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ノノノカと冨岡
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ノノノカの表情から安堵を読み取った冨岡は、自分でも不思議なほどすんなりと言葉が出てきた。自分勝手な意見でしかないし、保証など存在しない。けれど、どうしてもそれをノノノカに言いたかったのである。
「俺は俺の母親を知る人と偶然出会いました。その人は、シャーナ・ベルソードと似た境遇だそうです。慣れない異世界で、同じ境遇の人間と出会う。それがどれほど安心のできるものなのか、なんとなくわかるでしょう。心を許し、何でも話せる相手になったとして不思議ではない」
「どうした、ヒロヤ。いきなり」
「シャーナ・ベルソードはそんな相手にシャーナ・ベルソードだと名乗った。いくらでも偽ることができるのに、そうはしなかったんです。自分を全く知らない世界では、ベルソードと名乗る。それがシャーナ、いや母さんの本心なんですよ」
こちらの世界ではベルソードの名前を隠し、生きていたシャーナ。それはベルソードに対する反発でも、ノノノカに対しての当てつけでもない。純粋に自分の力を試したかった。言葉通りだったのだろう。
それでも向こうの世界では偽りなく、シャーナ・ベルソードと名乗る。彼女の本心はそこに溢れていた。
もしかすると母であるノノノカに認められたくて、ベルソードの後ろ盾なく功績を残したかったのだろうか。確かなのは、ベルソードであることを嫌がってたわけではない。
「そうか・・・・・・そうだなヒロヤ。ふっ、気を遣わせたようじゃなあ。あの馬鹿娘・・・・・・息子にそんなことを言わせるとは。面と向かってワシに言えばいいものを」
ノノノカはそう言いながら、優しい笑みを浮かべる。鋭い剣のようだった彼女の空気は、穏やかな海のように全てを包み込む優しさを持っていた。
そこから冨岡は時間の許す限り、自分の話をする。祖父源次郎も異世界転移者であったこと。美作の存在。どのようにして生きてきたのか。自分はこちらの世界で何をしようとしているのか。
終始、穏やかな表情で聞くノノノカからは、冨岡に対しての距離感が掴みきれない愛情のようなものを感じる。
話をしている途中、扉が外れた部屋にもう見慣れたと言ってもいい長身の鎧が入ってきた。
「ノノノカ様、ガルーダの移送が完了いたしました」
突然の報告に対して、ノノノカは不満げに答える。
「部屋に入る時は、ノックをするものじゃ」
「いや、扉がないですから」
おそらく反論できない立場であろう鎧の代わりに、冨岡が言う。
するとノノノカは可愛らしく、唇を尖らせた。
「せっかく楽しい時間だったんじゃ。いきなり邪魔する方が悪いと思わんか」
「あの人も仕事で報告に来たんじゃないですか。怒ったら可哀想ですよ」
「そうか。ヒロヤがそう言うのなら・・・・・・おい、お前。すまんかったの」
素直に謝罪された鎧は、戸惑いから言葉が出てこない様子だ。
「え、え、え、え? ええっと、え?」
これまでどれだけノノノカが厳しい上司だったのか、と察することができる。
また、初対面であるはずの冨岡がノノノカに対して、遠慮なく意見を述べていること。その上、ノノノカが素直に聞き入れていることも鎧が戸惑っている要因だろう。
さらにノノノカは言葉を続けた。
「まだ話を続けたかったが、そろそろ時間かのう。ガルーダの件について、後処理をせねばならん。すまんが、ワシは仕事に戻るぞ。名残惜しいが」
「そうですよね、こちらこそいきなりですみませんでした。話を聞いてもらえて、良かったです」
「またいつでも来い、ヒロヤ。お前であれば、無条件で中へ通そう。それじゃあの」
そう言って、部屋から出ようとするノノノカを呼び止める冨岡。
「あ、待ってください、ノノノカさん。あの今日の話は、その」
「わかっておる、他言はせんよ。心配せずとも良い。この情報はワシとお前だけのものじゃ」
「俺は俺の母親を知る人と偶然出会いました。その人は、シャーナ・ベルソードと似た境遇だそうです。慣れない異世界で、同じ境遇の人間と出会う。それがどれほど安心のできるものなのか、なんとなくわかるでしょう。心を許し、何でも話せる相手になったとして不思議ではない」
「どうした、ヒロヤ。いきなり」
「シャーナ・ベルソードはそんな相手にシャーナ・ベルソードだと名乗った。いくらでも偽ることができるのに、そうはしなかったんです。自分を全く知らない世界では、ベルソードと名乗る。それがシャーナ、いや母さんの本心なんですよ」
こちらの世界ではベルソードの名前を隠し、生きていたシャーナ。それはベルソードに対する反発でも、ノノノカに対しての当てつけでもない。純粋に自分の力を試したかった。言葉通りだったのだろう。
それでも向こうの世界では偽りなく、シャーナ・ベルソードと名乗る。彼女の本心はそこに溢れていた。
もしかすると母であるノノノカに認められたくて、ベルソードの後ろ盾なく功績を残したかったのだろうか。確かなのは、ベルソードであることを嫌がってたわけではない。
「そうか・・・・・・そうだなヒロヤ。ふっ、気を遣わせたようじゃなあ。あの馬鹿娘・・・・・・息子にそんなことを言わせるとは。面と向かってワシに言えばいいものを」
ノノノカはそう言いながら、優しい笑みを浮かべる。鋭い剣のようだった彼女の空気は、穏やかな海のように全てを包み込む優しさを持っていた。
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終始、穏やかな表情で聞くノノノカからは、冨岡に対しての距離感が掴みきれない愛情のようなものを感じる。
話をしている途中、扉が外れた部屋にもう見慣れたと言ってもいい長身の鎧が入ってきた。
「ノノノカ様、ガルーダの移送が完了いたしました」
突然の報告に対して、ノノノカは不満げに答える。
「部屋に入る時は、ノックをするものじゃ」
「いや、扉がないですから」
おそらく反論できない立場であろう鎧の代わりに、冨岡が言う。
するとノノノカは可愛らしく、唇を尖らせた。
「せっかく楽しい時間だったんじゃ。いきなり邪魔する方が悪いと思わんか」
「あの人も仕事で報告に来たんじゃないですか。怒ったら可哀想ですよ」
「そうか。ヒロヤがそう言うのなら・・・・・・おい、お前。すまんかったの」
素直に謝罪された鎧は、戸惑いから言葉が出てこない様子だ。
「え、え、え、え? ええっと、え?」
これまでどれだけノノノカが厳しい上司だったのか、と察することができる。
また、初対面であるはずの冨岡がノノノカに対して、遠慮なく意見を述べていること。その上、ノノノカが素直に聞き入れていることも鎧が戸惑っている要因だろう。
さらにノノノカは言葉を続けた。
「まだ話を続けたかったが、そろそろ時間かのう。ガルーダの件について、後処理をせねばならん。すまんが、ワシは仕事に戻るぞ。名残惜しいが」
「そうですよね、こちらこそいきなりですみませんでした。話を聞いてもらえて、良かったです」
「またいつでも来い、ヒロヤ。お前であれば、無条件で中へ通そう。それじゃあの」
そう言って、部屋から出ようとするノノノカを呼び止める冨岡。
「あ、待ってください、ノノノカさん。あの今日の話は、その」
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