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王弟殿下
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彼女の言葉はさらに続く。
「ドルマリン男爵を利用しようとしたのは、王弟派の連中じゃな」
王弟派。言葉を聞けばなんとなく、その意味はわかる。文字通り国王の弟を支持する者たちだ。
いつも通りなら、レボルが疑問を抱き『王弟派?』と問いかけるところだろう。
だが、それよりも先にレボルが口を開いた。
「王弟殿下・・・・・・まさか、王弟殿下は王位を手に入れようと?」
レボルの言葉を聞いたノノノカは、鼻の奥で笑い口角を上げる。
「ふっ、あの王弟殿下が自ら王位を望むことなどないじゃろう。身に合わぬ衣は着んタイプじゃ。それに争い事を嫌う。現国王が王位を継承する際も、王弟殿下は手を挙げんかった。兄の優秀さも知っていただろうし、兄が国王になることがこの国のためだと判断したのじゃ。しかし、貴族の中には現国王のことを面白く思わん奴も多い」
彼女はどこか呆れたように片目だけを薄く閉じた。何かに辟易している様子である。
そこでようやく冨岡は、疑問を言葉にすることができた。
「どうしてですか? それも貴族たちが自分の立場しか考えないから、とか?」
「ヒロヤ、半分正解じゃ。現国王は『より良い国にするべく、変化を厭わない』という考え方を持っておった。保守派の連中からすれば、まぁ、面白くはないの。その上、現国王は『妾腹』である」
つまり、妾の子であるということだ。
話はどんどんと血生臭くなり、泥の底に沈むような暗さを持ち始めたが、ここでやめるわけにはいかない。
さらに詳しく問うと、ノノノカは椅子の手摺りに体を預け、楽な姿勢で話を続けた。
先代国王とその王妃の間には子どもが産まれなかった、と彼女は語る。王妃が子どもを産めぬ体だったらしい。そして幸か不幸か、先代国王には多くの側室がいた。
このままでは王家の血が途絶えるのではないか、などと言われている中、側室の一人が懐妊。
そして産まれたのが現国王である。
しかし、現国王を産んだ側室は出産時に死亡。当然、正室という立場を得ることはなかった。
「王家の幸運と不幸はさらに続くぞ。現国王が産まれた数年後、正室である王妃が病に倒れた。このままでは体裁が悪い、と判断した王家は、新たな正室を迎えたのじゃ。人を駒とでも思っておるようじゃの。さて、この先は想像通り。正室となった王妃との間に産まれたのが王弟。つまり、じゃ。王弟は正式に『国王と王妃』の間に産まれた子である。身分や立場を重んじる貴族にとって、象徴になりうる存在じゃ。わかるじゃろう? 貴族たちからすれば、立場的にも考え方的にも現国王は邪魔なのじゃよ。そして担ぎ上げるのに相応しいのが、王弟。王弟派とはそういう連中じゃ」
冨岡としては、貴族たちの思考や行動に納得できないものの、理解はできる。自分たちにとって都合の悪いものを排除したい。そのためには神輿が必要だった。
争い事を好まない王弟は、全てにおいて都合が良かったのだろう。
「なるほど・・・・・・血筋と象徴ですか。えっと、じゃあ、そんな王弟派がドルマリン男爵を取り上げた理由は? 利用って一体」
冨岡が訊ねた。
「ドルマリン男爵を利用しようとしたのは、王弟派の連中じゃな」
王弟派。言葉を聞けばなんとなく、その意味はわかる。文字通り国王の弟を支持する者たちだ。
いつも通りなら、レボルが疑問を抱き『王弟派?』と問いかけるところだろう。
だが、それよりも先にレボルが口を開いた。
「王弟殿下・・・・・・まさか、王弟殿下は王位を手に入れようと?」
レボルの言葉を聞いたノノノカは、鼻の奥で笑い口角を上げる。
「ふっ、あの王弟殿下が自ら王位を望むことなどないじゃろう。身に合わぬ衣は着んタイプじゃ。それに争い事を嫌う。現国王が王位を継承する際も、王弟殿下は手を挙げんかった。兄の優秀さも知っていただろうし、兄が国王になることがこの国のためだと判断したのじゃ。しかし、貴族の中には現国王のことを面白く思わん奴も多い」
彼女はどこか呆れたように片目だけを薄く閉じた。何かに辟易している様子である。
そこでようやく冨岡は、疑問を言葉にすることができた。
「どうしてですか? それも貴族たちが自分の立場しか考えないから、とか?」
「ヒロヤ、半分正解じゃ。現国王は『より良い国にするべく、変化を厭わない』という考え方を持っておった。保守派の連中からすれば、まぁ、面白くはないの。その上、現国王は『妾腹』である」
つまり、妾の子であるということだ。
話はどんどんと血生臭くなり、泥の底に沈むような暗さを持ち始めたが、ここでやめるわけにはいかない。
さらに詳しく問うと、ノノノカは椅子の手摺りに体を預け、楽な姿勢で話を続けた。
先代国王とその王妃の間には子どもが産まれなかった、と彼女は語る。王妃が子どもを産めぬ体だったらしい。そして幸か不幸か、先代国王には多くの側室がいた。
このままでは王家の血が途絶えるのではないか、などと言われている中、側室の一人が懐妊。
そして産まれたのが現国王である。
しかし、現国王を産んだ側室は出産時に死亡。当然、正室という立場を得ることはなかった。
「王家の幸運と不幸はさらに続くぞ。現国王が産まれた数年後、正室である王妃が病に倒れた。このままでは体裁が悪い、と判断した王家は、新たな正室を迎えたのじゃ。人を駒とでも思っておるようじゃの。さて、この先は想像通り。正室となった王妃との間に産まれたのが王弟。つまり、じゃ。王弟は正式に『国王と王妃』の間に産まれた子である。身分や立場を重んじる貴族にとって、象徴になりうる存在じゃ。わかるじゃろう? 貴族たちからすれば、立場的にも考え方的にも現国王は邪魔なのじゃよ。そして担ぎ上げるのに相応しいのが、王弟。王弟派とはそういう連中じゃ」
冨岡としては、貴族たちの思考や行動に納得できないものの、理解はできる。自分たちにとって都合の悪いものを排除したい。そのためには神輿が必要だった。
争い事を好まない王弟は、全てにおいて都合が良かったのだろう。
「なるほど・・・・・・血筋と象徴ですか。えっと、じゃあ、そんな王弟派がドルマリン男爵を取り上げた理由は? 利用って一体」
冨岡が訊ねた。
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