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足跡の三人
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ドルマリン男爵が話通りの男ならば、何の理由もなく勝てない戦いをするとは思えない。
賢く強い者ほど撤退の重要性を知っているものだ。逃げ出すことは臆病さと同義ではない。
冨岡が出した結論の通り、ドルマリンには撤退できない理由があった。そう考えるのは自然だろう。
「そうじゃ」
ノノノカは言う。
「ドルマリン男爵の死亡現場には、少なくとも四名分の足跡は残されておった。一つはドルマリン男爵のものとして、残り三人分が誰のものなのかわかっておらんのじゃ。衛兵が足跡を調べたのじゃが、どこにでもあるような革靴を履いていたと報告書にはあった。素性のわからん三人。しかし、ドルマリン男爵の従者ではない。もちろん、冒険者ギルドに所属する誰かでもないぞ」
現場に残された足跡。ドルマリンのものを除けば、三人。先ほどノノノカは『ドルマリンが一人だった』と述べている。しかし、実際には四人だった。
それを『一人だった』と表現したのは、どれだけ調べても残りの三人が見つからないからだろう。見つからないのなら、いないのと同じだ。そういう彼女の考え方は言葉に反映されている。
「他に三人いた・・・・・・」
冨岡は呟いた。自分なら、何があれば逃げ出さないのか、と考えてみる。
「ドルマリン男爵が逃げなかった理由・・・・・・戦わざるを得ない状況だった。そこに誰かがいたのなら、その三人を守るためですかね」
その言葉を聞いたノノノカは、自分の孫を褒めるために頷いた。
「ワシもそう考えておる。正義感の強い男じゃからのう、ドルマリン男爵は。その上で『足跡だけの三人』が誰なのかを推測すると、彼よりも立場の高い者に絞られる」
「つまり、貴族?」
「順当に考えれば、一番可能性が高いのは貴族じゃろう。正義感の高さゆえ、市民が困っていれば助けるだろうが、従者に何も言わなかった理由が生まれん。貴族ならば、口止めすることもできるじゃろう」
あくまで推測に過ぎないが、貴族がドルマリン男爵を呼び出し、何らかの方法で魔物に殺させた。そう考えると、ある程度納得のできる推測が生まれる。
確かに不審死だ。
さらにノノノカは話を続ける。
「そこから貴族たちの動きはきな臭くなっていった。直接ドルマリン男爵の件と関わりがあるのかはわからんが、貴族たちの動きは必ずどこかで繋がっておるものじゃ。全くの無関係ではないじゃろう」
「あの」
話を聞いていたアメリアが、挙手でもするように言葉を発した。
「ドルマリン男爵様が殺されたとして、その理由は何なんでしょうか?」
賢く強い者ほど撤退の重要性を知っているものだ。逃げ出すことは臆病さと同義ではない。
冨岡が出した結論の通り、ドルマリンには撤退できない理由があった。そう考えるのは自然だろう。
「そうじゃ」
ノノノカは言う。
「ドルマリン男爵の死亡現場には、少なくとも四名分の足跡は残されておった。一つはドルマリン男爵のものとして、残り三人分が誰のものなのかわかっておらんのじゃ。衛兵が足跡を調べたのじゃが、どこにでもあるような革靴を履いていたと報告書にはあった。素性のわからん三人。しかし、ドルマリン男爵の従者ではない。もちろん、冒険者ギルドに所属する誰かでもないぞ」
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「他に三人いた・・・・・・」
冨岡は呟いた。自分なら、何があれば逃げ出さないのか、と考えてみる。
「ドルマリン男爵が逃げなかった理由・・・・・・戦わざるを得ない状況だった。そこに誰かがいたのなら、その三人を守るためですかね」
その言葉を聞いたノノノカは、自分の孫を褒めるために頷いた。
「ワシもそう考えておる。正義感の強い男じゃからのう、ドルマリン男爵は。その上で『足跡だけの三人』が誰なのかを推測すると、彼よりも立場の高い者に絞られる」
「つまり、貴族?」
「順当に考えれば、一番可能性が高いのは貴族じゃろう。正義感の高さゆえ、市民が困っていれば助けるだろうが、従者に何も言わなかった理由が生まれん。貴族ならば、口止めすることもできるじゃろう」
あくまで推測に過ぎないが、貴族がドルマリン男爵を呼び出し、何らかの方法で魔物に殺させた。そう考えると、ある程度納得のできる推測が生まれる。
確かに不審死だ。
さらにノノノカは話を続ける。
「そこから貴族たちの動きはきな臭くなっていった。直接ドルマリン男爵の件と関わりがあるのかはわからんが、貴族たちの動きは必ずどこかで繋がっておるものじゃ。全くの無関係ではないじゃろう」
「あの」
話を聞いていたアメリアが、挙手でもするように言葉を発した。
「ドルマリン男爵様が殺されたとして、その理由は何なんでしょうか?」
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