百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
441 / 498

孫よ

しおりを挟む
 積極的かつ希望的観測で冨岡を信じるのではなく、様々な可能性を考え、その中で最も納得できる答えが『信じる』ことであった。
 冨岡としても、ノノノカが信じてくれていることを信じる理由になる。
 だからこそ、安心して話が続けられた。

「今話したように、俺は異世界から来ました。向こうの世界で生まれ育ったんです。つまり俺の母親、シャーナ・ベルソードは」
「異世界転移によって、トミオカが生まれ育った世界に行っていたというわけじゃな。ふっ、随分複雑で荒唐無稽な話だ。だが、腑に落ちる話でもある。それで、シャーナはどうなったのじゃ?」

 シャーナが異世界転移してからのことを尋ねられた冨岡は、一瞬言い淀む。冨岡もシャーナの半生について詳しいわけではない。
 美作から話を聞いている間も、どこか他人事のように感じていたくらいだ。
 どう説明しようか、と考えてみたものの、冨岡は自分が知っていることをそのまま話すことにする。

「えっと、俺もこの話を聞いたばかりでまだ半信半疑だったんです。だから詳しい話を聞いていなくて」
「何を言っておるんじゃ? 半信半疑だからこそ、詳しく聞かんでどうする」
「・・・・・・確かに。いや、でも困惑もあったんですよ。母親の話なんて聞いたことなかったから。それに俺以外の異世界転移の話も相まって」

 ノノノカの言う通り、もっと美作から聞いておくべきだったと反省する冨岡。
 だが、あの状況では何がわからないのかわからない。質問すべきことも浮かばないほど、わからないことだらけだった。
 冨岡の言葉を聞いたノノノカは少し考えてから質問を変える。

「ふむ、過ぎたことの失敗を指摘しても仕方ないか。では、お前が知っているシャーナの情報を聞かせてくれ。何かないか? 冨岡の母シャーナとワシの娘シャーナを繋ぐ何か」
「俺が知っていること・・・・・・えっと確か『魔王の操る魔物の群れを一人で討伐した』って話をしてたそうです」
「あのスタンピードの話か。冒険者ギルドから報告が上がっておったのう。シャーナが偽名で参加したパーティーの話じゃ。魔物の群れ討伐依頼を受けたパーティーが、突然起きた地形変化によって分断され、結局シャーナ一人で討伐に当たったという。その際、偽名を使用していたことからそれがシャーナであると知っているのは、ギルドの幹部クラスとパーティーメンバー、そしてシャーナ本人。可能性は非常に高い・・・・・・か」

 一つのエピソードから情報を繋いだノノノカは、全てを納得したように頷いた。その動きをきっかけにノノノカの目には慈しみが宿る。

「そうか、シャーナは・・・・・・異世界で死んだか。親不孝な娘じゃ」
「あ・・・・・・」

 ここで冨岡は気づいた。自分が話したことによって、失踪していた娘の死を確定させてしまったことを。
 そんな相手に何を言えばいいのだろうか。なんとか振り絞ろうとする冨岡だったが、言葉が出てこない。

「あの、えっと」
「ふっ、気を遣わずとも良い。シャーナはベルソードの庇護下で生きることを窮屈に感じておった。新たな世界でこれまでとは違う人生を歩んだのなら、不幸ではなかったのだろう」
「その、幸せだったかどうかはわからないですけど・・・・・・不幸だったなら、俺は生まれていないと思います」
「そうじゃな。恋を知り、愛を知った・・・・・・それも一つの幸せじゃろう」

 ノノノカはそう言うとソファから立ち上がり、机を迂回して富岡に近づく。

「すまんが、顔を見せてくれんか、トミオカ」
「冨岡は家名で、名前は浩哉です」
「ヒロヤ・・・・・・ふっ、聞き慣れん響きだな。じゃが、優しい音じゃ」

 彼女はそのまま冨岡の頬に触れ、じっと顔を眺めた。

「そう言われれば、目元が似ておるかもしれんな。優しさの奥に力強さを感じる。確定はできんが、ワシは納得してしまった。理論ではない、本能で感じるぞ。お前はシャーナの息子、そしてワシの孫じゃヒロヤ」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...