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相手が悪い
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その場に居たのは冨岡とアメリア、レボルにドロフ、メルブ。そしてフィーネとリオ。一号店のメンバーである。
屋台を動かそうとした途端、ぞろぞろと兵士らしき者たちに囲まれ、最初にレボルが子どもたちの前に立った。彼は周囲を睨み、腰のナイフに手を置く。
冨岡はレボルの判断と行動の早さに感心しながら、自分も動かなければ、とアメリアの前に立った。
ただの来客であれば、こんな行動に出る必要はない。
けれど、冨岡よりも冷静かつ判断力のあるレボルが、これ見よがしに警戒し、ナイフに手を置いているのだ。
どうしてか。簡単な話である。相手に敵意があるからだ。レボルはそれを感じ取ったのである。
兵士の数は二十人くらいだろうか。それだけの兵士からの敵意。冨岡はやけに喉が渇く空気の中、声が裏返らないように問いかける。
「一体、何の用ですか? これから仕事なんですけど」
そんな声を掻き消すように、わざとらしく足音を立てて背の低い男が兵士の中から出てきた。
偉そうな髭を生やし、堅苦しい服を着た男である。
「心配するな、仕事に行く必要はない」
背の低い男に言われ、冨岡は意味がわからず聞き返す。
「仕事に行く必要はない?」
「その仕事がなくなるんだからな」
「どういうことですか?」
そう問いかけた冨岡に突きつけられたのが、仰々しい羊皮紙と『王命』だったというわけだ。
教育及び福祉を禁ずる、突然の王命。話は進んだはずなのに、余計訳が分からなくなった。
「は? 王命? 教育と福祉を禁ずる? 一体何を言って・・・・・・」
これまで積み上げてきたものを、無惨に踏み荒らされた気分だ。
それはつまり、学園を禁じられたということである。もう開校間近。多くの人に支えられ、時間をかけ、汗を流して、ようやく目標の一歩目を踏み出すところだった。
理解や納得、状況の把握よりも先に、冨岡の中で怒りが湧き出す。
意味がわからない。だが、自分の目標を阻害されようとしていることだけはわかった。
冨岡が背の低い男に向かって、一歩踏み出すと慌てたドロフが飛び出してくる。
「兄貴、ダメだ! 相手が悪い!」
ドロフは冨岡の前に立つと、両肩を押さえた。
そんな声を聞いて少しだけ冷静になった冨岡は、足を止めて自分の精神状態を把握する。
明らかに冷静ではない。完成間近の模型を壊された子どものように、怒りを露わにしていた。
少なくとも話をしようという様子ではないだろう。そんな顔で相手に向かっていけば、攻撃的だと捉えられても不思議ではない。
冨岡の性格を知っているドロフは、そうならないように止めてくれたのだ。
「・・・・・・ドロフ、ありがとう。俺は詳しい話を聞きたかっただけだよ」
「わかってやすよ、そんなこと。でも相手は特級の貴族様だ。王命を任されるのは、侯爵以上なはず。俺たちの首を飛ばすくらい簡単ってことだ」
それをわかっていて、冨岡の前に立ってくれるドロフ。もはやその忠誠心は疑いようがない。
ドロフが言い終えた瞬間、背の低い男が咳払いをした。
「オホン! 聞いておるか、貴様ら。私はベレゼッセス侯爵である。私の役目は王命を届けること。貴様らの捕縛は仰せつかっていない。大人しくしておけば、しばらくは首と胴体が離れ離れになることはなかろう」
屋台を動かそうとした途端、ぞろぞろと兵士らしき者たちに囲まれ、最初にレボルが子どもたちの前に立った。彼は周囲を睨み、腰のナイフに手を置く。
冨岡はレボルの判断と行動の早さに感心しながら、自分も動かなければ、とアメリアの前に立った。
ただの来客であれば、こんな行動に出る必要はない。
けれど、冨岡よりも冷静かつ判断力のあるレボルが、これ見よがしに警戒し、ナイフに手を置いているのだ。
どうしてか。簡単な話である。相手に敵意があるからだ。レボルはそれを感じ取ったのである。
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「一体、何の用ですか? これから仕事なんですけど」
そんな声を掻き消すように、わざとらしく足音を立てて背の低い男が兵士の中から出てきた。
偉そうな髭を生やし、堅苦しい服を着た男である。
「心配するな、仕事に行く必要はない」
背の低い男に言われ、冨岡は意味がわからず聞き返す。
「仕事に行く必要はない?」
「その仕事がなくなるんだからな」
「どういうことですか?」
そう問いかけた冨岡に突きつけられたのが、仰々しい羊皮紙と『王命』だったというわけだ。
教育及び福祉を禁ずる、突然の王命。話は進んだはずなのに、余計訳が分からなくなった。
「は? 王命? 教育と福祉を禁ずる? 一体何を言って・・・・・・」
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意味がわからない。だが、自分の目標を阻害されようとしていることだけはわかった。
冨岡が背の低い男に向かって、一歩踏み出すと慌てたドロフが飛び出してくる。
「兄貴、ダメだ! 相手が悪い!」
ドロフは冨岡の前に立つと、両肩を押さえた。
そんな声を聞いて少しだけ冷静になった冨岡は、足を止めて自分の精神状態を把握する。
明らかに冷静ではない。完成間近の模型を壊された子どものように、怒りを露わにしていた。
少なくとも話をしようという様子ではないだろう。そんな顔で相手に向かっていけば、攻撃的だと捉えられても不思議ではない。
冨岡の性格を知っているドロフは、そうならないように止めてくれたのだ。
「・・・・・・ドロフ、ありがとう。俺は詳しい話を聞きたかっただけだよ」
「わかってやすよ、そんなこと。でも相手は特級の貴族様だ。王命を任されるのは、侯爵以上なはず。俺たちの首を飛ばすくらい簡単ってことだ」
それをわかっていて、冨岡の前に立ってくれるドロフ。もはやその忠誠心は疑いようがない。
ドロフが言い終えた瞬間、背の低い男が咳払いをした。
「オホン! 聞いておるか、貴様ら。私はベレゼッセス侯爵である。私の役目は王命を届けること。貴様らの捕縛は仰せつかっていない。大人しくしておけば、しばらくは首と胴体が離れ離れになることはなかろう」
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