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いつもの場所へ
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女神様(仮)との契約を守るために、ノノノカに異世界のことを含め冨岡との会話を他言しないよう約束する。
自身でも不思議なほどの行動力を発揮し、飛び込むようにベルソード家を訪れた冨岡は、自分の母親についての話と、自分と血の繋がっている祖母を得た。
いや、何度も言うがまだシャーナ・ベルソードが冨岡の母である、と確定したわけではない。それは冨岡とノノノカの希望的観測でしかないのかもしれない。
二人は互いに母と娘を探していた。冨岡は潜在意識下で母を、ノノノカははっきりと意識しながら娘を。
そのため都合のいい結論を出しただけかもしれない。
けれど、確かに『何か』があった。理屈ではない、何かが。
少なくともノノノカは、五年分の疑問を解消するだけの何かを感じていただろう。
ベルソード家に仕える若い女中に案内され、冨岡は屋敷の外に出た。
こちらの世界には珍しく眼鏡をかけた女中である。凛とした雰囲気の中に色気を持つ、どこか不思議な女性だった。
冨岡は女中に見送られ、そのまますぐそばの広場に向かう。
この時間であれば、まだ広場で移動販売『ピース』が営業しているだろう。
「陽の傾きと体感時間から考えると、もうすぐ片付けを始める頃か? そういえばお昼食べてないから腹減ったな」
自分の腹部をさすり、空腹を確かめながら呟く冨岡。
そんなことをしながら歩いていると、人がまばらになり始めた広場に到着する。自分が運営する屋台なのだが、空腹時に近づくとハンバーガーのいい匂いが顕著に感じられた。
人にぶつかる心配なく広場を進んでいくと、屋台が見えてくる。その周囲ではフィーネとリオがハンバーガーの包み紙を袋にまとめており、アメリアは屋台の中で接客していた。
冨岡が屋台を視認できるということは、向こうからも見える。そんな彼を最初に見つけるのは大体フィーネだった。
「あー、トミオカさん! おかえりなさい」
小さな体で精一杯の声を出すと、ゴミ袋を置いて駆けてくる。
冨岡はフィーネを受け止めるために、膝をついて目線を合わせた。
「ただいま、フィーネちゃん」
そのままフィーネを両手で持ち上げ、冨岡は優しく微笑む。
抱き上げられたのが嬉しかったのか、フィーネはくすぐったいような表情で両手を広げた。
「もう用事は終わったの?」
「うん、思ってたより長くなったけど、もう終わったよ。屋台の方はどんな感じかな?」
「えっとね、一号店の方はもう終わるんだって。今、ちょっと並んでるお客さんで終わり」
フィーネから屋台の状況を聞いた冨岡は、そのままリオと合流し屋台に向かう。
カウンターの中で接客しているアメリアに声をかけるわけにもいかないので、冨岡は屋台の裏に回った。すると、ちょうど屋台の中から出てくるレボルと顔を合わせる。
「あ、レボルさん。お疲れ様です」
「おかえりなさい、トミオカさん。今並んでいるお客様でハンバーガー完売予定ですよ。こちらは問題ありません」
即座に状況報告してくれるレボル。やはり彼を雇えたのは冨岡にとって幸運だったのだろう。
「フィーネちゃんから聞きました。一号店の方はもう終わるんですね。二号店はどうですか?」
「ああ、先ほどドロフが報告に来まして、売れ行きが良く昼過ぎにはほとんど売れてしまったそうです」
「向こうの方でもハンバーガーが定着してきている証拠ですね。あ、でもそれじゃあ貧民街に配る分が・・・・・・」
「トミオカさんならそう言うと思って、貧民街用にスープを作り二号店に運ばせました。いつも通り問題なく食事を配れますよ
自身でも不思議なほどの行動力を発揮し、飛び込むようにベルソード家を訪れた冨岡は、自分の母親についての話と、自分と血の繋がっている祖母を得た。
いや、何度も言うがまだシャーナ・ベルソードが冨岡の母である、と確定したわけではない。それは冨岡とノノノカの希望的観測でしかないのかもしれない。
二人は互いに母と娘を探していた。冨岡は潜在意識下で母を、ノノノカははっきりと意識しながら娘を。
そのため都合のいい結論を出しただけかもしれない。
けれど、確かに『何か』があった。理屈ではない、何かが。
少なくともノノノカは、五年分の疑問を解消するだけの何かを感じていただろう。
ベルソード家に仕える若い女中に案内され、冨岡は屋敷の外に出た。
こちらの世界には珍しく眼鏡をかけた女中である。凛とした雰囲気の中に色気を持つ、どこか不思議な女性だった。
冨岡は女中に見送られ、そのまますぐそばの広場に向かう。
この時間であれば、まだ広場で移動販売『ピース』が営業しているだろう。
「陽の傾きと体感時間から考えると、もうすぐ片付けを始める頃か? そういえばお昼食べてないから腹減ったな」
自分の腹部をさすり、空腹を確かめながら呟く冨岡。
そんなことをしながら歩いていると、人がまばらになり始めた広場に到着する。自分が運営する屋台なのだが、空腹時に近づくとハンバーガーのいい匂いが顕著に感じられた。
人にぶつかる心配なく広場を進んでいくと、屋台が見えてくる。その周囲ではフィーネとリオがハンバーガーの包み紙を袋にまとめており、アメリアは屋台の中で接客していた。
冨岡が屋台を視認できるということは、向こうからも見える。そんな彼を最初に見つけるのは大体フィーネだった。
「あー、トミオカさん! おかえりなさい」
小さな体で精一杯の声を出すと、ゴミ袋を置いて駆けてくる。
冨岡はフィーネを受け止めるために、膝をついて目線を合わせた。
「ただいま、フィーネちゃん」
そのままフィーネを両手で持ち上げ、冨岡は優しく微笑む。
抱き上げられたのが嬉しかったのか、フィーネはくすぐったいような表情で両手を広げた。
「もう用事は終わったの?」
「うん、思ってたより長くなったけど、もう終わったよ。屋台の方はどんな感じかな?」
「えっとね、一号店の方はもう終わるんだって。今、ちょっと並んでるお客さんで終わり」
フィーネから屋台の状況を聞いた冨岡は、そのままリオと合流し屋台に向かう。
カウンターの中で接客しているアメリアに声をかけるわけにもいかないので、冨岡は屋台の裏に回った。すると、ちょうど屋台の中から出てくるレボルと顔を合わせる。
「あ、レボルさん。お疲れ様です」
「おかえりなさい、トミオカさん。今並んでいるお客様でハンバーガー完売予定ですよ。こちらは問題ありません」
即座に状況報告してくれるレボル。やはり彼を雇えたのは冨岡にとって幸運だったのだろう。
「フィーネちゃんから聞きました。一号店の方はもう終わるんですね。二号店はどうですか?」
「ああ、先ほどドロフが報告に来まして、売れ行きが良く昼過ぎにはほとんど売れてしまったそうです」
「向こうの方でもハンバーガーが定着してきている証拠ですね。あ、でもそれじゃあ貧民街に配る分が・・・・・・」
「トミオカさんならそう言うと思って、貧民街用にスープを作り二号店に運ばせました。いつも通り問題なく食事を配れますよ
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