
「逆・・・・・・ですか?」
「メレブがこの状態なんです。もしかすると、ドロフも・・・・・・考えたくはないですが、可能性としてはありえることです。その可能性があるのなら、回復魔法師をここに連れてきた方がいいかもしれません」
「確かにそうですね。じゃあ、連れてきて欲しいです」
「承知しました。それで、回復魔法師はどこにいらっしゃるんですか?」

 レボルの了承を受けた冨岡は、懇願するように言葉を続ける。

「学園に戻って、フィーネちゃんを・・・・・・フィーネちゃんを連れてきてください。もちろん、フィーネちゃんをここに連れてくるのは危険ですから、ノノノカさんや他の方も護衛として来てもらうようにお願いしてください。それでメレブは治る!」
「フィーネちゃんを?」
「できるだけ早くお願いします。時間との勝負ですから」
「は、はい、わかりました!」

 慌てさせられたレボルは、考える間もなく走り始めた。
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