417 / 498
全部ぶん投げて
しおりを挟む
向こう側、冨岡にとっての異世界から鏡を通ってこちらの世界に来たはずの美作。そんな彼が鏡に拒絶されている。通行ゲートが閉ざされたかのように、鏡は鏡としてそこにあるだけだった。
冨岡の言葉を聞いた美作は、何かを懐かしむように短く目を閉じる。
「確かにこっちの世界は、向こうよりも発展していて便利だ。腹が減れば出前を取ればいいし、遠く離れた者と話すこともできる。こちらの世界で『魔法』は憧れの一つみたいだが、魔法にできるようなことは大抵科学でこなしているさ。何も不満はない。だが、俺は選んでこっちに来たわけじゃないんだ。望んでここにいるわけじゃあない」
そう話す美作の表情は、悲しげというよりも諦めに近かった。
ここまで話を聞いた冨岡の頭には、一つの有力な仮説が浮かぶ。
「もしかして、鏡を通ることができなくなった・・・・・・ってことですか? いや、でも俺は何度も・・・・・・それじゃあ、回数制限があるとか?」
「回数制限って機械的だな。そうじゃない、わかりやすく言えばこの鏡は『異世界を行き来するもの』じゃない。『異世界へ行くためのもの』だ」
「行き来じゃなくて、行くため・・・・・・」
冨岡は美作の言葉を繰り返し、その違いを理解する。
つまり、あの鏡は単純に二つの世界を繋ぐ道ではなく、一方通行の扉だということ。
美作は向こうの世界から日本に来て、二度と帰れなくなった。そういう話である。
その事実を美作は微笑みながら説明した。
「俺はもう帰れない。まぁ、よくある話だろう? 異世界ものの小説や漫画、アニメじゃあありがちな設定だ。異世界転移した後、元の世界には帰れない。そういうことだ。まだまだ疑問だらけだろうから、もう少しだけ補足しておくぜ」
そう言って、美作は情報を追加する。
元々この山には『神隠し』の伝承があった。そして消えた者は二度と戻ってこない。その原因がこの鏡である。
消えた者は異世界へと飛ばされ、二度と元の世界には戻れないのだ。
そして、異世界にも『神隠し』に近い伝承がある。そちら側で消えた者は、日本に飛ばされてきているらしい。
しかし、誰でも鏡に入れるわけではない。どのような基準があるのかは不確かだが、鏡をその目で認識できる者とそうでない者がおり、認識できる者でなければ異世界転移には至らないという。
さらに美作は言葉を続けた。
「俺は向こうの世界で偶然鏡を見つけ、こっちの世界に飛ばされてきたんだ。幸いだったのは、俺に家族がいないこと。向こうの世界に大した心の残りはないってことだな。こっちに飛ばされてすぐ、俺は源次郎さんに見つけられ、世話になったんだ。済む場所からこっちの世界での常識、生きていく術までな」
「・・・・・・じいちゃんは知ってたんですか? 鏡のこと」
「ああ、それも説明しなきゃ話を進められねぇな。いや、先にあっちを・・・・・・あー、なんかめんどくさくなってきた。多いんだよ、説明すること。なんだかんだあって、今がある。そして未来へとつながる」
「おい、めんどくさくなって説明を全部投げるな。ちゃんと聞かせてくださいよ。じいちゃんが鏡のことを知っていた理由」
冨岡の言葉を聞いた美作は、何かを懐かしむように短く目を閉じる。
「確かにこっちの世界は、向こうよりも発展していて便利だ。腹が減れば出前を取ればいいし、遠く離れた者と話すこともできる。こちらの世界で『魔法』は憧れの一つみたいだが、魔法にできるようなことは大抵科学でこなしているさ。何も不満はない。だが、俺は選んでこっちに来たわけじゃないんだ。望んでここにいるわけじゃあない」
そう話す美作の表情は、悲しげというよりも諦めに近かった。
ここまで話を聞いた冨岡の頭には、一つの有力な仮説が浮かぶ。
「もしかして、鏡を通ることができなくなった・・・・・・ってことですか? いや、でも俺は何度も・・・・・・それじゃあ、回数制限があるとか?」
「回数制限って機械的だな。そうじゃない、わかりやすく言えばこの鏡は『異世界を行き来するもの』じゃない。『異世界へ行くためのもの』だ」
「行き来じゃなくて、行くため・・・・・・」
冨岡は美作の言葉を繰り返し、その違いを理解する。
つまり、あの鏡は単純に二つの世界を繋ぐ道ではなく、一方通行の扉だということ。
美作は向こうの世界から日本に来て、二度と帰れなくなった。そういう話である。
その事実を美作は微笑みながら説明した。
「俺はもう帰れない。まぁ、よくある話だろう? 異世界ものの小説や漫画、アニメじゃあありがちな設定だ。異世界転移した後、元の世界には帰れない。そういうことだ。まだまだ疑問だらけだろうから、もう少しだけ補足しておくぜ」
そう言って、美作は情報を追加する。
元々この山には『神隠し』の伝承があった。そして消えた者は二度と戻ってこない。その原因がこの鏡である。
消えた者は異世界へと飛ばされ、二度と元の世界には戻れないのだ。
そして、異世界にも『神隠し』に近い伝承がある。そちら側で消えた者は、日本に飛ばされてきているらしい。
しかし、誰でも鏡に入れるわけではない。どのような基準があるのかは不確かだが、鏡をその目で認識できる者とそうでない者がおり、認識できる者でなければ異世界転移には至らないという。
さらに美作は言葉を続けた。
「俺は向こうの世界で偶然鏡を見つけ、こっちの世界に飛ばされてきたんだ。幸いだったのは、俺に家族がいないこと。向こうの世界に大した心の残りはないってことだな。こっちに飛ばされてすぐ、俺は源次郎さんに見つけられ、世話になったんだ。済む場所からこっちの世界での常識、生きていく術までな」
「・・・・・・じいちゃんは知ってたんですか? 鏡のこと」
「ああ、それも説明しなきゃ話を進められねぇな。いや、先にあっちを・・・・・・あー、なんかめんどくさくなってきた。多いんだよ、説明すること。なんだかんだあって、今がある。そして未来へとつながる」
「おい、めんどくさくなって説明を全部投げるな。ちゃんと聞かせてくださいよ。じいちゃんが鏡のことを知っていた理由」
0
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる