495 / 498
聖女様
しおりを挟む
何かしらの希望を抱く冨岡の言葉に、アリリシャは戸惑いながら答えた。
「で、伝承の話です。聖女様は死以外の全てを癒す、と。そう言われていますから・・・・・・聖女様がいらっしゃれば、メレブ氏の傷も、あるいは」
言ってしまえば、伝説の話。戦場で『神さえいれば』と祈るような言葉だった。
けれど、冨岡は知っている。
「聖女なら・・・・・・聖女なら治せるんですね、メレブの傷を!」
再度問われてもアリリシャからすれば、聖女は伝説でしかない。御伽話のような『なんでも治せる聖女』の話しか知らないのだ。
そして、最も大切なことは、聖女が存在しないこと。存在しないからこそ、伝説として話が大きくなっている。
アリリシャは必死に問いかけてくる冨岡に対し、こう答えた。
「聖女様であれば、治せると思います。そういう存在ですから。けど、聖女様は・・・・・・」
苦しそうなアリリシャに対し、冨岡は安堵の息を漏らす。
「だったら、なんとかなるかもしれません。いや、それしかない。レボルさん! お願いがあります!」
「もしや、聖女様に心当たりがある、と?」
レボルが聞き返した。すると冨岡は勢いよく頷く。
「少なくとも、俺の大怪我を一瞬で治してくれた人がいます。その人なら、メレブの傷も!」
「大怪我を一瞬で? 疑っているわけではないですが、そんなに腕のいい回復魔法師がいるのなら、有名になっているはずではないですか?」
「有名ではないですけど、レボルさんも知っている人です。その人のところにメレブを連れて行ってくれませんか? メレブを背負うなら男のレボルさんの方がいいと思って」
アリリシャの身体能力を見くびっているわけではないが、レボルの方が適任だろう、と冨岡が依頼する。
するとレボルは少し考えてから、私見を述べた。
「トミオカさん、最悪のことを考えれば逆の方がいいかもしれませんよ」
「逆・・・・・・ですか?」
「メレブがこの状態なんです。もしかすると、ドロフも・・・・・・考えたくはないですが、可能性としてはありえることです。その可能性があるのなら、回復魔法師をここに連れてきた方がいいかもしれません」
「確かにそうですね。じゃあ、連れてきて欲しいです」
「承知しました。それで、回復魔法師はどこにいらっしゃるんですか?」
レボルの了承を受けた冨岡は、懇願するように言葉を続ける。
「学園に戻って、フィーネちゃんを・・・・・・フィーネちゃんを連れてきてください。もちろん、フィーネちゃんをここに連れてくるのは危険ですから、ノノノカさんや他の方も護衛として来てもらうようにお願いしてください。それでメレブは治る!」
「フィーネちゃんを?」
「できるだけ早くお願いします。時間との勝負ですから」
「は、はい、わかりました!」
慌てさせられたレボルは、考える間もなく走り始めた。
「で、伝承の話です。聖女様は死以外の全てを癒す、と。そう言われていますから・・・・・・聖女様がいらっしゃれば、メレブ氏の傷も、あるいは」
言ってしまえば、伝説の話。戦場で『神さえいれば』と祈るような言葉だった。
けれど、冨岡は知っている。
「聖女なら・・・・・・聖女なら治せるんですね、メレブの傷を!」
再度問われてもアリリシャからすれば、聖女は伝説でしかない。御伽話のような『なんでも治せる聖女』の話しか知らないのだ。
そして、最も大切なことは、聖女が存在しないこと。存在しないからこそ、伝説として話が大きくなっている。
アリリシャは必死に問いかけてくる冨岡に対し、こう答えた。
「聖女様であれば、治せると思います。そういう存在ですから。けど、聖女様は・・・・・・」
苦しそうなアリリシャに対し、冨岡は安堵の息を漏らす。
「だったら、なんとかなるかもしれません。いや、それしかない。レボルさん! お願いがあります!」
「もしや、聖女様に心当たりがある、と?」
レボルが聞き返した。すると冨岡は勢いよく頷く。
「少なくとも、俺の大怪我を一瞬で治してくれた人がいます。その人なら、メレブの傷も!」
「大怪我を一瞬で? 疑っているわけではないですが、そんなに腕のいい回復魔法師がいるのなら、有名になっているはずではないですか?」
「有名ではないですけど、レボルさんも知っている人です。その人のところにメレブを連れて行ってくれませんか? メレブを背負うなら男のレボルさんの方がいいと思って」
アリリシャの身体能力を見くびっているわけではないが、レボルの方が適任だろう、と冨岡が依頼する。
するとレボルは少し考えてから、私見を述べた。
「トミオカさん、最悪のことを考えれば逆の方がいいかもしれませんよ」
「逆・・・・・・ですか?」
「メレブがこの状態なんです。もしかすると、ドロフも・・・・・・考えたくはないですが、可能性としてはありえることです。その可能性があるのなら、回復魔法師をここに連れてきた方がいいかもしれません」
「確かにそうですね。じゃあ、連れてきて欲しいです」
「承知しました。それで、回復魔法師はどこにいらっしゃるんですか?」
レボルの了承を受けた冨岡は、懇願するように言葉を続ける。
「学園に戻って、フィーネちゃんを・・・・・・フィーネちゃんを連れてきてください。もちろん、フィーネちゃんをここに連れてくるのは危険ですから、ノノノカさんや他の方も護衛として来てもらうようにお願いしてください。それでメレブは治る!」
「フィーネちゃんを?」
「できるだけ早くお願いします。時間との勝負ですから」
「は、はい、わかりました!」
慌てさせられたレボルは、考える間もなく走り始めた。
22
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる