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つまり

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 つまりキュルケース・ホースは、冨岡が現れたことによって自分のすべきことを決めた。
 困っている人を目にしながらも、何もできない。そんな自分を嘆き、恥じ、そして捨てた。行動しない理由を全て捨て、やるべきことをやる。その結果が今回の行動だった。

「俺のように・・・・・・」

 自分の影響である、と冨岡が知れば、自らを責めるかもしれない。ローズの言葉やダルクの気遣いは、そうなった時の予防線。そう気づいた冨岡は、小さく頷く。

「気を遣わせてしまいましたね。すみません、ローズ。ダルクさん。二人の言葉がなければ、俺は自分を責めていたかもしれません」
「だからトミーのせいじゃないわ」
「ありがとうございます、ローズ。もちろん、俺が現れなければ公爵様が無茶をしなかったのではないか、と思う気持ちは少し残りますし、俺が言うのも変なんですけど・・・・・・公爵様の気持ちはわかるんです。俺も、人からの影響で困っている人を助けたいと思い始めましたから」

 冨岡が広げようと努力していた『人助けの輪』は確実に広がっている。そう感じられた瞬間だった。
 だが、今はそれを喜んでいる場合ではない。
 冨岡はさらに言葉を続ける。

「ダルクさん、さっきの話だと公爵様はある程度この事態を予測していたんですよね」
「ええ、旦那様は遅かれ早かれこうなるのではないか、と」
「だったら、ここから先の計画も立てているんじゃないですか? 出頭命令を受けた後のことを」
「それが・・・・・・公爵位の貴族が出頭命令を受けた場合、まずは国王様への報告と謁見から始まるのが慣例とされていました。しかし、今回は先に王命が出されています。つまり、国王様も承知のこと・・・・・・報告と謁見は省かれ、本格的な取り調べが行われるのです。国王様に直接話す機会を奪われたことで、旦那様の計画は崩れたはず・・・・・・まさか他の貴族たちがここまで大っぴらに動くとは」

 自分の口元を手で覆い、頭の中で状況を噛み砕く冨岡。
 元々、キュルケース・ホースは自分が『最低賃金の制定』を提案した時点で、他の貴族たちの反感を買うと予想していた。
 そうなれば、いずれ自分が何かしらの罪を着せられ、出頭命令を受けることも。だが、慣例では国王への謁見が許される。そこで直接国王と話をすれば、あらぬ疑いを晴らせると考えていた。
 しかし、そうはならなかった。他の貴族たちは、確実に公爵を排除するため、先に『王命』を取り付けていたのである。
 ダルクは説明を省いていたが、他の貴族たちが行ったことは本来ありえないことだ。これほど大胆に公爵を排除すれば、民衆にも動きが伝わる。貴族内での諍いは混乱の元でもあるし、その貴族を支持する国民たちから反感を買ってしまう。
 文字通り手段を選ばぬ行動であった。
 冨岡は噛み砕いた情報を言葉にする。

「国王様への謁見が許されないからピンチ・・・・・・」

 声に出したことで頭の中がスッキリし、容易ではないが正しく単純な答えに辿り着いた。

「つまり、国王様への謁見さえ取り付けられれば、公爵様の計画通りに進む。そういうことですよね、ダルクさん」
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