474 / 498
貧民街への潜入
しおりを挟む
「冒険者ギルドの持っておる情報収集手段では、入り込めぬところが二つある。一つは人の心。もう一つは、貧民街じゃ」
「貧民街?」
再び冨岡はノノノカの言葉に疑問を抱く。
貧民街で情報を得ることがそれほど難しいとは思えない。セキュリティ面は貴族街と比べることすらできないほど、甘いはずだ。立ち入りを禁ずるような規則もないし、冒険者ギルドが情報収集に苦労する理由が冨岡には思いつかなかった。
「どうして貧民街には入り込めないんですか? 普通にいけば、何か話してくれると思うんですけど」
冨岡が言うと、ノノノカは下唇を突き出すようにして、嫌がる素振りを見せた。
「貧民街は特殊でのう、外敵に対して厳しい。貴族たちよりもな」
「貴族たちよりも、ですか? そんな感じは・・・・・・えっと、俺たち貧民街で炊き出しのようなことをしてて」
「ああ、知っておる。ハンバーガー、とか言ったかな。それらを配っておるんじゃろ。確かにお前たちからすれば、貧民街がそれほど閉鎖的な場所だとは思えんじゃろうな。じゃが、よく考えてみろ。人はの、何を得たいか、何を失いたくないか、で考えがすれ違い、派閥を作るものじゃ」
「何を得たいか、失いたくないか・・・・・・」
「貴族たちが一枚岩でないのは、欲しいものも持っているものも違うからじゃ。それに比べて貧民街では、最低限生きていければ、何かを欲することもほとんどない。苦しみ、悲しみ、怠惰、諦め、様々な感情を経てたどり着いた場所じゃからのう。そこにいられるだけでいい。貧民街の住民にとって、あの場所は家じゃ。失うものといえば、居場所と家族だけ。つまり、あの場所と家族を守ることができれば、甘言に惑わされることはない」
ノノノカが保有する隠密部隊シャドウでは、潜んで情報を得るだけではなく『多少乱暴』な手段を取る事もある。また、金銭や利益の保証によって買収する事もある。
だが、どちらも貧民街では通用しなかった。
居場所と家族を守りたいとはいえ、諦めるのも早い。彼らはどうしようもなければ、諦めればいいと知っているのだ。これまで諦めを繰り返してきたのだから。
シャドウのメンバーによって、長期の潜入捜査が行われた事もある。流れ着いた貧民になりすまし、貧民街に住み始めたメンバーがいたのだ。貧民街でしか得られない情報を得るための手段であった。しかし、潜入した者は即座に正体を暴かれ、追い出されてしまう。
何度か敢行した潜入だったが、毎回正体を暴かれてしまった。
「あの場所に住む者は、いつだって疑いの目を持っておる。誰よりも本心を見抜くのじゃ。ヒロヤたちが貧民街で活動できているのは、その本心が清らかだったからじゃろう。他の者ではそうはいかん」
「じゃあ、ドロフとメレブが貧民街で情報収集を・・・・・・ん? そもそも貧民街でどんな情報を得ようとしているんですか? 貴族たちの話なのに」
「貧民街?」
再び冨岡はノノノカの言葉に疑問を抱く。
貧民街で情報を得ることがそれほど難しいとは思えない。セキュリティ面は貴族街と比べることすらできないほど、甘いはずだ。立ち入りを禁ずるような規則もないし、冒険者ギルドが情報収集に苦労する理由が冨岡には思いつかなかった。
「どうして貧民街には入り込めないんですか? 普通にいけば、何か話してくれると思うんですけど」
冨岡が言うと、ノノノカは下唇を突き出すようにして、嫌がる素振りを見せた。
「貧民街は特殊でのう、外敵に対して厳しい。貴族たちよりもな」
「貴族たちよりも、ですか? そんな感じは・・・・・・えっと、俺たち貧民街で炊き出しのようなことをしてて」
「ああ、知っておる。ハンバーガー、とか言ったかな。それらを配っておるんじゃろ。確かにお前たちからすれば、貧民街がそれほど閉鎖的な場所だとは思えんじゃろうな。じゃが、よく考えてみろ。人はの、何を得たいか、何を失いたくないか、で考えがすれ違い、派閥を作るものじゃ」
「何を得たいか、失いたくないか・・・・・・」
「貴族たちが一枚岩でないのは、欲しいものも持っているものも違うからじゃ。それに比べて貧民街では、最低限生きていければ、何かを欲することもほとんどない。苦しみ、悲しみ、怠惰、諦め、様々な感情を経てたどり着いた場所じゃからのう。そこにいられるだけでいい。貧民街の住民にとって、あの場所は家じゃ。失うものといえば、居場所と家族だけ。つまり、あの場所と家族を守ることができれば、甘言に惑わされることはない」
ノノノカが保有する隠密部隊シャドウでは、潜んで情報を得るだけではなく『多少乱暴』な手段を取る事もある。また、金銭や利益の保証によって買収する事もある。
だが、どちらも貧民街では通用しなかった。
居場所と家族を守りたいとはいえ、諦めるのも早い。彼らはどうしようもなければ、諦めればいいと知っているのだ。これまで諦めを繰り返してきたのだから。
シャドウのメンバーによって、長期の潜入捜査が行われた事もある。流れ着いた貧民になりすまし、貧民街に住み始めたメンバーがいたのだ。貧民街でしか得られない情報を得るための手段であった。しかし、潜入した者は即座に正体を暴かれ、追い出されてしまう。
何度か敢行した潜入だったが、毎回正体を暴かれてしまった。
「あの場所に住む者は、いつだって疑いの目を持っておる。誰よりも本心を見抜くのじゃ。ヒロヤたちが貧民街で活動できているのは、その本心が清らかだったからじゃろう。他の者ではそうはいかん」
「じゃあ、ドロフとメレブが貧民街で情報収集を・・・・・・ん? そもそも貧民街でどんな情報を得ようとしているんですか? 貴族たちの話なのに」
23
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる