百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

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ハーフ&ハーフ

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 美作の言葉と共に、冨岡は自分の鼓動が早くなったをの感じた。
 心臓はバクンバクンと音を立てて、体全体に血を巡らせる。じんわりと全身に熱が入り、うっすら汗ばみさえし始めた。
 自分の親。それは冨岡にとって、異言語に近いものだ。もちろん存在しているはずなのだが、ほとんど知らないもの。
 自ら知ろうとすればいくらでも知る機会はあったのだろうが、冨岡にとっての親は源次郎。本当の親を知ろうとすることは、自分の時間を犠牲にして育ててくれた源次郎への裏切りのようにも思っていた。だからこそ積極的に知ろうとしたことはない。
 多感な思春期であっても、興味を持っていないふりをしていたのだ。
 それがここにきて、知る機会が訪れた。
 本当の親について聞かなければ、話を進めることができない。不可抗力という言い訳を背負って、本当の親の話がやってきた、というところだろうか。

「俺が何度も異世界転移できることに、本当の親が関わっている・・・・・・」

 冨岡がほとんど独り言のつもりで言うと、美作は小さく首を傾げる。

「どうする、聞かないでおくか? 人によってはショッキングな話かもしれないぜ。別に知らなくても、アンタが向こうの世界に閉じ込められることはない。何も変わらず、この生活をすることは叶う。ここから先はアンタの自己満足と、俺の自己満足。それだけだ」

 異世界に閉じ込められることはない。美作のそんな言葉に安心を覚える冨岡。
 確かに、最も知りたかったのはそれだ。鏡を通れなくなることがないのなら、これ以上深く話を聞く必要はない。
 これ以上話を聞くことは、美作の言う通り自己満足でしかなかった。
 それでも冨岡はもう止まれない。動き始めた好奇心と知的欲求は抑えられないのだ。

「聞かせてください。俺が何度も異世界転移できる理由・・・・・・そしてそれに関わる親の話を」
「そうか、アンタが聞くって決めたのなら源次郎さんも止めはしないだろうさ」

 美作は少し嬉しそうにそう答えると、一呼吸置いてから話を続けた。

「さっきも話したが、あの鏡は『対象者を自分の世界とは異なる世界へ飛ばす』効果を持っている。その効果には『元の世界への帰還』は含まれず、一方通行なものだ。普通の人間が使用すれば、異世界転移をした時点で効果は終了し、元の世界には戻れず異世界で生きることになる。それは確かだ。ここにアンタっていう例外が発生しているんだよ」
「俺が例外」
「そうだ。鏡の効果に『気まぐれ』はない。ある種、あの鏡は神の力のようなものだし、神は気まぐれなものだが、あの鏡はその効果を律儀に発生させるだけ。鏡側に気まぐれや例外は存在しない。例外があるとしたらアンタの方にだし、そこにアンタの親が関わっているここまで言えば、なんとなくわかるんじゃないか?」

 試すような言い方をする美作。そう言われた冨岡は少し整理しながら考えてみる。
 鏡の効果、そして自分という例外。その二つを成立させる可能性。
 考えている途中で美作の言葉が、冨岡の鼓膜を揺らした。

「アンタはハーフなんだよ。こっちの世界とあっちの世界のな」
「いや、今俺が考えて答え出す流れでしたよね。もう少しで答えに辿り着ける感じでしたよね。なんかモヤモヤが残るんですけど。って、俺がハーフ!?」
「ああ、アンタは二つの世界を跨いだハーフだ。地球生まれの父親と、あっち生まれの母親を持つハーフ。アンタにとってどちらの世界も『自分の世界』だし『異世界』なんだよ」
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