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冨岡の母親
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「あの・・・・・・話を聞く限り、美作さんは俺の母親のことを知っているんですよね? どんな人だったんですか、俺の母親は」
純粋な冨岡の問いかけに美作は、何故か幼さを感じた。
それもそうだ。源次郎という存在が幸いし、本当の両親のことなど考える機会はなかったのである。この話題に関しては『物心ついたばかり』と言ってもいい。
美作はそんな冨岡に対して、明らかに少ない言葉で答える。
「ああ、知っている。綺麗な人だったよ」
冨岡がその問いかけで何を聞きたいのか、美作にはわかりそうなものだ。それでも彼はその先を自ら話そうとしなかった。
冨岡の両親の話について、情報を押し付けるような真似はしたくないと思っているのだろう。
知ることの全ては、冨岡が選ぶべき。何を知りたいのか、冨岡自身が言葉にして問いかけなければならない。そういうことだ。
そんな美作の気持ちを察したのかはわからないが、冨岡は問いかけを続ける。
「名前は・・・・・・俺の母親の名前を教えてください」
「シャーナだ。家名は確か、ベルソード・・・・・・だったかな。こっちの世界に来てからは、基本的にこの辺りで暮らしていたから家名なんて名乗る機会はないし、曖昧だがベルソードだったと思うぜ。シャーナ・ベルソード」
「シャーナ・ベルソード・・・・・・変なことを聞くんですけど、美作さんも俺の母親も向こうの世界から来たじゃないですか。向こうの世界で俺の母親に会ったことはないですか?」
時系列で言えば、シャーナの後に美作が転移してきている。また、鏡を通って転移するのであれば、二人とも同じ場所からの転移だ。近所に住んでいたのならば知人である可能性もある。
しかし、美作は首を横に振った。
「同じ街に住んでいる全員が知り合いなわけじゃないだろう。どこかですれ違ったことはあったかもしれないが、会ったとは言えないな。けど、こっちに来てから源次郎さんと一緒に俺の面倒を見てくれていたんだ。その時、向こうの世界での話も聞いたよ」
「どんな話ですか?」
身を乗り出して問いかける冨岡に微笑みを返した美作は、鏡に映る自分を見ながら懐かしむような表情を浮かべる。
「そうだなぁ、シャーナさんが冒険者だった頃の話だ」
「俺の母親が冒険者・・・・・・」
自分の母親が剣を振り回し、魔法を発動する冒険者であったことなど想像もつかない。もちろん、顔も知らないのだから想像できるはずもないのだが。
それでも、自分に冒険者の血が流れているなんて実感が湧いてこない。
さらに美作は話を続ける。
「シャーナさんの話はほとんどが自慢話だったよ。どれほどすごい魔物を倒したのか、どんな冒険をしたのか。そんな話ばかりだった。俺はその話を聞くたびに、心を躍らせたな。だが、話を聞けば聞くほどそれが真実だと思えなくて、話を盛っているのか、なんて思ったこともある。こんなことを言えばシャーナさんに怒られちまうかな」
「すごい冒険者だったか、自慢話だけなのか。どちらにせよ、俺的には複雑ですね」
「息子としてはそうだろうな。だが、面白い話だったよ。特に『魔王』と呼ばれている男が放った魔物の群れを一人で倒したところなんて、ワクワクしたなぁ」
美作がそう話した瞬間、冨岡は体を硬直させる。
「ま、魔王・・・・・・魔王って!」
純粋な冨岡の問いかけに美作は、何故か幼さを感じた。
それもそうだ。源次郎という存在が幸いし、本当の両親のことなど考える機会はなかったのである。この話題に関しては『物心ついたばかり』と言ってもいい。
美作はそんな冨岡に対して、明らかに少ない言葉で答える。
「ああ、知っている。綺麗な人だったよ」
冨岡がその問いかけで何を聞きたいのか、美作にはわかりそうなものだ。それでも彼はその先を自ら話そうとしなかった。
冨岡の両親の話について、情報を押し付けるような真似はしたくないと思っているのだろう。
知ることの全ては、冨岡が選ぶべき。何を知りたいのか、冨岡自身が言葉にして問いかけなければならない。そういうことだ。
そんな美作の気持ちを察したのかはわからないが、冨岡は問いかけを続ける。
「名前は・・・・・・俺の母親の名前を教えてください」
「シャーナだ。家名は確か、ベルソード・・・・・・だったかな。こっちの世界に来てからは、基本的にこの辺りで暮らしていたから家名なんて名乗る機会はないし、曖昧だがベルソードだったと思うぜ。シャーナ・ベルソード」
「シャーナ・ベルソード・・・・・・変なことを聞くんですけど、美作さんも俺の母親も向こうの世界から来たじゃないですか。向こうの世界で俺の母親に会ったことはないですか?」
時系列で言えば、シャーナの後に美作が転移してきている。また、鏡を通って転移するのであれば、二人とも同じ場所からの転移だ。近所に住んでいたのならば知人である可能性もある。
しかし、美作は首を横に振った。
「同じ街に住んでいる全員が知り合いなわけじゃないだろう。どこかですれ違ったことはあったかもしれないが、会ったとは言えないな。けど、こっちに来てから源次郎さんと一緒に俺の面倒を見てくれていたんだ。その時、向こうの世界での話も聞いたよ」
「どんな話ですか?」
身を乗り出して問いかける冨岡に微笑みを返した美作は、鏡に映る自分を見ながら懐かしむような表情を浮かべる。
「そうだなぁ、シャーナさんが冒険者だった頃の話だ」
「俺の母親が冒険者・・・・・・」
自分の母親が剣を振り回し、魔法を発動する冒険者であったことなど想像もつかない。もちろん、顔も知らないのだから想像できるはずもないのだが。
それでも、自分に冒険者の血が流れているなんて実感が湧いてこない。
さらに美作は話を続ける。
「シャーナさんの話はほとんどが自慢話だったよ。どれほどすごい魔物を倒したのか、どんな冒険をしたのか。そんな話ばかりだった。俺はその話を聞くたびに、心を躍らせたな。だが、話を聞けば聞くほどそれが真実だと思えなくて、話を盛っているのか、なんて思ったこともある。こんなことを言えばシャーナさんに怒られちまうかな」
「すごい冒険者だったか、自慢話だけなのか。どちらにせよ、俺的には複雑ですね」
「息子としてはそうだろうな。だが、面白い話だったよ。特に『魔王』と呼ばれている男が放った魔物の群れを一人で倒したところなんて、ワクワクしたなぁ」
美作がそう話した瞬間、冨岡は体を硬直させる。
「ま、魔王・・・・・・魔王って!」
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