百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

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紹介状

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 どうしようかな、と冨岡は考える。
 現状、これ以上傭兵や冒険者を雇う予定はない。今はレボルたちがいてくれれば充分だった。
 しかしここで誤魔化すために、冒険者を雇う予定がある、なんて嘘をつくと後から話が拗れてしまうかもしれない。

「あー、そうじゃないんです」

 異世界転移の話はできないが、冨岡は一部を省いて説明することに決めた。
 まだアメリアにも話していないことだ。

「では、どのような用でベルソード家の話を?」

 ダルクに問いかけられた冨岡は、少し息を吸い込んでから話し始める。

「いきなりな話なんで、俺もそんなにピンと来てないし驚くとは思うんですけど・・・・・・俺の母親がベルソード家の人だったみたいなんです」
「ん? ということは、トミオカ様はベルソード家の血を継いでいると?」
「らしいんです。つい最近それを知って、本当なのか確認したかっただけなんですよ」
「では、ベルソード家が冒険者ギルドを管理している話は知らなかったんですね? ただ『ベルソード』を探していた・・・・・・ということですね」
「はい、名前しか知らなかったので」

 冨岡がそう答えると、ダルクは小さく頷いた。

「なるほど、そういうことでしたか。推察するに、これまでトミオカ様は自分のご両親を知らなかった・・・・・・そして最近、お母様の名前だけを知った。トミオカ様は他国出身だと仰っていましたから、お母様はベルソードを出ておられるのですね。もしかすると親族が残っているかもしれないので、確認だけしたい。そんなところですか?」
「まぁ、そんな感じです」

 ダルクの勘の良さに驚きながら、冨岡は肯定する。
 するとダルクは立ち上がってから「少し待っていてください」と告げて部屋を出た。
 言われた通り冨岡が待っていると、ダルクは羊皮紙のような物を手にして戻ってきた。

「僭越ながら紹介状を書かせていただきました。公爵家の名前を使った紹介状ですから、ベルソード家に持っていけば、話を聞いてくれると思います。内容は『身辺警護の依頼を考えている』というものですから、その辺は話を合わせてください」
「良いんですか? 公爵家とは何の関係もない個人的な話ですよ」
「何を言っているんですか。トミオカ様の頼みを断ってしまうと、旦那様にもお嬢様にも叱られてしまいますよ。私としてもトミオカ様の力になれるのであれば、できる限りのことはしたい。それにトミオカ様が、ご自身の家族について話してくださるのは初めてですしね。公爵家が誇る隠密部隊が調べても出てこなかった情報ですよ」
「俺自身、家族のことは知らなかったですし。って、今めちゃくちゃ怖い単語が飛び出しませんでした?」

 隠密部隊なんて不穏な言葉は聞き逃せない。だが、考えてみれば富岡の身辺調査がされるのは当然の話だ。
 突然現れた他国の商人。そんな者が公爵家を出入りするためには、絶対的な信頼が必要になる。何かあってからでは遅いのだから、背後関係も調べなければならない。
 するとダルクは優しく微笑んだ。

「その単語は聞かなかったことにしてください。旦那様も知らないことですから」

 彼の言葉を受け入れた冨岡は、同じように微笑む。
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