百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

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女神様(仮)

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 ノノノカはこれまでの会話を頭の中で繋げ、最も可能性の高い答えを導いたのである。
 先に答えを言われてしまった冨岡は、驚きから硬直した。その瞬間、耐え難い頭痛が冨岡を襲う。

「痛っ!」

 ズキっと響いてくる痛みは、波紋のように広がり冨岡に目を瞑らせる。
 
「おい、トミオカ?」

 冨岡の様子がおかしいと判断したノノノカが声をかけたが、反応は返ってこなかった。
 それも仕方がない。冨岡の耳には違う声が響いていたのである。

「やれやれ、仕方のない子ねぇ。トミオカ ヒロヤさん」

 どこかで聞き覚えのある甘ったるい声。姿はないのに、直接鼓膜を揺らしてくる。
 異世界で暮らし始めてから、印象深い出来事が多かったため薄れていた記憶。

「まさか、女神様?」
「ノンノン、美しすぎる大天使ゴット女神様よ」

 異世界転移後すぐに話を交わした女神様(仮)の声であった。
 久しぶりの会話だったが、記憶の書庫からその声が女神様(仮)のものだとすぐに取り出すことができた。相手が神だからなのだろうか。
 しかし、この呼び名を矯正しようとする面倒臭さは間違いなく女神様(仮)である。

「い、いきなりどうしたんですか、女神様」

 冨岡が問いかけると、女神様(仮)は呆れたようなため息を漏らした。

「どうしたの、はこっちのセリフだわ。本当に困った子ねぇ、神との約束を破るなんて。本来なら神罰ものよぉ」
「神との約束? 何か約束しましたっけ」
「呆れた。本当に忘れているの?」

 そう言われ、冨岡は記憶を辿るが濃すぎる異世界での生活しか思い出せない。

「えっと・・・・・・」
「貴方、これまで誰にも自分が異世界人であると話さなかったわよね? 少なくともこっちの世界では。それはどうして?」
「そりゃ、俺が異世界人だと知られると面倒なことに・・・・・・あれ、でも異世界人であると信じてもらえれば、そんなに面倒なことにはならないか。異世界人を利用しようなんて考える人には最初から話さないし・・・・・・俺はどうして話さなかったんだろう。でも何故か、明かすのはダメだって意識が・・・・・・」

 これまでのことを思い返すと、冨岡は頑なに異世界人であることを話してこなかった。それに対して、毎回何か理由をつけて話してはダメだと結論づけている。
 よく考えれば、信頼している相手に話すことに大きなリスクはない。それどころか、隠し事があるという心の負担を減らせるだろう。
 自分の意識と記憶に戸惑う冨岡。そこで女神様(仮)は言葉を続けた。

「私との約束だったからよ。神との契約は魂に刻まれるものなの。私が貴方と最初に言葉を交わした時、たった一つだけ私が出した条件。それは『自分が異世界人であるということを明かさない』だったの」
「俺と約束を・・・・・・でも俺はなんでそれを忘れて・・・・・・」
「人間は弱く、意識することでその約束を破りたくなる作用があるの。禁じられた果実は甘い、ってね。だから神との約束については記憶が薄れ、その代わりに魂が行動を制限するのよ。忘れていて当然っちゃ、当然ね。でも貴方はその約束を破ったの」

 神との契約を破った。それに対して神自ら現れ、指摘してきたのである。
 冨岡は自分がどうなるのか、と怖くなった。

「あの、俺・・・・・・」
「心配しなくても罰するつもりはないわよぉ。魂に刻まれた制限を信頼しすぎてた私の落ち度でもあるしね。それよりも驚いたのは、魂の制限をも破る『何か』があったこと。貴方にとってノノノカ・ベルソードと母の話をすることは、それほど大切なことだったのね」
「そう・・・・・・なんでしょうか?」
「つまり私にとって特例が発生し、それは貴方にとっても特例だったわけ。というわけで私は、再契約に来たのよ。この場、ノノノカ・ベルソードとの会話は認めましょう。その代わり貴方はノノノカ・ベルソードが他言しないようになさい。そして今後、他の誰にも異世界人であることを明かしてはならない。これが再契約よ、トミオカ ヒロヤさん」
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