百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
480 / 498

煙吐く蛇

しおりを挟む
 王弟派の貴族たちは、そもそも自分の立場を守りたいという動機から全てを始めている。自分たちが罪に問われた場合のことを考えているのは当然だ。
 全ては王弟が王座を奪うためにしていたこと。その方向に持っていくため、誰が所属していて誰が率いているのかは厳重に隠している。そういうことだ。
 ノノノカの話を聞いた冨岡は、本意ではない感心を覚えてしまう。

「随分慎重ですね。王弟派の貴族たちは」
「そうすることで生き抜いてきた者たちじゃからの。ワシに貴族批判の思想はないが、今の貴族たちの多くは自らが何かを成し、爵位を得た者ではない。親から受け継ぎ、最初から貴族として生きてきた者がほとんどじゃ。つまり、何よりも『失うこと』を恐れておる。脆いもんじゃのう、与えられて生きてきた人間は」

 与えられて生きてきた人間と勝ち取ってきた人間。どちらが強いのかは、語るまでもない。一度でも自分自身で勝ち得てきた者なら、全てを失ったとしてももう一度立ち上がることができるだろう。
 会話をしながら自分の中で情報を整頓する冨岡。

「えっと、簡単に言えばベルソード家の情報網を持ってしても、王弟派の詳細な情報を得るのは難しい、ってことですね」
「簡単に言ったのう。悔しいが、まぁ、その通りじゃ。市井の情報やら、貴族たちの歪んだ恋愛模様やら、暇人どもの噂話やら、そんなものはいくらでも得られるんじゃがな、王弟派の情報は国家機密よりも厳重に隠されておる」

 これからの行動を考える上で、詳細な情報は必須になる。特に相手の情報を得ることは絶対条件だ。
 ここで話題は一服前の話に戻る。
「じゃあ」と冨岡が話し始めた。

「ノノノカさんがドロフとメレブを動かしたのは、王弟派の動きを探るためですか?」

 話は貴族たちの中だけで完結しない。ノノノカはタバコを吸う前にそう言っていた。王弟派について簡単には探れない話が、貧民街に調査の手を広げたことと無関係であるはずがない。
 冨岡の疑問を聞いたノノノカは、煙を吐きながら含み笑いを浮かべる。

「貴族たちの周囲から調べ何も得られんのなら、方向を変えれば良い。ちょうどヒロヤの部下たちは、貧民街でも歓迎される」
「手詰まりになった時、他の方向から行動するのは確かにいいと思うんですけど、貧民街って貴族たちから距離があるじゃないですか。一体何を調べようとしているんですか?」
「もちろん、王弟派の情報じゃ。のう、ヒロヤ。先ほどワシはニコチニアの葉、タバコについて説明したじゃろう。高級品と粗悪品の話じゃよ。こういった副作用の大きい嗜好品の良品は貴族たちに渡る。安全性が高い分、高価になるからの。反対に危険性の高い粗悪品は、貧民街に流れる。距離があるからこそ、近いこともある」
「距離があるから近い・・・・・・」
「わかりやすく話してやろう。王弟派の貴族たちは、一体どこで集まり話をすると思う?」

 煙を吐くノノノカの表情は、獲物を見据える蛇のようであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

処理中です...