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選ばれし者
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美作から伝えられた事実に衝撃を受け、思考が停止する冨岡。
その答えは冨岡が考えていた可能性の中にはなかったものだ。考えられるはずもない。自分の中に流れる血が半分は異世界のものだなんて。
「俺の母親が異世界生まれ・・・・・・なんか、実感が湧きませんね」
冨岡がそう話すと、美作は小さく頷いた。
「まぁ、だろうな。人間にとって真実なんて、実はどうでもいいものだよ。目の前にあること、自分が体験したこと。それに勝るものはない。アンタにとってこの世界で生まれ、源次郎さんに育てられたことが事実。異世界なんてものを知らずに、この世界の住人として生きてきたことに比べれば、親が異世界人だったなんて大した話じゃない。だが、真実は真実だ。アンタが鏡によって二つの世界を行き来できる事の答えはそれさ」
「ま、待ってください。えっと、鏡の効果は『異世界に転移する』こと。つまり自分の生まれた世界じゃないほうに移動する、帰ってくることはできない、でしたよね? で、俺の中には二つの世界の血が流れているから、どちらの世界も自分の世界であって、異世界でもある。だから行き来できる・・・・・・そういうことですか?」
戸惑いながらも冨岡は再確認する。
「繰り返さなくても、最初からそう言っているだろ」
「いや、こんな大切なこと繰り返さずにいつ繰り返すんですか」
「そりゃ、アイドルソングの歌詞とか」
「繰り返しますけど、確かに。サビの部分で結構繰り返しますけど! そんな話してないじゃないですか。ふざける余裕ないんですけど、俺」
「真実がどうであれ、事実が変わるわけじゃないだろ。そういうものだと受け入れればそれまでだ。さて、話を続けるぜ」
美作は言いながら煙草をポケット灰皿で消した。
そもそもこの話は『源次郎が鏡について知っていたか』というところから始まっている。その答えはすでに聞いたが、話は途中で終わっていた。
「まぁ、すでに話した通り、源次郎さんは鏡について知っていた。そりゃ転移の経験者なんだから知っていて当然だ。そして、自分のようにこちらの世界に転移してくる者が現れた時のために、鏡を管理していたんだよ。源次郎さんが管理し始めて以降、転移してきたのは二人。俺とアンタの母親だ。彼女の方が先に転移してきていたから、そんなに詳しく話せないが、彼女はこちらの世界で男性と結ばれた。それがアンタの父親さ。二人とも源次郎さんを父親のように慕っていたな。そうして生まれたのがアンタだよ。まぁ、源次郎さんにとって孫同然ってことは確かだ」
「なんか、現実味がなくて逆に驚かないですよね。ここまでくると」
「そういうもんなんだろ。現実ってやつは、時に物語よりもドラマチックなもんだよ」
こんな話を思春期に聞いていたら、自分を『選ばれし者』だなんて痛い妄想に取り憑かれていたかもしれない、と何故か冨岡は冷静に思考していた。
今夜分かったことは、冨岡の母親が異世界人であったこと。それによって鏡の効果を使い続けることが可能になり、異世界との行き来ができること。
他の者が鏡に入ると、戻ってくることはできないこと。
冨岡はその事実を踏まえ、自分のことよりも『他人が鏡に触れないようにしなければ』と考えていた。
これまで以上に鏡について隠さなければならない。
若干の放心状態になりながらも冨岡は口を開く。
その答えは冨岡が考えていた可能性の中にはなかったものだ。考えられるはずもない。自分の中に流れる血が半分は異世界のものだなんて。
「俺の母親が異世界生まれ・・・・・・なんか、実感が湧きませんね」
冨岡がそう話すと、美作は小さく頷いた。
「まぁ、だろうな。人間にとって真実なんて、実はどうでもいいものだよ。目の前にあること、自分が体験したこと。それに勝るものはない。アンタにとってこの世界で生まれ、源次郎さんに育てられたことが事実。異世界なんてものを知らずに、この世界の住人として生きてきたことに比べれば、親が異世界人だったなんて大した話じゃない。だが、真実は真実だ。アンタが鏡によって二つの世界を行き来できる事の答えはそれさ」
「ま、待ってください。えっと、鏡の効果は『異世界に転移する』こと。つまり自分の生まれた世界じゃないほうに移動する、帰ってくることはできない、でしたよね? で、俺の中には二つの世界の血が流れているから、どちらの世界も自分の世界であって、異世界でもある。だから行き来できる・・・・・・そういうことですか?」
戸惑いながらも冨岡は再確認する。
「繰り返さなくても、最初からそう言っているだろ」
「いや、こんな大切なこと繰り返さずにいつ繰り返すんですか」
「そりゃ、アイドルソングの歌詞とか」
「繰り返しますけど、確かに。サビの部分で結構繰り返しますけど! そんな話してないじゃないですか。ふざける余裕ないんですけど、俺」
「真実がどうであれ、事実が変わるわけじゃないだろ。そういうものだと受け入れればそれまでだ。さて、話を続けるぜ」
美作は言いながら煙草をポケット灰皿で消した。
そもそもこの話は『源次郎が鏡について知っていたか』というところから始まっている。その答えはすでに聞いたが、話は途中で終わっていた。
「まぁ、すでに話した通り、源次郎さんは鏡について知っていた。そりゃ転移の経験者なんだから知っていて当然だ。そして、自分のようにこちらの世界に転移してくる者が現れた時のために、鏡を管理していたんだよ。源次郎さんが管理し始めて以降、転移してきたのは二人。俺とアンタの母親だ。彼女の方が先に転移してきていたから、そんなに詳しく話せないが、彼女はこちらの世界で男性と結ばれた。それがアンタの父親さ。二人とも源次郎さんを父親のように慕っていたな。そうして生まれたのがアンタだよ。まぁ、源次郎さんにとって孫同然ってことは確かだ」
「なんか、現実味がなくて逆に驚かないですよね。ここまでくると」
「そういうもんなんだろ。現実ってやつは、時に物語よりもドラマチックなもんだよ」
こんな話を思春期に聞いていたら、自分を『選ばれし者』だなんて痛い妄想に取り憑かれていたかもしれない、と何故か冨岡は冷静に思考していた。
今夜分かったことは、冨岡の母親が異世界人であったこと。それによって鏡の効果を使い続けることが可能になり、異世界との行き来ができること。
他の者が鏡に入ると、戻ってくることはできないこと。
冨岡はその事実を踏まえ、自分のことよりも『他人が鏡に触れないようにしなければ』と考えていた。
これまで以上に鏡について隠さなければならない。
若干の放心状態になりながらも冨岡は口を開く。
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