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祖母としてのノノノカ
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そのままいくつかの質問をし、キュルケース邸での話を終えた冨岡は、最後にローズへ「何かあればすぐに学園まで来てください」と言い残して街道に出る。
冨岡が自分たちの居場所を守るためには、キュルケース公爵が国王への謁見ができるようにしなければならない。
そもそもキュルケース公爵を排除する一連の流れで、学園や移動販売『ピース』が巻き込まれたのは、公爵家お抱えの商人であると判断されたからだ。ダルクはそう語っていた。
学園に向かって歩きながら冨岡は呟く。
「他の貴族たちからすれば、俺たちは公爵家の庇護下。実際かなり協力してもらってるから、それは間違っていないけど。一蓮托生ってことか」
そうでなくとも、キュルケース公爵が窮地に立たされているのなら、動かないわけにはいかない。
これまでの話によって、冨岡がすべきことは決まった。最終目標は、キュルケース公爵と国王への謁見を取り付けること。これから大切になってくるのは、その方法だ。
実現性のある作戦を立てるために、より多くの正確な情報を集める。
「情報といえば、まずはレボルさんか。冒険者ギルドで得られる情報は多いだろうし。今から俺が冒険者ギルドに向かっても、入れ違いになるかもしれないし、学園で待つべきかな」
歩きながらの思考や独り言は、思っているよりも脳が働く。足を動かすことで血液が循環し、脳が活性化する、というのが冨岡の勝手な持論だ。そこに正しさは関係なく、彼が思い込んでいるに過ぎない。
それでも前向きかつ建設的に思考できたこの時間は、無駄ではないだろう。
しばらく歩き、学園に到着した冨岡は、やけに静かだと感じた。
当然である。昨日まで改修工事の最終段階が行われており、人の声も作業音も聞こえていた。けれど、今日は何も聞こえない。工事すら王命によって止められたのだろう。
冨岡は寂しさを感じながら移動販売の屋台に向かった。
「ただいま戻りました」
暗い雰囲気を出しても落ち込んでしまうだけ。そう考えた冨岡は扉を開けばがら、少し明るめに声をかける。
しかし、返ってきたのはやけに緊張した空気だった。
「おかえりなさい、トミオカさん」
アメリアが代表して答える。屋台の中にはアメリアと子どもたち。そしてレボルと、冨岡に対して背中を向けて椅子に座っている誰かだった。
気になるのはメレブとドロフがいないこと。そしてレボルが誰かを連れて帰って来ていることだ。
「えっと?」
冨岡が足を進め、椅子に座っている誰かが誰なのかを確認しようとすると、その誰かは勢いよく立ち上がる。
「遅かったな、ヒロヤ!」
この世界で冨岡をヒロヤと呼ぶ者は一人だ。
冨岡の祖母、ノノノカ・ベルソードである。
冨岡が自分たちの居場所を守るためには、キュルケース公爵が国王への謁見ができるようにしなければならない。
そもそもキュルケース公爵を排除する一連の流れで、学園や移動販売『ピース』が巻き込まれたのは、公爵家お抱えの商人であると判断されたからだ。ダルクはそう語っていた。
学園に向かって歩きながら冨岡は呟く。
「他の貴族たちからすれば、俺たちは公爵家の庇護下。実際かなり協力してもらってるから、それは間違っていないけど。一蓮托生ってことか」
そうでなくとも、キュルケース公爵が窮地に立たされているのなら、動かないわけにはいかない。
これまでの話によって、冨岡がすべきことは決まった。最終目標は、キュルケース公爵と国王への謁見を取り付けること。これから大切になってくるのは、その方法だ。
実現性のある作戦を立てるために、より多くの正確な情報を集める。
「情報といえば、まずはレボルさんか。冒険者ギルドで得られる情報は多いだろうし。今から俺が冒険者ギルドに向かっても、入れ違いになるかもしれないし、学園で待つべきかな」
歩きながらの思考や独り言は、思っているよりも脳が働く。足を動かすことで血液が循環し、脳が活性化する、というのが冨岡の勝手な持論だ。そこに正しさは関係なく、彼が思い込んでいるに過ぎない。
それでも前向きかつ建設的に思考できたこの時間は、無駄ではないだろう。
しばらく歩き、学園に到着した冨岡は、やけに静かだと感じた。
当然である。昨日まで改修工事の最終段階が行われており、人の声も作業音も聞こえていた。けれど、今日は何も聞こえない。工事すら王命によって止められたのだろう。
冨岡は寂しさを感じながら移動販売の屋台に向かった。
「ただいま戻りました」
暗い雰囲気を出しても落ち込んでしまうだけ。そう考えた冨岡は扉を開けばがら、少し明るめに声をかける。
しかし、返ってきたのはやけに緊張した空気だった。
「おかえりなさい、トミオカさん」
アメリアが代表して答える。屋台の中にはアメリアと子どもたち。そしてレボルと、冨岡に対して背中を向けて椅子に座っている誰かだった。
気になるのはメレブとドロフがいないこと。そしてレボルが誰かを連れて帰って来ていることだ。
「えっと?」
冨岡が足を進め、椅子に座っている誰かが誰なのかを確認しようとすると、その誰かは勢いよく立ち上がる。
「遅かったな、ヒロヤ!」
この世界で冨岡をヒロヤと呼ぶ者は一人だ。
冨岡の祖母、ノノノカ・ベルソードである。
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