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虎の尾を踏む
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煽るように剣先を左右させるノノノカ。
冨岡から見れば、あまりにも理解できない話だった。ここが異世界であり、自分の持っている常識とはかけ離れていると考えてもおかしい。
大きな組織のトップが従業員の罪に対して罰を与えた。それに対して従業員は不満を持ち、手段を選ばず講義を行う。
本来であれば、組織全体の力を持って対処すればいい。
しかし、ノノノカはたった一人で相手をすると言う。さらには自分に勝てば全てを譲る、とまで言い放った。
「危なすぎるでしょ、そんなの」
思わず冨岡が言葉を溢すと、ノノノカは左手人差し指で自分の唇に触れる。
「黙って見ておれ、これが冒険者流じゃ」
その瞬間、我慢の限界を迎えたガルーダは思い切り斧を振りかぶる。
「だったら全てを奪ってやる! 全てを俺のものにすりゃあいいだけだ、この力で!」
ノノノカはガルーダの動きに呼吸を合わせて、大きく背後に飛んだ。
「まずは一点減点じゃ。冒険者たるもの相手の力量を見間違えるな」
「わかってるからこそ、最初から全力なんだ!」
先程までノノノカが立っていた場所を抉りながら、ガルーダは次の行動に移る。床に突き刺さった斧を支点に宙返りをし、右足の踵をノノノカの頭に叩き込んだ。
しかし、もうノノノカはそこにいない。一瞬早く右に飛んでダイナミックな前転踵落としを回避していた。
「二点目の減点じゃな。相手に回避されることを考えて、攻撃を行え。隙だらけじゃぞ、小僧。ほら、脇腹がガラ空きじゃ。突き刺してやろうか?」
言いながらノノノカは剣を突き出したが、寸前で停止させる。
見た目は子どもと大人。実力の差は大人と子ども。たった十秒程度のやり取りで、明らかな差が露わになった。
そしてそれは、戦いに慣れていない冨岡ですら理解できる。
「強い・・・・・・本当に強いんだ・・・・・・いや、あんな斧を軽々と振り回して、アクロバティックな動きを見せるガルーダって人もかなり強い。だけど、ノノノカさんは超越してる、卓越してる」
冨岡が驚きを表現している内にも、戦いは続く。
手を抜かれているとわかったガルーダは、額に青筋を立てて吠えた。
「ふざけるな! 本気で戦え!」
そのまま斧を床板から抜き取り、ノノノカの体目掛けて振る。
「ほう、攻撃を縦方向から横に変えたか。いい判断じゃ。しかし室内で長物を振り回すのは減点じゃな」
ノノノカはそう言いながら真上に飛んだ。まるで蝶のようにひらりと斧を回避すると、空中で斧の動きを目で追う。
ガルーダの斧は空振りの直後、壁に激突し、一瞬動きが止まってしまった。
その隙を逃さず、ノノノカは斧の刃に着地し笑みを浮かべる。
「戦いとは全てを利用するものじゃ。地形は武器にも防具にも、敵にもなり得る。まだやるか、小僧」
誰の目から見ても、実力の差は明らか。それどころか勝敗すら分かりきっていた。
けれどその言葉と行動は、ガルーダのプライドを傷つけ、少しだけ残っていた彼の理性を奪う。
「くそ! くそ・・・・・・クソが! このロリババア!」
明らかな敗北を受け入れられず、最後の最後で『罵声』という攻撃を放つガルーダ。喧嘩に負けた子どものようである。
「最後の手段が悪口って」
呆れる冨岡。
しかしそれは、虎の尾を踏み頭を差し出すようなものだった。
「ロリ・・・・・・ババア?」
ピシと何かが割れるような音が響く。
冨岡から見れば、あまりにも理解できない話だった。ここが異世界であり、自分の持っている常識とはかけ離れていると考えてもおかしい。
大きな組織のトップが従業員の罪に対して罰を与えた。それに対して従業員は不満を持ち、手段を選ばず講義を行う。
本来であれば、組織全体の力を持って対処すればいい。
しかし、ノノノカはたった一人で相手をすると言う。さらには自分に勝てば全てを譲る、とまで言い放った。
「危なすぎるでしょ、そんなの」
思わず冨岡が言葉を溢すと、ノノノカは左手人差し指で自分の唇に触れる。
「黙って見ておれ、これが冒険者流じゃ」
その瞬間、我慢の限界を迎えたガルーダは思い切り斧を振りかぶる。
「だったら全てを奪ってやる! 全てを俺のものにすりゃあいいだけだ、この力で!」
ノノノカはガルーダの動きに呼吸を合わせて、大きく背後に飛んだ。
「まずは一点減点じゃ。冒険者たるもの相手の力量を見間違えるな」
「わかってるからこそ、最初から全力なんだ!」
先程までノノノカが立っていた場所を抉りながら、ガルーダは次の行動に移る。床に突き刺さった斧を支点に宙返りをし、右足の踵をノノノカの頭に叩き込んだ。
しかし、もうノノノカはそこにいない。一瞬早く右に飛んでダイナミックな前転踵落としを回避していた。
「二点目の減点じゃな。相手に回避されることを考えて、攻撃を行え。隙だらけじゃぞ、小僧。ほら、脇腹がガラ空きじゃ。突き刺してやろうか?」
言いながらノノノカは剣を突き出したが、寸前で停止させる。
見た目は子どもと大人。実力の差は大人と子ども。たった十秒程度のやり取りで、明らかな差が露わになった。
そしてそれは、戦いに慣れていない冨岡ですら理解できる。
「強い・・・・・・本当に強いんだ・・・・・・いや、あんな斧を軽々と振り回して、アクロバティックな動きを見せるガルーダって人もかなり強い。だけど、ノノノカさんは超越してる、卓越してる」
冨岡が驚きを表現している内にも、戦いは続く。
手を抜かれているとわかったガルーダは、額に青筋を立てて吠えた。
「ふざけるな! 本気で戦え!」
そのまま斧を床板から抜き取り、ノノノカの体目掛けて振る。
「ほう、攻撃を縦方向から横に変えたか。いい判断じゃ。しかし室内で長物を振り回すのは減点じゃな」
ノノノカはそう言いながら真上に飛んだ。まるで蝶のようにひらりと斧を回避すると、空中で斧の動きを目で追う。
ガルーダの斧は空振りの直後、壁に激突し、一瞬動きが止まってしまった。
その隙を逃さず、ノノノカは斧の刃に着地し笑みを浮かべる。
「戦いとは全てを利用するものじゃ。地形は武器にも防具にも、敵にもなり得る。まだやるか、小僧」
誰の目から見ても、実力の差は明らか。それどころか勝敗すら分かりきっていた。
けれどその言葉と行動は、ガルーダのプライドを傷つけ、少しだけ残っていた彼の理性を奪う。
「くそ! くそ・・・・・・クソが! このロリババア!」
明らかな敗北を受け入れられず、最後の最後で『罵声』という攻撃を放つガルーダ。喧嘩に負けた子どものようである。
「最後の手段が悪口って」
呆れる冨岡。
しかしそれは、虎の尾を踏み頭を差し出すようなものだった。
「ロリ・・・・・・ババア?」
ピシと何かが割れるような音が響く。
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