百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
440 / 498

理解できない事象がもたらす理解

しおりを挟む
 突然現れた女神は、突然消える。
 言葉の最後、音量をゆっくり下げるかのように消えていき、冨岡は頭に響く違和感から解放された。
 それと同時にノノノカの声が聞こえる。

「トミオカ、一体何をボソボソと喋っておるのじゃ」
「ノ、ノノノカさん」
「ようやく聞こえたようじゃな。突然頭を抱え、約束がどうとか呟いておったが、何があった?」

 問いかけられた冨岡は悩む。女神様(仮)の存在を軽率に話していいのだろうか。いや、いいはずがない。相手は仮にも、(仮)だが神なのだ。

「いや、頭痛がしてしまって。すみません、話を続けましょう」
「なんじゃ? ただの頭痛ではなかったろう。ワシに言えぬことか?」

 そう言うノノノカはこれまでと違い、優しげな表情を浮かべている。
 彼女も気づいたのだろう。本当に冨岡の母親がシャーナ・ベルソードであれば、冨岡はノノノカの孫ということになる。
 冨岡が何か事情を抱えているのなら、話してほしいと思ったのだろう。
 しかし、冨岡は首を横に振る。

「そんなんじゃないですよ、頭痛がひどくて変なことを口走っただけだと思います」
「そうか、それならば良いが。お前はこの世界の常識から外れた存在じゃ。ワシにはわからんこともあるじゃろう。だが、聞ける話もある。そのためにもう一度問おう・・・・・・トミオカ、お前の母はシャーナ・ベルソードという名で間違いないのか?」
「俺も断言できるわけじゃないんです。ただ、俺の両親を知っている人から、その名前を聞きました。俺の母親はシャーナ・ベルソードだと」

 冨岡の口からしっかりと答えを聞いたノノノカは、言葉を噛み締めるように頷いた。

「そうか」
「信じてもらえるんですか?」
「ワシはずっと疑問を抱き続けておった。ベルソード家の情報網を持って、シャーナの消息を掴めないことなどありえん、とな。それについて様々な可能性を考えた。冒険者ギルド内にシャーナを匿っている者がおるのではないか、人知れず死んだのではないか。じゃが、ベルソード家の意向に逆らいシャーナを助力するメリットがあるとは思えん。またシャーナがその辺で野垂れ死ぬともな。お前の話が、忽然と消えたシャーナの行方の説明として最も理解できたんじゃ。想像も理解もできん事象が、最も理解できるとは皮肉な話じゃがな」

 ノノノカは腕を組んでから「それに」と話を続ける。

「トミオカ、お前に関する不可思議な情報もそれで説明がつく」
「俺の、ですか?」
「ああ。他国から現れた商人だと言っていたが、お前の足跡が掴めんかった。そして、どの国にも当てはまらん料理を生み出したのじゃ。それが異世界のものだとすれば、納得できる」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...