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傭兵と冒険者
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ダルクから紹介状を受け取った冨岡は、話を切り上げ公爵邸を後にした。
体感時間的にまだ午前中。今の時間ならば昼食と被らず、突然の訪問も失礼ではないだろう。
冨岡が左手に持っているのはダルクからもらった紹介状。右手にはベルソード家までの地図だった。
冒険者ギルドを統べているとはいえ、ベルソード家は貴族ではないらしい。冨岡には難しい話だったが、政治的な問題で冒険者ギルドには貴族が大きく介入しないようになっている。
権力の集中を避けるためのものであり、三権分立に近い手法だ。
これは世界中どの国でも同じような方法を取られており、冒険者ギルド同士が国を超えて繋がることで、貴族制という圧力に侵されないようになっている。
と言っても、冒険者ギルドに所属する人間は立場的に貴族には逆らえないため、一部貴族に支配されている者もいるようだがこれはまた別の話である。
そういうわけで、貴族の屋敷が並ぶいわゆる貴族街からは離れた場所にベルソード家はあった。
「結構遠いな」
冨岡はダルクからのフォンガ車を出そうか、という提案を断ったことに少し後悔しながら、いつも大広場に向かって歩いている。
移動販売『ピース』の屋台が気になったわけではなく、単に通り道だっただけだ。大広場のすぐそばには傭兵たちが集う施設がある。
傭兵とは有事の際に備え、戦いを専門とする者たちのこと。そして冒険者とは、戦いを含む様々な依頼を受け、生業とする者たちだ。
それは職業としての話であり、言葉として冒険者が戦いのために雇われれば傭兵と呼ばれる。
どちらも似たような職業であることは間違いなく、似た者同士であるからこそ、互いに牽制し合う仲でもあった。
どちらかが暴走しないために、互いを見張りあっているのだ。
そんな背景から傭兵施設のすぐ近くに、冒険者ギルドを統べるベルソード家はある。
「この場所なら地図はいらないんだけど、せっかく書いてくれたしな」
そう呟きながら大広場にたどり着いた冨岡は、背後から誰かに抱きつかれた。
いや、背後というよりも膝裏と言った方が正しい。
小さな体で富岡の足にしがみつき、嬉しそうに笑っていた。
「フィーネちゃん」
振り向きながら冨岡が言うと、フィーネは柔らかそうな頬が潰れるほどの笑みで頷く。
「トミオカさん! もう用事は終わったの? フィーネはね、さっきまでお仕事のお手伝いをしてたんだよ。お客さんが食べ終わったゴミを回収していた」
「回収なんて難しい言葉を遣うんだなぁ」
おそらくレボルたちが言っているのを聞いて覚えたのだろう。子どもの成長と学習は凄まじい。
冨岡はそんなフィーネの頭を撫でながら言葉を返した。
「偉いね、フィーネちゃん。でもまだ俺は用事があるんだ。終わったらすぐ戻ってくるから、頑張ってくれるかい?」
「うん! フィーネ頑張る! そしたらまた撫でてね」
「ははっ、じゃあいっぱい撫でようね。人数も増えてきて休みの日も作れそうだし、お休みにはどこかへ遊びに行こう」
そう言うと冨岡は、屋台の中で働くアメリアやレボルたちを見てからベルソード家に向かった。
体感時間的にまだ午前中。今の時間ならば昼食と被らず、突然の訪問も失礼ではないだろう。
冨岡が左手に持っているのはダルクからもらった紹介状。右手にはベルソード家までの地図だった。
冒険者ギルドを統べているとはいえ、ベルソード家は貴族ではないらしい。冨岡には難しい話だったが、政治的な問題で冒険者ギルドには貴族が大きく介入しないようになっている。
権力の集中を避けるためのものであり、三権分立に近い手法だ。
これは世界中どの国でも同じような方法を取られており、冒険者ギルド同士が国を超えて繋がることで、貴族制という圧力に侵されないようになっている。
と言っても、冒険者ギルドに所属する人間は立場的に貴族には逆らえないため、一部貴族に支配されている者もいるようだがこれはまた別の話である。
そういうわけで、貴族の屋敷が並ぶいわゆる貴族街からは離れた場所にベルソード家はあった。
「結構遠いな」
冨岡はダルクからのフォンガ車を出そうか、という提案を断ったことに少し後悔しながら、いつも大広場に向かって歩いている。
移動販売『ピース』の屋台が気になったわけではなく、単に通り道だっただけだ。大広場のすぐそばには傭兵たちが集う施設がある。
傭兵とは有事の際に備え、戦いを専門とする者たちのこと。そして冒険者とは、戦いを含む様々な依頼を受け、生業とする者たちだ。
それは職業としての話であり、言葉として冒険者が戦いのために雇われれば傭兵と呼ばれる。
どちらも似たような職業であることは間違いなく、似た者同士であるからこそ、互いに牽制し合う仲でもあった。
どちらかが暴走しないために、互いを見張りあっているのだ。
そんな背景から傭兵施設のすぐ近くに、冒険者ギルドを統べるベルソード家はある。
「この場所なら地図はいらないんだけど、せっかく書いてくれたしな」
そう呟きながら大広場にたどり着いた冨岡は、背後から誰かに抱きつかれた。
いや、背後というよりも膝裏と言った方が正しい。
小さな体で富岡の足にしがみつき、嬉しそうに笑っていた。
「フィーネちゃん」
振り向きながら冨岡が言うと、フィーネは柔らかそうな頬が潰れるほどの笑みで頷く。
「トミオカさん! もう用事は終わったの? フィーネはね、さっきまでお仕事のお手伝いをしてたんだよ。お客さんが食べ終わったゴミを回収していた」
「回収なんて難しい言葉を遣うんだなぁ」
おそらくレボルたちが言っているのを聞いて覚えたのだろう。子どもの成長と学習は凄まじい。
冨岡はそんなフィーネの頭を撫でながら言葉を返した。
「偉いね、フィーネちゃん。でもまだ俺は用事があるんだ。終わったらすぐ戻ってくるから、頑張ってくれるかい?」
「うん! フィーネ頑張る! そしたらまた撫でてね」
「ははっ、じゃあいっぱい撫でようね。人数も増えてきて休みの日も作れそうだし、お休みにはどこかへ遊びに行こう」
そう言うと冨岡は、屋台の中で働くアメリアやレボルたちを見てからベルソード家に向かった。
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