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ロマン
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美作の持つ『異世界』に対する価値観は、冨岡が思っていたよりも柔軟であり、それほど現実離れしたものだとは捉えていないようだった。
しかし、それは創作における異世界。あくまでも漫画や小説、アニメの中の話だ。
だが、冨岡の中でずっと抱えていた違和感ともいえないほど微小な気掛かりが、少しだけ大きくなる。
気持ちよく酒を飲んだ後の深夜というのもあり、気が大きくなった冨岡はそれを遠回しに問いかけてみた。
「美作さん、ちょっと変なことを聞いてもいいですか?」
「ああ、どうしたよ。変なことって靴のサイズじゃあなさそうだな」
「誰が靴のサイズを聞くんですか。シンデレラじゃあるまいし」
「ははっ、そうだな。男二人でおとぎ話をしたって仕方ない」
「まぁ、おとぎ話みたいな話ではあるんですけどね。さっき言ってた異世界・・・・・・本当にあると思いますか?」
突然そんなことを聞かれた美作は、不思議そうに首を傾げる。
「何だ、その質問は。改まって聞くことか? しかも真顔で」
「どうしても聞きたくて・・・・・・」
冨岡の中で一度溢れ出した疑問は止まらない。
気になっているのは『美作があまりにも協力的すぎる』という点だ。
美作は冨岡の祖父、源次郎の世話になっていた過去を持つ。だが、それだけでは説明がつかないほどに協力的である。
様々な仕事をこなしてきた何でも屋であることを踏まえても、冨岡からの依頼に疑問を持たなさすぎないだろうか。
冨岡からすれば、それはありがたい限りだ。それでも、違和感の種が心の中でモゾモゾと動き続けている。
そんな冨岡からの問いかけに、美作は平然と答えた。
「どうしても、ねぇ。呼び方は違えど、世界中の物語に異世界ってもんが出てくるだろ? 日本じゃあ、古事記にすら異世界が出てくる。まぁ、あれを異世界と呼ぶかどうかは人によるけどな。ともかく、だな。言葉や文化が違う様々な国で、交流もできない時代から異世界という概念は存在した。そうなると選択肢は二つだ。どんな時代のどんな人間も異世界って理想を抱いていたか、本当に存在するか。つまり異世界が存在する確率は五割。そういうことだろ?」
「何ですか、そのとんでもない計算式」
「異世界が本当にあるか、って聞かれたから俺なりに考えてみただけだろ」
そう言って美作は笑う。だがこれは冨岡が聞きたかった答えではない。
「真剣に考えてくれたのはわかりますけど、美作さん個人はどう思うんですか?」
「俺個人か? そりゃ、存在してると思うね」
「・・・・・・理由は?」
「やけに溜めたな。理由ね、単純な話だ」
美作は気だるそうに煙を吐き、空を見上げた。その瞳には月が映っている。
煙を吐き切った美作は、冨岡に向かって微笑んだ。
「そっちの方がロマンがあるだろ? それだけだよ」
しかし、それは創作における異世界。あくまでも漫画や小説、アニメの中の話だ。
だが、冨岡の中でずっと抱えていた違和感ともいえないほど微小な気掛かりが、少しだけ大きくなる。
気持ちよく酒を飲んだ後の深夜というのもあり、気が大きくなった冨岡はそれを遠回しに問いかけてみた。
「美作さん、ちょっと変なことを聞いてもいいですか?」
「ああ、どうしたよ。変なことって靴のサイズじゃあなさそうだな」
「誰が靴のサイズを聞くんですか。シンデレラじゃあるまいし」
「ははっ、そうだな。男二人でおとぎ話をしたって仕方ない」
「まぁ、おとぎ話みたいな話ではあるんですけどね。さっき言ってた異世界・・・・・・本当にあると思いますか?」
突然そんなことを聞かれた美作は、不思議そうに首を傾げる。
「何だ、その質問は。改まって聞くことか? しかも真顔で」
「どうしても聞きたくて・・・・・・」
冨岡の中で一度溢れ出した疑問は止まらない。
気になっているのは『美作があまりにも協力的すぎる』という点だ。
美作は冨岡の祖父、源次郎の世話になっていた過去を持つ。だが、それだけでは説明がつかないほどに協力的である。
様々な仕事をこなしてきた何でも屋であることを踏まえても、冨岡からの依頼に疑問を持たなさすぎないだろうか。
冨岡からすれば、それはありがたい限りだ。それでも、違和感の種が心の中でモゾモゾと動き続けている。
そんな冨岡からの問いかけに、美作は平然と答えた。
「どうしても、ねぇ。呼び方は違えど、世界中の物語に異世界ってもんが出てくるだろ? 日本じゃあ、古事記にすら異世界が出てくる。まぁ、あれを異世界と呼ぶかどうかは人によるけどな。ともかく、だな。言葉や文化が違う様々な国で、交流もできない時代から異世界という概念は存在した。そうなると選択肢は二つだ。どんな時代のどんな人間も異世界って理想を抱いていたか、本当に存在するか。つまり異世界が存在する確率は五割。そういうことだろ?」
「何ですか、そのとんでもない計算式」
「異世界が本当にあるか、って聞かれたから俺なりに考えてみただけだろ」
そう言って美作は笑う。だがこれは冨岡が聞きたかった答えではない。
「真剣に考えてくれたのはわかりますけど、美作さん個人はどう思うんですか?」
「俺個人か? そりゃ、存在してると思うね」
「・・・・・・理由は?」
「やけに溜めたな。理由ね、単純な話だ」
美作は気だるそうに煙を吐き、空を見上げた。その瞳には月が映っている。
煙を吐き切った美作は、冨岡に向かって微笑んだ。
「そっちの方がロマンがあるだろ? それだけだよ」
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